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Vol.2 サキ&ミユウ interview。挫折、そして羽化。すべてが崩れ落ちた先に、本当のフラがあった。

前回に引き続き、フラの全日本チャンピオンに2013年、2015年とそれぞれ輝いたダンサー、サキ&ミユウのインタビューをお届けします。

【小澤早紀さん(サキ・2013年第一回全日本フラ選手権ソロ部門優勝)&橋本実優さん(ミユウ・2015年第三回全日本フラ選手権ソロ部門優勝)】

ハワイの世界最高峰と言われるハラウ(フラスタジオ)が日本校をオープンし、そこで運命的な出会いをしたサキさんとミユウさん。ところが・・・

サキ:
「今のハラウ(スタジオ)に入った時は、私もミユウのようにフラの伝統は本当に深いものなんだって感銘を受けて、とにかく楽しくて仕方がなかったんです。でも、実は途中でもうフラを離れようかと思ったことがありました・・・・。母の病気が発覚したりプライベートでもいろんなことがあって、もう気持ちがついていけなくなってしまって。実際に1年くらい行かなくなっていたし、ミユウから連絡が来ても出れないくらい心を閉ざしていました。

それが2013年に大きな大会が始まるということで、その第一回目にハラウの代表としてソロで出てみないかとクム(師)に言われて。母に聞いてみたら、母も大会で踊る私を見たいといってくれて。仲間もクム(師)もこれを乗り越えていくべきだよ、と大きく背中を押してくれて復帰することができました。わたしの人生の中の転換期だったと思います。」

ミユウ
「サキちゃんが戻ってきた時は本当に嬉しかった!そしてそこからが本当に大変だったよね。2013年の大会にサキちゃんが出るって決まった時に、なぜかその次の2015年はミユウがでるんだよ、と言われて。2人で支え合いながらがんばりなさいって。私からすれば、次は自分の番だ・・・と思いながら、サキちゃんが極限状態まで追い込まれて行くのを見ているのはもう恐怖でしかなかった。。(苦笑)」


極限状態まで・・・・・!??大会に向けて、一体どんな練習が待っていたのでしょうか。

サキ:
「もうなんていうか、全部を叩き壊されるような感じ、ですかね。踊りってやっぱり理論ではなく感覚的なものなので頭で考えてもわからないんです。でも、踊っても踊ってもクム(師)に、それは違う。それも違う。全然ダメ。と言われてしまって。

一体何が違うのだろう、クム(師)が言っていることはどういうことなのだろう、出口のない永遠のループにはまってしまったような時間でした。。もうなんか毎日泣いていましたね。泣くんじゃない、といわれてもまた涙がぶわって出てきて・・・」

ミユウ:
「そばで見ていても本当にきつそうだった。クム(師)は違うといっているけど、横から見ていても完璧に近い踊りに見えたし。でもそれをつかめずにいるサキちゃんの気持ちもわかる。もうハラウ(スタジオ)の生徒やアラカイ(インストラクター)全員が見守っていたよね。」

それで一体いつ、これで大丈夫だというところに行きついたのでしょうか。

サキ:
「きっともう2週間前とかそのくらいギリギリのところだったと思います。
今まで理想の踊りというか・・・こんな風に踊りたいなとか踊らなきゃとかいろいろあったのですが、なんだかすべてが崩れ落ちてほんとうに0になったんです。トンカチでとーんって叩かれたみたいに何もかもなくなった。そうしたら、すーって、身体が動き始めて。
そうしたら、クム(師)が、それだ!!って。それからはもう本当に早かったですね。」

ミユウ:
「そうそう、あの瞬間は見ているだれもがわかったよ。わぁっ、サキがつかんだ!!って。」

0から立ち上がった時のそこにいたサキさんは、どんな感じだったのでしょう。

サキ:
「やっぱりその工程すべてが大切だったんだと思います。苦しんで悩んでつかめなくて、それがあったからこそたどり着けたところ、というか。なんだか無心で、今でも言葉では説明できない境地でした。」

実際に大会はどうだったのでしょうか

サキ:
「ほんとうにもう5日前とかですよ、仕上がったのは。もう本当にギリギリ(笑)でもすべての準備が整った、と思ったので大会はぶれなかったですね。」

ミユウ
「抜けた、という表現が一番あっているよね。探して探してピタっとハマって、サキちゃんが踊ったあとに先生と泣いている姿を見てもうハラウ(スタジオ)何百人が全員泣いたよね。」

サキ
「泣いた泣いた、もう本当に・・・。そして大会で踊り切ったあとはもう感謝の気持ちでいっぱいでしたね。溢れて溢れてとまらなくなるくらいの感じでした。」


わずか数分の踊りの中に、それだけの物語が凝縮されていたのですね。見る人の心を打つのも当たり前ですね。

大会3日前まで迷い続けたミユウさん


ミユウさんはその後、どうだったのでしょうか。

ミユウ:
「もう本当にこのサキちゃんを見て、そのあとの年上組の人達がソロで優勝する姿も見て、それで私が4人目だったので、うわぁ、この後かぁ・・・と恐れおののきながらでしたよ。」

