J2第21節 ジュビロ磐田vsヴァンフォーレ甲府

前節引き分けに終わった甲府。
5戦連続完封で負けなしとなっている。
前半戦最後の試合はアウェイ磐田での1戦となる。

一方の磐田は前節、後半のアディショナルタイムに失点し、逆転負けを喫した。
ここ5戦の成績は1勝3分1敗となかなか勝ちきれない試合が続いているが、リーグ3位の得点力には警戒が必要となる。

直接対決の成績はリーグ戦では1勝4分7敗と圧倒的に分が悪い。
また、アウェイでは1分5敗と勝ち点を取ることさえ困難な相手となっている。

1.タレント力

スタメンはこちら。

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甲府は前節より4人変更。
注目は太田修介。
5試合連続で完封中ではあるが、ここ2試合は無得点に終わっている。
この2試合でチャンスを決めきれなかったのは太田でもあった。
チーム内得点王の決定力に期待したい。

磐田は前節より2人変更。
注目は伊藤洋輝。
21歳の左利きで188cmある大型ボランチ。
今シーズンは本職のボランチよりもCBでの出場がメインとなっているが、今節は左サイドでの出場となっている。
将来の日本を背負って立つ選手になるかもしれない選手である。
名前を覚えておいて損はない。

立ち上がりは甲府がハイプレスをかける。
しかし、磐田はそれを上手くいなし、甲府の2ライン間に入れ込んだり、ハイプレスを逆手に前線へ蹴りこみ甲府を圧倒していく。

最初の決定機は4分。

大武からルリーニャ、ポジションを入れ替えたルキアンへ。
その落としから小川のシュートを岡西がセーブした。

試合後の大井選手のコメントより。
『入りは良かったと思いますし、いつもよりもボールを動かして自分たちでチャンスを作ることが今までよりはできたかなと。最近は前にボールを蹴って、ボールを奪ってからのショートカウンターが多かったのですが、今日もそういう場面はありましたが、前半はボールを動かして崩してチャンスを作ることができていた』
『相手の立ち位置やプレスのかけ方にもよるのですが、前から来るような相手には、シンプルに蹴ることが多いのですが、今日は後ろ3枚でやりましたし、ボランチが2枚とも自分の前にいるので、トライアングルができてボールをまわしやすかったかなと。また、今日で言えば(小川)大貴からルキアンにというのがすごく多かったのですが、一度中で作って外からもう一度相手のサイドバックの裏やペナ角に作りやすい形だったかなと今日は思います。』

磐田としては蹴っても繋いでもチャンスを作れるので得点はいつでも取れるような流れであった。

その中で脅威となったのは磐田の前線3枚。

試合後の小川航基選手のコメントより。
『僕はルリーニャと先発したのが初めてだったので、探り探りでやっていた。ルリーニャとルキアンの関係性が良かったと思うので、僕が前線で起点を作って前向きのボールを落とせればいいと思って試合に入った。そこの関係性が悪くなかったことはポジティブなことだと思うので、チャンスを作れていたことはすごく良いことだと思う。』

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小川航基は山本と今津の間にポジションを取り、駆け引きしながら起点となる。
ルキアンは2トップ気味になりながら中塩の周辺を狙う。
そしてルリーニャは自由に動き回り捕まえられない。

最も苦戦を強いられたのはルキアン。
強さ、速さを兼ね備えたルキアンに対して、対面の中塩はなす術なくやられてしまう。
ファウルでも止められない。
中塩が悪いというよりルキアンはJ2にいるレベルの選手ではない。
圧倒的な個の能力を備えた選手である。

一方の中塩にとっては厳しい相手だったが、J1レベルのアタッカーと対峙できたのは良い経験だったのではないか。

次の磐田の決定機は前線3枚と山田が連動した場面。

ルキアンのプレスから山田が連動し、奪いきり小川航基からルリーニャで決定機を作った。
甲府がやりたい形をやられてしまう。

圧倒的な3トップにばかりに目がいくが両サイドの伊藤と小川大貴の存在も厄介だった。
伊藤は攻撃の起点になっており、上手く藤田を引き出されてしまう。
小川大貴は前方のルキアンを囮にインサイドに入ってきったり、サイドを張ったりとこちらも捕まえきれない。
中塩がルキアンに留められてしまうため、2ライン間やWBの背後で自由を与えてしまう。

こちらは甲府のWBの背後を突きチャンスを作った場面である。
こちらもサイドからの決定機と甲府がやりたい形。

前線のタレント力と磐田のフィジカル能力の高さに30分近く一方的に圧倒され、自分たちのミスも重なりピンチを招いてしまうが、磐田の決定力にも助けられ無失点で凌ぐ。
すると流れは甲府へやってくる。
安定してボールが持てるようになり、試合を落ち着かせることができるようになる。
しかし、サッカーは面白いもので一方的な展開で決定的な形を作りながら1点が遠かったにも関わらず、流れが相手に傾くと呆気なく点が入る。

試合後の大井選手のコメントより。
『折り返しの形は監督が来たときからやっている一つの形です。また、今日は相手がゾーンできていたので、速いボールじゃなくても助走をつけて入ることができました。それから、今日のメンバーは背の高い選手が多かったので、高いボールでいこうという話はしていました。』

