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映画 インターステラー(ネタバレあり)

 俺はインターステラー(2014年 米 クリストファー・ノーラン監督)を2回観たことがある。滅亡の危機に瀕した地球から新天地となる惑星を求めて旅立つ宇宙飛行士が主人公の映画だ。一回目は公開当時に、緻密な考証に基づいた宇宙や別次元の解釈、斬新な映像表現があるというので、そういうのが好きな俺はたまらず観に行った。また俺は滅び行く地球を描いた作品が無条件に好きなので(「トゥモローワールド(傑作!)」「回路」「ドーン・オブ・ザ・デッド」「ザ・コア」「ハプニング」「サイン」など)、さあ、今度はどんな突拍子もない方法で人類を滅亡させてくれるのかと楽しみにしていた。俺が考えもしなかった方法で滅んでくれ人類!

 さて舞台はアメリカ。様々な作物に疫病が蔓延しオクラは全滅。アメリカでオクラ作ってんのかと知識ゲット。砂嵐が学生野球レベルにまで落ちたプロ野球の試合を中断させる。スポーツもろくに練習できない地球環境の悪化!人々はその日を暮らしていくのに精一杯だ。そしてアメリカ人はオクラをどう食べるのか。各国、戦争とかしている場合ではないので軍隊やNASAは存在意義を失い解散している。とにかく一番は農業のようだ。主人公もトウモロコシ農家の主だが、元なんかのパイロットだったらしい事が冒頭主人公の見る悪夢で示唆される。さあ行けども行けどもトウモロコシ畑の中(もはやトウモロワールド)、走る車はみな砂埃まみれ、閉めきった家の中も一晩たてば結構な埃が降り積もり、食卓の皿は逆さに伏せて置かれている。伏せ丼。毎朝掃除が大変そうだ。これはなかなか嫌な地球の滅び方で好感が持てる。できれば大都会や他国の様子も劇中ニュースでいいからチラッと見たかったが、映画は徹底して茨城県北部のようなふるさとカントリーの中で物語が進行して行く。雰囲気は「サイン(2002年 M・ナイト・シャマラン監督)」に近い。
そして主人公の娘の部屋で怪現象が起こる。本棚の決まった場所から本が何回も落ちてくるのだ。主人公はそれが何かの座標を示していると感じ、そこに車を走らせる。なぜ感じたかは俺にはちょっと分からない。まあいいとして着いたらそこは厳重に隠され…てもいないひみつきちで、中では密かに復活していたネオ・NASAがひみつロケットを作っていた。そこの偉いっぽい人があっさり捕らえられた主人公に向かって言う。
「やあ久しぶりクーパー(主人公)君」
「あなたは教授!」
知り合いなのかよ!そしてたまたま家で怪現象があったから来たわりには内定していたかのように定員たった4名のひみつロケットのパイロットに指名される主人公。教授、普通にメールとかしろよ!ネオ・NASAの中はやたらと従業員がいるが給料はどっから出るのだろうか。みんな兼業農家なのかもしれない。
急によくわかんない組織に入り急に宇宙に行くと言い出した父親に反発する娘。そりゃそうだ。

娘との和解もならず、観客(俺)は釈然としないながらも宇宙へ──

──今まで俺は結構な数の宇宙映画を観てきた。最初に観た宇宙映画はエイリアン2(1986年  米 ジェームズ・キャメロン監督)だ。当時小学生だった俺は父親と観た。父(兼業農家)が「みづのり(本名)も将来あんな映画が撮れだら最高だっぺ。」と言っていたのをいまだに覚えている。さて宇宙映画で一番観たいシーンはどれでしょう。離陸シーン?宇宙シーン?宇宙人が初めて姿を見せるシーン?はっきり言ってそんなのはどうでもいい!一番観たいのは食事シーンだ!「エイリアン」「エイリアン2」では宇宙船内での食事シーンが物語中重要な役割を果たしている。そして乗組員が食っている食べ物は…まずそう!なんかピンクのペーストと豆!このピンクのペーストは「スターシップ・トゥルーパーズ(97年 ポール・バーホーベン)」の訓練シーンにも出てきて、いかにもうんこといった風情で皿にドカーン!と盛り付けられるのが最高だった。そうだ、うんこと言えばロボ・コップ!ロボ・コップの部屋にある自販機から紙・コップに出されるロボコップの食い物は色といい見た目といい音といい100%うんこ!それを「意外とイケる。ベビーフードみたいだ」といいながら指でなめるおもしろ黒人の部下──
話が脱線してしまった。「インターステラー」には宇宙での食事シーンが無く残念。ピンクのペーストを食え!この段落いらなかった。

