J2第33節 ヴァンフォーレ甲府vs水戸ホーリーホック

前節大宮に勝利し、2連勝とした甲府。
今節はホームに水戸を迎える一戦となる。

一方の水戸は前節金沢に勝ち、連敗を2で止めた。
リーグトップの56得点を誇るが、失点数はワースト3位の50失点と失点を減らせないことが12位に沈んでいる要因となっている。

直接対戦の成績は15勝9分15敗と五分五分。
ホームでは甲府が9勝5分5敗と勝ち越している。
2017年の降格後、5試合対戦しているが3分2敗と一度も勝利はしていない。
近年は苦手な相手の一つとなっている。
前回対戦はアディショナルタイムに水戸が追いつき、2ー2と引き分けに終わった。

1.主体的

スタメンはこちら。

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甲府は前節から6人、前回対戦からは7人の変更となった。
注目は山本英臣。
今節のスタメン起用で11試合連続の出場となる。
40歳を越えても甲府には無くてはならない存在となっている。
昨年の第25節水戸戦では終了間際に起死回生の同点ゴールを決め、昇格の望みを繋いだ。
今年も山本の力で望みを繋ぐ一戦としたい。

水戸は前節から8人、前回対戦からは6人の変更となった。
注目は山口一真。
山梨学院高校出身の24歳。
鹿島アントラーズからレンタル移籍で加入し、ここまで30試合に出場し13ゴールを挙げている。
2トップを組む中山も13ゴールを挙げており、J2屈指のコンビとなっている。
高校の先輩岡西の守るゴールに迫りたい。

立ち上がりはお互いリスクをかけず、前線にシンプルに入れて行く入りを見せる。

立ち上がりチャンスを掴んだのは甲府。

内田のバックパスを合図に水戸がプレッシャーのスイッチを入れる。
山本がプレッシャーを回避し、組み立てがスタートする。
相手を引きつけてパスを出すことにより、相手守備陣形を動かすことができる。
山本はこのプレーで最初にプレッシャーに来た山口と遅れて来た中山の2人を引きつけた。
するとメンデスは自由にボールを持てる時間と場所を確保する。
ワンタッチで内田へ繋ぐが、最初のプレッシャーを回避したことにより続いてくる選手にズレが生じ、結果的に松崎も引きつけることに成功した。
後も同様に河野、岸田を動かし、空いた背後へドゥドゥを走らせる。

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ここ数節毎試合見られる形。
再現性ある攻撃を見せた。

積極的に前線からプレッシャーをかけていく甲府に対して、水戸もショートパスを駆使し、回避しながら前進を図る。

次のチャンスは水戸。

ショートコーナーからンドカが合わせた。
山口のキックの精度の高さ、ンドカの高さが出た場面。

10分過ぎた辺りから甲府はプレッシャーをかけ始める位置を下げ出す。
ブロックを作り、その間に入ってきたところへ強く行く。

しかし、水戸の狙いと噛み合ってしまいボールを持たれる時間が増えてしまう。

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水戸の狙いはDFラインと中盤の間。
中山がDFラインと駆け引きをすることにより、DFラインを押し下げる。
ボランチ2人は中盤で数的不利な上に入って来たボールを刈りに行きたいので背後が空いてしまう。
そこを山口、松崎、木村が狙う。

試合が動いたのは21分。

左サイドを崩し、最後はドゥドゥ。
相手陣でメンデスがボールを奪ったところがスタート。
そこからDFラインまで戻すも、これにより相手を引き出す。
メンデスから武田にパスが出たのを合図に松崎がプレッシャーに行く。
そこに連動して河野が泉澤を捕まえに行くも、泉澤が相手の勢いを逆手にトラップで躱す。
中盤3人の布陣の構造上空くスペースであるアンカー脇に泉澤がドリブルで前進する。
誰もプレッシャーに行けないため、水戸DF陣は下がるしかない。
泉澤はサイドを駆け上がってきた内田を使い、クロスを入れる。
水戸のDFは人数は揃っているものの下がりながらのディフェンスを強いられたため、クロスが上がる瞬間は誰も甲府の選手を見ることができず、最後はドゥドゥをフリーにしてしまった。