大井のコメントを見る限り磐田としては狙いを持ったセットプレーだったのだろう。

試合後の今津選手のコメントより。
『やっている中では(自分たちが)悪い状態だったので、最後のところで守って無失点で試合を進めたかったですが、セットプレーでやられてしまった。』

今津のコメントのように悪い状態でも無失点で来ていただけに守りきりたかった。

しかし、見方を変えれば磐田は1点しか取れなかった。
試合後のフベロ監督のコメントより。
『今日も前半から決定的なチャンスを作ることができたので、1点は決めることができましたが、1点にとどまってしまいました。決定力という部分は間違いなく高めなければいけないところです。』

1点しか取れなかったことが後半磐田に重くのしかかる。

2.サイドの攻防

試合後の今津選手のコメントより。
『振り返ったときにウチの左サイドで押し込まれることが多くて、そこでバタバタしてしまった。』

上記の今津のコメントにもあるように前半はサイドでの攻防で優位に立っていたのは磐田であった。
特に甲府から見た左サイドは小川大貴、ルキアンに自由にやらせてしまっていた。

伊藤監督のハーフタイムのコメントを見てもサイドで優位性を保ちたいことが伝わってくる。
右サイドの松田の立ち位置が後半に入り、より外に張る形に変更した。
また、シンプルに泉澤を相手DFラインの背後へ走らせる。
その成果はすぐに結果として表れる。

泉澤が高い位置で仕掛けて相手DFを食いつかせ、内田のクロスに大外から走り込んできた松田が合わせる。
サイドを使い、仕掛ける監督からの指示通りの形からの得点となった。

試合後のフベロ監督のコメントより。
『まず前半は我々がかなり決定的なチャンスを作って先制し、ハーフタイムを迎えました。しかし、後半の早い時間帯、絶対に失点してはいけない時間に失点してしまいました。相手は枠内シュートがほとんど無かった中で、ワンチャンスをものにされてしまいました。そこは必ず修正しなければいけません。ミスしたことから学んで、これからの試合に臨まなければいけないと思っています。』
『後半立ち上がりに失点してしまい、どこか集中力を欠いていたというしかありません。前回の試合も後半開始早々5分ほどで失点してしまいました。集中して入らなければいけなかったのに、それができなかったと。決定力と立ち上がりの集中力は必ず改善しなければいけないと思っています。』

続いてのチャンスは磐田だが、やはりサイドから。

ルリーニャが今津を吊り出し、空けたスペースに伊藤が走り込みクロス。

両チームともサイドを起点にチャンスを作っていく。

3.選手交代

後半いい入りができ、得点をあげて流れを引き寄せた甲府。
62分の磐田の交代で甲府はより戦いやすくなる。
小川、上原に代えて藤川とムサエフを投入。
藤川が右のシャドーでルキアンが最前線に移り、ムサエフはそのまま上原のポジションに入った。
この交代により圧倒的優位に立っていた中塩の部分でその優位性が消えてしまった。
ムサエフの投入で勢いは削がれてしまったが、ターゲットが1人になったことにより甲府は守りやすくなった。

飲水タイム後、試合の流れは徐々にオープンな展開へと変わっていく。

76分にドゥドゥ、山田の投入でより甲府の流れが加速する。
起爆剤となれる「甲府の太陽」が7試合ぶりに復帰。
ドゥドゥの投入はチームに推進力を生んだ。
90分の場面はシュートを打ちきりたかったが可能性を感じさせるプレーは見せた。

90+1分に宮崎が投入されたが、この時間での投入は残念ではあった。
オープンな展開となっていたことから起用する上で、リスクよりもリターンのが大きいのではないかと感じたが出場時間は5分ほどしか得られなかった。
監督の采配の問題より宮崎自身の評価や信頼感が投入を鈍らせたのだろう。
ターンオーバーはまだまだ行われるはずで、出た試合で宮崎も結果を出し信頼を掴みたい。
現状前線に怪我人も出ているためベンチに切り札となる選手が置けていない。
宮崎がきっかけを掴み、切り札に名乗り出てくれれば選手層にも厚みが増す。

5.あとがき

見方が分かれる勝ち点1かもしれない。
前半だけ見れば1取れた試合だが、後半だけ見れば1しか取れなかった試合。
苦手のアウェイ磐田と考えれば良いのかもしれない。
これで3戦連続引き分けと足踏み状態となってしまった。
気づけば6位と少しずつ順位は落ちながらも上との差はあまり変わらず。
しかし、良い形も作れているだけにきっかけが欲しい。
ドゥドゥの復帰はきっかけの1つとなれるか。
きっかけ1つで勝ち星は増やせるサッカーはしているだけに、起爆剤となる存在が求められる。

MOM 岡西宏祐
またこの男に救われた。
何度目の岡西か。
22本ものシュートを浴び、6本ものシュートを止めた。
岡西でなければ大敗していたかもしれない。
岡西無くして取れなかった勝ち点。
今節で前半戦終了だが、前半戦のMVPも岡西以外いないだろう。

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