観戦力を高める③

3回目は伊藤監督の目指すサッカーにおいて覚えておきたいことを説明していきたいと思います。

1.ポジショナルプレー

ポジショナルプレーとはピッチ上で優位性をつくるために、ポジショニングとプレーを整理することと私は定義をした。
なるべく分かりやすく簡潔な表現としたが、具体的な定義は明確にはないかと思う。
戦い方というよりはコンセプトとみて良い。
元々はサッカーで使われていた言葉ではなく、チェスにおいて使われている言葉である。
チェスについては詳しくわからないため説明できず、申し訳ありません。

伊藤彰監督が影響を受けているというマンチェスターシティのグアルディオラ監督がポジショナルプレーを広めたと言われている。
ポジショナルプレーという概念は古くからあったが、言葉にして伝えたのは元ヴィッセル神戸のファンマ・リージョ監督と言われているが、リージョ監督はグアルディオラ監督の師匠にあたる人物となる。

その中でキーワードは優位性。
・数的優位
・位置的優位
・質的優位

この3つの優位性を重要視している。

数的優位は局面において相手より人数を多くすること。
前回説明した『偽サイドバック』や『ゼロトップ』は中盤で数的優位を作るための戦略となる。
中盤で数的優位を作ることでボール保持を優位に進める狙いやカウンターへの備えとなる。
中盤の選手がDFラインに降りてくることやGKをビルドアップに参加させることで数的優位を作り、ビルドアップを安定させることもある。
今シーズンの甲府はよりボールを保持することが予想される。
ポゼッションする時間を増やすためにはGKがビルドアップに参加することは必要となる。
観戦する側としてはGKがビルドアップに参加することを許容し、時にはバックパスも受け入れる姿勢が求められる。

位置的優位はポジション取りで相手を困らせること。
数的に不利な状況でも誰がマークするか曖昧なポジションを取ることで、数的不利な状況でも相手を困らせることができる。
位置取りで一対複数の状況を作ることが出来れば、他のポジションで数的優位を作れる。
後述するが位置的優位における甲府のキーワードとして『ホール』は大切となる。

質的優位は一対一の局面で個の能力で勝ること。
甲府で分かりやすいのは泉澤選手の存在。
サイドでの一対一に大きな強みを持つ選手だが、あえて泉澤選手を孤立させ一対一の局面を作りドリブル突破からの打開を期待する。
宮崎選手に加えて今シーズンは鳥海選手も加わり、前線にはドリブラーが複数いるだけにこのような場面はいくつも見られるだろう。

この中でポジショナルプレーという呼び方をしているだけに最も重視しているのは位置的優位ではないかと思う。

2.5レーン

『ハーフスペース』という言葉が地元紙にも載ったことから知っている方もいるかと思う。
伊藤監督の目指すサッカーにおいては覚えておいて欲しいのが、『ハーフスペース』という言葉の元となった『5レーン理論』。
この『5レーン理論』もポジショナルプレーにおいてはキーワードとなる。
ピッチを縦に5分割することで立ち位置を明確にすることや与えるタスクをわかりやすくする狙いがある。
その中で『ハーフスペース』にあたるのは2番目と4番目のレーン。

画像1

甲府においては吉田達磨監督時代の2018年に目にした方もいるかもしれない。

記事を読んでいただければわかるかと思うが、昨年は何度も見たことがある形が書かれているかと思う。
記事内では堀米選手が幅を取り、湯澤選手がインナーラップを仕掛ける形が記載されている。
昨年は左サイドで泉澤選手が幅を取り、内田選手がインナーラップからゴール前に侵入する形が見られた。
インナーラップとは外から追い越していくオーバーラップとは違い、内から追い越して行く動きのことである。
吉田達磨監督が落とし込もうとしていた形を伊藤監督も落とし込んでいることがわかる。
今回のテーマとは関係ないが、吉田監督の後を継いだ上野監督が落とし込んでいた再現性ある攻撃も伊藤監督は引き継いでいる。
このように甲府としては降格以降、一貫して目指している方向性は変わっていない。
J2降格後4年目のシーズン。
勝負の年となる。