ミユウさんはどういう風に羽化したのですか。

ミユウ
「私が羽化したのはもう大会3日前くらい(笑)!もう3人優勝したというプレッシャーを自分で勝手にうけちゃって。心をパタンって閉ざしてしまったんです。」

サキ
「ほんっとにシャッターおろしたよね~。閉ざしたよね、わたしさえも入れなかったもん。(苦笑)」

ミユウ
「私も毎日泣いて、クム(師)から詰められても返事もできなくて。涙が一粒つーって流れて。サキちゃんはその時、わ、ミユウ壊れる!??と本気で思ったみたいで。

でもやっぱり練習して向かい合うしかなくて相当練習してたけど、プレッシャーとストレスで、大会の3日前の練習中に過呼吸になっちゃったんです。もう本当に息ができなくて、2時間くらい酸素吸入するはめになって。

それで落ち着いた時に、これだけ死にそうな思いまでしたんだから、もうこれでいいや、わたしのままで、と思った瞬間、なんかもうストーンッって落ちたんです。もう理想やプレッシャーなんてどうなってもいいや~~って放り投げた時に弾けた感じで。」

サキ:
「もうその瞬間も、私たちも見ていてわかったよね。卵からかえって飛び立った~~~って感じ。」

ミユウ:
「大会はなんかもう、ゾーンに入っている感じでしたね。曲のことも考えながら、まわりがすべて見えて、審査員も観客もカメラがどう映しているかも、ぜんぶがスローモーションで、あぁ、これがゾーンかぁぁぁ・・・と思いながら気持ちよく踊り終えた感じでした。」

いよいよフラの世界の頂点へ・・・・


ミユウさんも、サキさんも、なんというか自分がなくなるというか、無私の状態になってつかんだのですね。クム(師)はきっとそれをわかっていて導いたのでしょうね。
そしてそこがゴールかと思ったら、なんと次の舞台が用意されるわけですよね。フラの世界では頂点ともいえる世界大会・メリーモナークへの出場はどう始まったんですか?

サキ:
「実はもうそこからすぐ、なんです。2015年の終わり、12月のはじめくらいだよね。ミユウの大会が終わって、そのあとにクム(師)から話があると言われて。
ハワイのメリーモナークのトレーニングに2人で挑戦してみないか、と言われて。2人でその言葉が終わらないうちにもう大号泣で。

小さいころからずっと刺激を受け続けたのはぜんぶメリーモナークで。夢を見ながらも、どこかで現実的ではない、と思っていのに、それが急に目の前に来て、しかも二人で出てほしいって、なんかもう信じられすぎずに。しかももう4カ月後にその大会が始まるという・・・」

ミユウ:
「それらは大慌てでチケット取って、ハワイのチームと合流して、3カ月猛特訓だったよね。飛行機降りてそのままスタジオに行くという・・」

短期間で仕上げる・・想像を絶しますが、どんなことが起こっていったのでしょうか。

サキ
「もうなんというか、言葉や背景の違いが一番大変でしたね。私たちは初日から本気モードでエンジン全開!という感じだったんですけどハワイの人たちはだんだんエンジンかかっていく感じなんですよね。だから踊り切ろうとすると、合わない、といわれて。抑えて抑えて・・となっていってしまう。」

ミユウ
「サキちゃんの方が大変そうだったよね。サキちゃんの持っている表現力になかなかみんなが追い付かなくて、サキ抑えろ!って言われて。で、みんなが表現が追い付いてくると今度はサキもっと出せ!って。」

サキ
「そうなんです、もう本当に大会直前まで自分の表現を抑えることをしてしまっていたので、みんなが1週間くらい前にピークになってきているときに、わたしだけなんか固まっちゃっていて。すごい小さい踊りになっちゃって。で、クム(師)が急に悟ったみたいで
もういいよ、好きに踊れ、GOだ!!って言われてパァってやっと開けたんです。」

わぁ~、そこで解放できたんですねぇ。それで大舞台、味わい尽くせたんですね。

サキ:
「そうですね、もう初日はやりきって。カヒコっていう古典フラだったんですけど、もうステージに上がった瞬間、みんなが一つになったのを感じて、練習の成果を全て出し切ることができました。」

サキ
「二日目の現代フラも朝から練習したんですが、そこでクムからラインに関することなどを注意されたので、本番では踊ることを楽しみながらも、どこか冷静にフラシスターと揃えることに意識がいっていたと思います・・・」

ミユウ:
「二日目はカヒコに比べると、気持ちが入り切れなくて終わっちゃったよね・・。一日目とは一転して、まったく違う感じで、うわ・・・これがメリーモナークかぁ・・という感じでしたね。まさにスパークする瞬間と、怖さと、両方味わった感じです。」

小さいころから夢に見ていた憧れの大舞台で、ついに踊ることができたサキさんとミユウさん。身体も心も魂までも、フラに選ばれそれに応えてきた二人。そしてその後も彼女たちの道は続いていきます。

次回はフラと共に生きている彼女たちの「今」をご紹介します。

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