さあ、いよいよ、未知の惑星だ!重力の関係で1時間滞在すると地球での15年ぐらいに相当するらしい。でかい津波がドーン!死!
別の惑星へ。身内の裏切りでピンチ!裏切り野郎を倒すも宇宙船がぶっ壊れた。主人公は最後の賭けに出る。ためらいなくブラックホールに突っ込んだのだ。賭けすぎ!
ブラックホールは自分ちの本棚の裏につながっていました(?)。主人公は本を落として娘にブラックホールの情報を伝えようとする!果たして───

俺(独身)は、特に後半「なんか都合よすぎ!」と思ってしまいイマイチな映画という評価をした。
そして──

2023年。あけましておめでとうございます!

(これを書いたのは1月3日)と、いうわけで、正月休み。息子(2歳)がお昼寝をしたので妻(結婚6年め)に「映画でも観ないか。」と提案したところ「知り合いに「インターステラー」を観て人生が変わったという人がいる。」と言ったので俺の中でのイマイチ超大作(2時間49分)をもう一度観たくなった。
俺も公開当時から比べて年もとったし環境も変わったので、ひょっとしたら見落としていたこの映画の真のおもしろさに気付けるのかもしれない──ポチっとな。


映画中盤、人間が生存できる可能性がある惑星の候補のひとつに主人公たちは降り立つ。そこでは重力の関係で1時間で15年の時が経ってしまう。先遣隊の残したデータを探すも600メートルの巨大津波が迫り来る。
さまざまなピンチを切り抜け母船に帰還した主人公たち─何の収穫も得られなかったが─母船には地球からのビデオメッセージが23年分たまっていた。主人公には息子からのビデオメッセージが届いている。
「やあ、父さん。高校を卒業したよ、妹は無免許運転で警察に怒られたけど大丈夫──」
「やあ、父さん。恋人ができたんだ──」
「やあ、父さん。娘が産まれたよ!地球の環境はますます悪くなっているけど、父さんを信じているよ──」

「父さん… 娘が死んだんだ」
「こんなビデオなんて、どうせ届いてないんだろう!?父さんだってもう地球には帰って来ないんだろう!」

主人公は涙を流し心底悔しそうにビデオメッセージを見る。そしてこちらからの送信はできないほど宇宙の果てにいるのだ。このシーンの演技は本当に素晴らしい。最初観たとき家庭を持っていなかった俺はこの演技を見逃していた!

おれは泣いた!そしてこれは「お盆」の映画なんだと分かった。

宇宙に行った人間は「先祖」となる。「先祖」となった人間は子孫の幸せを願いながらもただ墓前で訴えられる言葉を聞くのみ。
本棚の本を落とすことはできないのだ。ブラックホール級の奇跡がないかぎり。

俺はお盆になすやきゅうりの馬を作りたい!先祖に「元気です」「また会いましょう」と伝えたい!

ウオオオオーー!


号泣していた。妻もドン引きするほどに。
残業のしすぎで疲れていたのかもしれない。だが俺は伝えたい!ご都合主義のストーリーなんてただの飾り。主人公クーパーを演じるマシュー・マコノヒーのあのシーンのあの演技が、あの涙が人類の、人間という生物の切なさの極致なのだ。

「インターステラー」は最高の「お盆の映画」です! 

俺の先祖もきっと宇宙を旅している。

おわり

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