試合後のドゥドゥ選手のコメントより。

『われわれの速い攻撃で、内田健太選手がサイドでボールを持っていて、中はCBの間が空いていたので良いポジションを取っていた。内田選手が良いボールを入れてくれたので押し込むだけでした。』
『一体感、同じ目標を持っているので、ターンオーバーで選手はみんなレギュラーという思いがある。みんなで喜びたかった。』

試合後の伊藤監督のコメントより。

『大宮戦に引き続き得点を取ってくれたこと、クロスに対しての入り方、落ち着いてプレーできているところは素晴らしいと思います。守備の部分であったり、アタックの浮いているポジショニングであったりとか、整理がされてきていると思います。チームにとってみれば、ドゥドゥが得点を取っていることは勇気づけられることだと思いますし、勝利へ導いてくれている1つの要因だと思います。』

試合後の秋葉監督のコメントより。

『クロスの対応も気をつけようという話をしていて、人数がそろっていたのにもかかわらずやられたのがもったいなかった。ただ、上位でJ1にいたチームの甲府さんはそれだけのクオリティーと決定力を持っているなと思いました。』

この攻撃は甲府がボールを持っていた場面であるが、最後はカウンターのような形になった。
甲府としては後方でボールを繋ぎながら食いついてきた相手DFを剥がし、スペースを突いていきたい。
あえてカウンターに似た場面を意図的に作り出すことを狙いとしている。

先制を許した水戸は山口にボールを集めながら攻め込む。
しかし、水戸も決定的な場面を作るには至らず。

すると甲府が決定機を作る。

ビルドアップで相手を押し下げ、選択肢をいくつも持てる状況を作る。
山本から泉澤へのロングパスは短くなるも、相手のクリアミスを拾い、泉澤から山田と繋ぎ最後は太田。
ステップでシュートコースを作り、決定的なシュートを放つもクロスバーに当たってしまう。
太田は先発すれば毎試合決定的な場面に絡むことができている。
だが、26節の北九州戦以来ゴールから離れている。
あとは精度の部分だけである。

今度は守備で相手を追い込み、カウンターから決定的な場面を作る。

この場面の直前ドゥドゥ、武田が相手のビルドアップを牽制し、左サイドへ誘導する。
河野のところを奪いどころに定め、無理な態勢で蹴らせることによりボールを奪いきった。

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そこから山田がドリブルで前進し、泉沢へ繋ぎクロスからドゥドゥのヘディングへ繋げた。

前半終了間際に水戸はゴール前でFKのチャンスを得る。

山口のFKは岡西の正面と決定的な場面には至らず。

前半は攻撃に守備に主体的に相手を動かすことができ、甲府が優位に試合を進めた。

2.試合巧者

水戸は後半開始から再三破られていた右サイドをテコ入れする。
河野に代えて前嶋を投入する。

試合後の伊藤監督のコメントより。

『後半に入って前線からのプレッシャーに行きたいというところもあったのですが、相手に外される場面が多かったです。』

試合後の泉澤選手のコメントより。

『先制点を取ってからもう1~2点取れたと思う場面があった。そこを決めていればもう少しラクにゲームを進められた。』

前半に追加点のチャンスがありながら決めきれなかったことにより、水戸が息を吹き返した後半の立ち上がり。
後方からビルドアップし、前線まで運ぶがチャンスを作るまでには至らず。
すると徐々に甲府が慣れていき、カウンターを仕掛ける場面が増える。

60分には木村、松崎に代えて奥田と山田を投入する。
お互いそのままのポジションに入った。

63分には甲府が動く。
小林、太田に代えて荒木、金園を投入する。
荒木はそのまま小林のポジションに、金園は最前線に入りドゥドゥが太田がいたポジションに入った。

すると65分に思わぬ形から追加点を得る。

スローイングを受けた平野へドゥドゥがプレッシャーをかける。
平野は岸田へパスを送るも泉澤がカットし、

この場面は平野の安易なミスにも思えるが、スローインに対して平野以外が受け手となる可能性がなかったことが問題である。
平野しか受けないと分かれば甲府の選手も平野を狙えばいい。
ドゥドゥも勝負所と捉え、強めにプレッシャーをかけたことでボールを奪うことに成功した。

