☆173:絹と木綿と、豆腐のゆかいな仲間たち(10月2日は豆腐の日!)

※以下は放送で紹介した内容をある程度文章で起こしたものです。

<木綿豆腐>
温かい豆乳に凝固剤を加えて固め、それを崩して穴のあいた型箱に流し込み、重しをして水分・油分を抜きながら固めていく。
(従来の製法では)穴から豆腐が出ないように型箱の中に木綿の布を引いており、箱に敷いた布の木綿の布の跡が表面に残ることから、木綿豆腐と呼ばれるようになった。

<絹ごし豆腐>
穴の空いていない型箱に直接温かい豆乳と凝固剤を入れて、凝固剤を加えて手早く攪拌しそのまま固める。
木綿豆腐と違い水分を抜く工程がないことから、水分がたっぷり含まれた柔らかで滑らかな食感の豆腐になる。絹のようなめらかな食感から絹ごし豆腐の名前が付けられたと言われますが、絹の布を使っているわけではない。一般的に木綿豆腐よりも濃度の高い豆乳を使うため、凝固剤をすばやく均一に行き渡るように攪拌するためには技術が必要である。


その製造工程の違いが、木綿と絹の栄養価の違いにも現れている。

※以下数値や量の表現は、参考書籍(最後に記載)に言及のある数値をそのまま引用しています。情報源や(食品成分法などの)時点、もちろん商品により異なる旨ご了承下さい。※

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→ざっくり言うと、しっかりたんぱく質を摂りたい場合は木綿、
 カロリーを控えたい場合は絹、ということは出来そう。

また木綿豆腐はたんぱく質に加え、マグネシウムや鉄も1.3~1.5倍ほど多く、カルシウムが約2倍と豊富。(豆腐のカルシウムは吸収率が高く、牛乳と同等程度とも言われている。)
一方で木綿豆腐は絞る工程があるため、水溶性のビタミンB群やカリウムなどが流出しやすい傾向がある。

<充てん豆腐>
冷たい豆乳と凝固剤を容器に注入して密封し、その後加熱して凝固させる。豆腐と容器の間に隙間がないのが特徴。
この製法は戦後に機械化の進展等に伴い生まれたもので、大量生産に適している。
また豆乳を充填し容器を密閉した後加熱凝固し殺菌が行われるため、日持ちが良い(すなわち賞味期限が長い)のも特徴である。

<寄せ豆腐>
木綿豆腐の工程のうち、型箱に入れる前の「寄せた」状態を器に盛って製品としたもの。
圧搾などの工程がない分、木綿豆腐とは一味違った食感や風味が得られる。
別名の「おぼろ豆腐」は朧月夜のもやもやとした状態に似ていることが由来と言われる。
またこれをザルに盛ったものが「ざる豆腐」で、ザル自然と水分が出て、これも木綿豆腐とは一味違った食感・風味が楽しめる。

また凝固剤の種類による違いもある。
<にがり>
海水から塩化カルシウムと塩化カリウムを分離し、濃縮・精製された固体(塩化マグネシウム)と、海水から塩(塩化ナトリウム)を採った後に残る液体のもの(海水にがり=粗製海水塩化マグネシウム)がある。
また近年では「乳化にがり」など反応速度を遅らせた加工タイプのものもある。
<すまし粉>
日本では昭和10年代に使われ始め、昭和の終わり頃まですまし粉を使ってきた豆腐が主流だったそう。
第二次世界大戦中、にがりは軍事物資(戦闘機などに使うマグネシウム軽合金の材料)となり使えなくなり、すまし粉(硫酸カリウム)で固めた豆腐が増えていった。すまし粉はにがりよりも扱いやすいこともあり、昭和30年代には9割以上の豆腐に使われていたと言われている。
※他にも凝固剤として、酸凝固のグルコノデルタラクトンなどもあります。珍しいですが。。

<高野豆腐(凍り豆腐)>
木綿豆腐を凍らせた後乾燥させて作られる、栄養価の高い保存食品。
高野豆腐という名前から高野山で主に作られているイメージがあるが、実際は長野県が生産量のほぼ100%を占めている。(高野山で売られているお土産の高野豆腐も、実は長野県産なんだそうです。。)
なお豆腐製造業者は高野豆腐を作らず専業メーカーによって製造されている。
大豆由来の栄養成分が凝縮しており、高野豆腐に対する健康本も多数存在する(←個人的主観です)。
体内でも消化を受けにくいタンパク質である「レジスタントプロテイン」も豊富で、血中コレステロールの上昇を抑える働きもある。

