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☆137:健康寿命を縮める食事因子、第1位は?<要約・出典>

☆137:健康寿命を縮める食事因子、第1位は?
https://voicy.jp/channel/1374/173301

<参考書籍>『老化はこうして制御する 「100年ライフ」のサイエンス』(日経BP)※詳細は書籍ご参照下さい。良書です!

世界195か国・27年分(1990~2017年)のビックデータを解析した結果によると、健康寿命指標DARYs(*1)を縮める食事因子は、
第5位:「Diet low in vegetables」(野菜摂取が少ない)
第4位:「Diet low in nuts and seeds」(ナッツ類等が少ない)
第3位:「Diet low in fruits」(フルーツ摂取が少ない)
第2位:「Diet high in sodium」(塩分が多い)
第1位:「Diet low in whole grains」(全粒穀物摂取が少ない)
※死亡率(Mortality rate)だと1位と2位が逆転します。

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<出典>Lancet. 2019 May 11;393(10184):1958-1972.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30954305
(*1)DALYs: Disability-Adjusted Life Years
   「障害調整生存年」とも呼ばれ、「早死により失われた期間」と「疾病により障害を余儀なくされた期間」の合計。詳細はwikipedia参照。

日本ではむしろ糖質制限ブームもあり「穀物」は敬遠される傾向もあるが、
全粒穀物が心血管疾患、脳卒中など各種疾患による死亡リスクを下げるという研究もある。
中でも糖尿病による死亡リスクは1日90gの摂取で死亡リスクがほぼ半減という結果になっていた。
(白米など精製された穀物とも関連はほとんど見られていない。)


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<出典>BMJ. 2016 Jun 14;353:i2716. doi: 10.1136/bmj.i2716.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27301975/

他にも、日本人の死因トップのがんについては、
アメリカで約8万人のがん症例と食事因子を解析した結果、最もがんリスクを高めるのは「全粒穀物の摂取不足」であったという研究もある。
中でも結腸がん、直腸がんへの関与度が高い。(日本人も大腸がん患者は多く、他人事ではないかも。。)

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<出典>JNCI Cancer Spectr. 2019 May 22;3(2):pkz034.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31360907/

全粒穀物に関するエビデンスは2010年頃から出始めて近年世界的に注目を集めており、この他にも数多くの研究報告が出てきつつある。

なぜこれだけ大きな影響が出るのか?
穀物は主食なので毎日コンスタントに食べる量が多いからかもしれない。
全粒穀物は精製すると失われてしまうビタミン・ミネラル類や、食物繊維の摂取源になる。
2020年版「日本人の食事摂取基準」によると、1日当たりの食物繊維摂取目標量は、
・成人男性:21g以上
・成人女性:18g以上
であるが、世界中の研究データを統合した研究報告では、「1日当たりの食物繊維摂取量が25~29gの時に死亡・疾患リスク低下率が最も大きい」と結論付けている。

Lancet. 2019 Feb 2;393(10170):434-445.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30638909/

すなわち、日本人成人における食物繊維摂取量の中央値は13.7 g/日と目標摂取量にそもそも届いていないが、目標摂取量だったとしてもリスク低減が最大となる摂取量には及ばない。

<参考>日本人の食事摂取基準(2020 年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書・P156
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
アメリカ・カナダの食事摂取基準では、上記の限界はあるものの、この基準を参考にすれば、成人では理想的には 24 g/日以上、できれば 14 g/1,000 kcal 以上を目標量とすべきであると考えられる。しかしながら、平成 28 年国民健康・栄養調査に基づく日本人の食物繊維摂取量の中央値は、全ての年齢区分でこれらよりかなり少ない(表 2)。そのために、これらの値を目標量として掲げてもその実施可能性は低いと言わざるを得ない。
現在の日本人成人(18 歳以上)における食物繊維摂取量の中央値(13.7 g/日)と、24 g/日との中間値(18.9 g/日)をもって目標量を算出するための参照値とした。

日本人の食物繊維摂取量は低下の一途を辿っていったが、全粒穀物を常食することで、不足分を大きくカバーできる可能性がある。
というのも、日本人の食物繊維摂取源(寄与率)は上位は主食だからである。

<参考>日経Gooday「食物繊維、日本人が一番多く摂取している食べ物は?」https://style.nikkei.com/article/DGXMZO36752410S8A021C1000000?page=2
実際、食物繊維というと、キャベツ、レタスなどの野菜や、ゴボウ、イモなどの根菜類が思い浮かびます。もちろん、野菜も重要な食物繊維の摂取源なのですが、実は日本人の摂取源の1位と2位は、白米と食パンなのです。白米は100g当たりの食物繊維が0.5gと少ないのですが、量を多く摂取しているため、結果的に最大の摂取源になっているわけです。

全粒穀物は健康寿命に最もプラスに働く食事因子で、世界でも注目されているが、日本では認知がまだ高くないと思われる。
→不足しがちな食物繊維摂取源にもなるので、意識して取り入れると良いかも?

<Related Contents>
☆31:日本人の食物繊維摂取量、以前は多かった?☆
☆24:映画のお供ポップコーン、実は全粒穀物
☆21:日本でなかなか浸透しない?全粒穀物
☆18:穀物と野菜の食物繊維は同じ?

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