(作業員が)未来のためにできること
ビルなどの建設工事の場合、我々は必ず産業廃棄物を分別しています。プラスチック、紙・繊維、コンクリート、鉄、木、ダンボール、ガラス、石膏ボード、等々──それぞれが「ゼロエミヤード」と呼ばれる場所の所定のコンテナボックスに振り分けられ、リサイクルされていきます。箒で掃き集めたような多種多様な品目が混ざり合った物も、ふるいをかけて釘一本まで分別しています。当然それには労力がかかり、巨大現場の全業者一斉清掃なんかが昼イチあった日には分別だけで夕方になってしまったりもします。が、地球環境の保護のためには残業も辞さない構えこそが、我々建設作業員が未来のためにできることなのです──と思ったらある日の朝、コンテナボックスに「ボクシング用のサンドバッグ」が入っていました。どう考えても工事で出たゴミではないので引っ張り出そうとしましたが、一人では無理だったので仲間を二人呼びました。重さ50kgほどあったと思います。
すると仲間が「なんかこんなのもありました!」と言ったので見ると、それはボクシンググローブでした。
──男は、建築現場で働きながら、いつかはチャンピオンになる事を夢見て過酷な練習に励んでいた。しかし身重の婚約者との将来を考え、愛用のグローブとサンドバッグを捨てる事を決心したのであった──
などと勝手に勝手なストーリーを思い浮かべていたら、「なんかこんなのも」と仲間が言うので見てみたら、なんかテントや寝袋などのキャンプ用品やサーフィンのウェットスーツやなぜかウクレレも新品同様の状態で出てきました。
──単に飽きっぽい奴だ──
サンドバッグは、しばらくゼロエミヤードの横に吊るされてみんなの良き友達になってくれていましたが、いつしか撤去解体され、紙・繊維ゴミ(サンドバッグの中身が廃布だと初めて知りました)と廃プラに分別されました。しかし不法投棄は犯罪です!
さて、大型現場のゼロエミヤードには産廃処理の業者さんが分別指導や搬出用フォークリフトの運転等で常駐している事が多いので、ある超大型現場の休み時間にわたしは「今までで一番面白かった産廃なんでした?」と尋ねたら「位牌」と答えてくれたのでちょっぴり怖くなりました。
ちなみに一番イヤな産廃は「油がたっぷり染み込んだウェス(廃布)」だそうです。すごく燃えやすいそうです。
それでは今日も、未来のためにゼロ・エミッションでいきましょう。ご安全に。
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