この『5レーン理論』は攻撃面で注目されることが多いが、甲府がJ1時代から続けている5バックも『5レーン理論』に当てはまるといっても良いだろう。

画像2

5人で守ることで効率良く、5つのレーン全て埋めている。
このように攻撃時に5レーンを埋め、攻めてくる相手に対し、5バックで対抗するチームは近年増えてきている。

そして『ハーフスペース』の中でも伊藤ヴァンフォーレにおいてのキーワードである『ホール』と呼ばれるエリアを使えるかは得点に繋がるチャンスを作る上で重要となる。
『ホール』とは伊藤監督の会見や試合中の指示の中からの推測になるが、ハーフスペースにおいてDFラインと中盤のラインの間のエリアではないかと思う。
『ホール』で受け、前を向くことで守備側は混乱に陥る。
守る側からするとCB、SB、ボランチと誰がチェックに行くのか定まらない。
上記で述べた位置的優位に該当する。
また、このエリアはシュートからラストパス、クロスと何でもできる場所であるだけに守備側としては守りにくい場所となる。
また、『チャンネル』と呼ばれるCBとSBの間のスペースをランニングあるいはパスで崩し、『ニアゾーン』と呼ばれるエリアに侵入することでゴールの確率を高められる。

画像3

なぜ『ニアゾーン』に侵入するとゴールの確率が高まるか。
守備側からするとゴール方向へ戻りながら守備をしなくてはならず、シュートやクロスとゴールに繋がるプレーを攻撃側は選択できるためである。
戻りながらのクリアはゴール方向に向かう可能性やクリアが不十分となることが起きやすい。

今年の甲府の選手からどのようなプレーが考えられるか見てみたい。
泉澤選手や宮崎選手、鳥海選手をシャドーで起用した場合はドリブラーである彼らをサイドに張らせる形が多くなると予想される。
相手のSBを吊りだし、開いた『チャンネル』にボランチやWBの選手が走り込み『ニアゾーン』に侵入する形は昨年も見られただけにイメージしやすいかと思う。

画像4

あるいは三平選手を起用した場合は『ホール』でポジションを取り、WBの選手が相手のSBを引っ張ることで開いた『チャンネル』に飛び出す形も見られるだろう。
こちらは昨年でいえば太田選手が得意としていた形。

画像5

中山選手や長谷川選手であれば『ホール』で受けることで相手のCBとSBを引き出し、裏からWBが飛び出した所へスルーパスを送り侵入する形もイメージできる。
昨年はあまり見られなかっただけに中山選手の成長や長谷川選手がプロの舞台で力を発揮できるかに掛かっているかと思う。

画像6

このように今年の甲府は『ホール』や『ニアゾーン』を攻略できるだけのタレントを揃えており、攻略できるかが鍵となる。
伊藤監督は昨年しきりに『Dエリア』という言葉を発していた。
『Dエリア』はこの『ニアゾーン』に近いイメージなのではないかと予想している。
監督やコーチの仕事は良い形でゴール前に侵入する画を描くことまでである。
そこから先、得点を取れるかどうかは個人の技量をいかに高められるかとなる。

3.あとがき

今回は少し踏み込んだ内容になったかと思います。
ですが、近年のサッカーを語る上では欠かせない要素となっています。
伊藤監督の目指しているサッカーを一人でも多くの方に理解していただきたいと思っています。
現実思考で戦った1年目、自分の目指すスタイルに少し舵を切った2年目。
よりやりたいサッカーを表現しながら、結果も求められる勝負の3年目となるシーズン。
サポーターとして少しでも目指していることを理解することでサポートをし、昇格を掴み取るシーズンに出来たらと思っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?