試合後の泉澤選手のコメントより。

『『前節はチームに迷惑をかけたところがあった。伊藤(彰)監督には自由を与えられているので、チームが勝点を取れなかったら自分の責任だと思っています。』

前半決定機に決めきれず、相手が息を吹き返す隙を与えてしまった。
だが、相手の一瞬の隙を見逃さず決め切り追加点を奪った。

飲水タイムを経て、巻き返しを図りたい水戸はCKからシュートチャンスを作る。

ニアサイドで合わせるも枠には飛ばず。

追加点を得て徐々に甲府が試合をコントロールしだす。
甲府が試合巧者ぶりを発揮し、時計の針を進める。

3.堅守

水戸は78分に瀧澤と中山に代えてピットブルと深堀を投入する。

4バックに変更し、前線の枚数を増やし得点を奪いに行く。

1分後にはドゥドゥと泉澤に代えて野澤と松田を投入し、守備を固める。

試合後の伊藤監督のコメントより。

『「勝っている」ということで、守備の集中力は90分間保てていたなと思います。こぼれ球であったりとか、足を振らせないところだったりとか、その辺りの守備の強さは良かったと思います。』

DFラインを中心にシュートブロックやセカンドボールを拾い、決定的なチャンスは作らせない。

水戸は攻めるもチャンスは作れない展開が続くが、左サイドを外山、奥田の関係で崩しチャンスを作る。

外山のクロスにンドカが走りこむも岡西が足で防ぐ。
手では止めにいけない質の高いクロスが上がるが、岡西の好判断でシュートを打たせず。

試合後の秋葉監督のコメントより。

『クオリティーの高さだとか、最後の仕留める決定力の高さを見せられたゲームだったかなと思っています。』

勝負を分けたのはゴール前での質の差だったのかもしれない。
攻撃の差よりは守備の差がこの結果になった。
クロスに対してボールウォッチャーになってしまった1点目。
ゴール前で致命的なミスを犯してしまった2点目。
甲府の守備陣は決定的な隙は与えず。

一方で甲府にも課題はある。

試合後の伊藤監督のコメントより。

『奪ったボールをロストしていることが多かったので、そこの「ロストをしないこと」、「しっかりと押し込んでから自分たちが試合をコントロールすること」、そこからの「切り替え」はもう少し精度を上げていかないといけないと思います。』

ゴール前でのミスは無いが、中盤でボールを失う場面は見られた。
ミスを無くし、相手陣に押し込む時間を増やすことでより安定して試合をコントロールできるようになる。
決定的な場面は与えなかったが、ゴール前での攻防が増えてしまえば事故のような失点も生まれかねない。
勝ち続けるためには、より安定した試合運びが必要となる。
連勝にも課題あり。

守備面は決定的な場面は与えなかったように完璧な試合だった。
岡西が目立った場面も終盤のクロス対応くらい。
あとは守備陣が未然に防いだ。
ここ5試合で失点はわずかに2。
今節は前節より初めて3バックが全員入れ替わったが、リーグトップの得点力を誇る水戸を完封。
昇格に向けて後が無くなった状況で堅守が復活した。

4.あとがき

完勝。
相手に決定機を作らせず、複数得点を奪っての勝利。
これで3連勝となった。
磐田と引き分けた新潟を抜き4位に浮上したが後が無い状況は変わらず。
上位3チームは強く落ちてくる気配が無いが勝ち続けるしかない。
2試合連続で複数得点を挙げ、ここ5試合で2失点と堅守も取り戻した。
リーグ戦も終盤になったが攻守が噛み合い出してきた。
奇跡を起こすために勝ち続けるだけだ。

MOM 山田陸
潰しに、セカンドボール回収にと危険なところに山田が常にいた。
攻撃面でもゲームをコントロールし、時にはドリブルで前進しチームを助けた。
得点もアシストもしていないが、攻守の繋ぎ役としてチームを支えた。



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