<厚揚げ>
木綿豆腐と比べるとタンパク質は約2倍、カルシウムは約3倍、鉄分は約3倍含まれている。厚揚げの表面には揚げてから時間が経って酸化した油が付着しているので、ペーパータオルを使って油抜きをすると良い。カロリーオフになり、また味染みも良くなる。

ちなみに同じく油で揚げる「油揚げ」は木綿豆腐より濃度の薄い豆乳から作った木綿豆腐を薄く切って成形した油揚げ用の生地から作られる。

<がんもどき>
木綿豆腐を細かくして脱水し、つなぎに山芋や人参、ごぼう、昆布などの具材を入れて混ぜて成形した後、油で揚げたもの。
名前の由来はその味が鴈の肉に似ているからとも言われ、規律の厳しい当時の修行僧たちの肉食への憧れが表れているとも言えそう。
様々な野菜などが含まれる上に鉄分が豊富で、絹ごし豆腐と比べて鉄分が約3倍ほどある。鉄分の吸収率を上げるため大豆たんぱく質も豊富に含まれるため、単体でも貧血予防が期待できる。

■豆腐のメリット■
<大豆たんぱく質>

吸収率が90%以上と高く、しかも冷たいままでも加熱しても大きく変わらない。
さらに血液中のコレステロールを低下させ、その成分の一つ(ペプチド)が血圧上昇を抑制するとも言われている。

<大豆レシチン>
血管に付着したコレステロールを溶かし血流を改善し、かつ固まるのを防ぎ付着しないようにする働きがある。また脂肪代謝機能により肝臓中の脂肪分を減らす働きもある。
加えてレシチンは、脳の情報伝達に関わる神経細胞の重要な材料となる。
さらにその構成成分の一つであるコリンは脳に運ばれアセチルコリンという情報伝達物質に変わる。したがって記憶力や集中力を高め、物忘れなど脳の老化やボケ防止等に効果があるといえる。

<大豆サポニン>
渋みや苦味の原因物質であり嫌われている側面もあるが汗、脂肪の蓄積を防ぐ、血管に付着した脂肪を洗い流す、活性酸素の働きを抑制する、血栓を予防する、腸を刺激し便通を良くするなどなど健康の増進等に及ぼす様々な機能が注目されている。
また最近の研究では、サポニンには細胞の制御抑制する作用があるとも報告されている。

<大豆イソフラボン>
イソフラボンは食べ物では大豆に最も多く含まれる。
女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをするため、エストロゲン様作用があると言われる。またイソフラボンに含まれる「エクオール」が更年期過ぎの女性ホルモンの減少によって起こる諸症状の緩和(例えば骨粗しょう症の予防など)に効果が期待されている。
また、イソフラボンの摂取量が多いほど、乳がん・前立腺・がん胃がんのリスクが低下するという相互関係も見られ、欧米人に比べ日本人にこれらの発症が少ないのは豆腐とよく食べているからとの見解もある。
なお過剰摂取についてサプリメント製品に上限値(大豆イソフラボンアグリコンとして1日30mg)が設けられているが、豆腐など大豆食品は対象外となっている。

<β-コングリシニン
大豆タンパク質の一つで、内臓脂肪を減少させるとの報告がある。

<トリプシンインヒビター(トリプシン阻害因子)>
その名の通り、タンパク質分解酵素トリプシン働きを阻害し、消化吸収を妨げるため嫌われ者の存在だったが、最近になって糖尿病に関係するインスリンの分泌を促進し、治療や予防に役立つのではないかとも言われ研究が進められている。

<オリゴ糖>
オリゴ糖はビフィズス菌の栄養源となり、豆腐を食べることにより含まれるオリゴ糖によってビフィズス菌を増やし、腸内の悪玉菌の増殖を抑えたり、腸の運動を活発したり、免疫力を向上させたり、発がん物質を分解するなどの有用な働きが期待される。
なお豆腐にはほとんど繊維質が含まれていないが、腸内浄化の点では同じような働きがあるとも言える。

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------------------<参考書籍・出典>------------------
「豆腐(改訂第6版)」(全豆連作成パンフレット)
まいにち豆腐レシピ 」工藤 詩織 (著), 牛尾 理恵 (著)
その調理、9割の栄養捨ててます!
その調理、まだまだ9割の栄養捨ててます!
  東京慈恵会医科大学附属病院 栄養部 (監修)
栄養を捨てない食べ方 (エイムック)」麻生れいみ (著, 監修), エイ出版社編集部 (編集)
長寿ホルモンを増やす! 「長寿食材」の選び方と最高の食べ方
東京慈恵会医科大学附属第三病院 栄養部 (監修)




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