さらばメルセデス

長年、我が家はメルセデスに乗って来た。90年代初頭、NHKで自動車の衝突安全についてのドキュメンタリー番組を放映。国産車がぐしゃぐしゃになるのを横目に、メルセデスのボンネットは衝撃を吸収し、フロントのドアは普通に開いた。これを見て父は感化されたらしい。それ以来、ずっとメルセデスを乗り継いで来ている。

こんな話は暗に「うちはオールドリッチですPR」に過ぎないが、父はもう70。稼ぐだけ稼いで、老後を楽しんでいるからそれで良いだろう。で、私はどうなのか?というと、実はメルセデスを買えるほど裕福ではない。もちろんFFモデルくらいの選択肢はあるが、メルセデスに乗るほどストレスのある仕事をしているわけではない。一度壊れてしまったのだ。

20代はガンガン稼いだ。もちろん父に習いメルセデスを買い、休みの日にクルーザー所有をお客さんを後ろに乗せてハーバーまで飛ばし、一緒にクルーズを楽しんだり、引き立て役としてかなり重宝した。が、やはり取ってつけた感は否めなかった。またクルマでモテる時代も終わり、メルセデスで人生を切り開くのには限界があると感じた。

財布が気になるほど維持費がかかり始めたからだ。もはや現代のメルセデスは壊れ過ぎてディーラーのケアで治し、ケアが切れる前にまたケアのある次の車を購入する必要がある。Sクラスのテールランプ交換で60万実費で払えますか?という。実はメルセデスは新車で買うのが一番安い。最初に500〜700で新車を買い、ケアのついた個体を乗り継げば良いのだ。

今、私はクルマを持っていない。移動は常に電車だし、タイムズカーシェアに入会して、好きな時に適当なクルマを乗り回している。コスパが悪いというが、手軽さとメルセデスの税金を考えれば安いもの。クルマを持っていない人からするとレンタカーは高く感じるが、毎年自動車税を払って来た人間からすると実にコスパが良い。

たまに街で見かけるメルセデスが恋しくなる。革の香り、ウインカーとワイパーのスイッチ。ライト点灯ダイヤル。長年変わらない配置だ。この魅力と維持費を天秤にかけて魅力が勝るなら、なにか一台買おう。娘も大きくなって物心ついたら夢のあるクルマに乗せたいし。では。

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