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吉田シンガポール分析

吉田達磨さんの復帰が最有力という報道を受け、急遽現在監督を務めているシンガポール代表の試合から来シーズンの甲府を予想して見ようと思い立ち、書いてみました。
見た試合は一試合のみ、やっつけで書いたことから内容は薄いものと言えるがお許しください。

1.分析した試合

今回見た試合はスズキカップ2020、シンガポール代表対ミャンマー代表の一戦。
スズキカップとは東南アジアサッカー選手権のことで日本の自動車メーカーであるスズキ株式会社がスポンサーについていることからスズキカップという名称となっている。
東南アジアサッカー選手権という名の通り、参加チームは東南アジアから10カ国が本大会に参加。
吉田監督のシンガポール代表はグループAに所属し、タイ、ミャンマー、フィリピン、東ティモールと同じ組となっている。

最新のFIFAランキングを見るとシンガポールはグループ内ではタイ、フィリピン、ミャンマーに次いで4番目。
開催国であるシンガポールだが、2チームがグループリーグを突破できるレギュレーションはFIFAランキングから考えると非常に厳しいグループである。
だが、12月16日現在グループリーグ3試合を終えて3連勝でグループリーグ突破を決めている。
12月18日にはタイとの首位通過を掛けて戦うこととなっている。

試合の映像は以下をご覧ください。

2.基本布陣

シンガポール代表の基本布陣は2パターン。
1つ目は吉田監督の代名詞でもある433の形。
スズキカップではミャンマー戦と第3節の東ティモール戦でも採用していたようだ。

そして2つ目はヴァンフォーレ甲府の代名詞でもある343の形。
こちらは第2節のフィリピン戦で採用した。

ヴァンフォーレの監督を務めていた2017年には532の形が主要な形であった。

システムに嵌め込むタイプではなく、戦力や対戦相手に合わせて柔軟に変えていくのではないか。

3.ボール保持時

サッカーには4局面あると言われている。
ボール保持時、攻→守、ボール被保持時、守→攻。
これに加えてセットプレーを含めた5局面に分けて考えるべきであると私は考えているが、分かりにくいためボール保持時(攻撃)とボール被保持時(守備)に分けて見ていきたい。

まずはボール保持時。
吉田達磨監督はボールを保持することにこだわりを持つ指揮官である。
伊藤彰監督もそのような監督ではあったが、伊藤監督以上にこだわりは強い。
伊藤監督の方がこの点は柔軟であった。
吉田監督のシンガポール代表はビルドアップ時に2CBとアンカーでビルドアップを行っていく。

この際、GKも加えて行っていくことも考えられるが、シンガポール代表では頻度は高く無さそうであった。
今シーズンの終盤には河田もビルドアップに加わる回数も増えていただけに甲府では積極的にGKも参加させるのではないか。
また、アンカーの選手がCBと同じ高さまで降りてビルドアップに加わることも見られた。
フィリピン戦では相手の2トップに対して3バックで臨んでおり、数的優位を作る目的があるがGKが加わるようだとアンカーが降りる形はあまり作らないかもしれない。

また、ビルドアップの際にSBは高いポジションを取り、相手を押し込んでいくことを狙う。
甲府は荒木がインサイドに入り、サイドに泉澤が開く形を作っていたがシンガポール代表は右サイドでこのような形を多く作っていた。
それに対し、左サイドではWGがインサイドに入りSBが高い位置で幅を取る。
左右非対称である点も伊藤監督と似た点であった。
この点に関しては荒木の去就によって大きく変わりそうである。
須貝や関口にインサイドのポジションを取らせることは考えにくく、荒木が移籍すればオーソドックスな形を取るかもしれない。
また、サイド攻撃を重視している点も近いものがある。
代表チームということもあるが、崩しの局面で再現性ある形はあまり見られ無かった。
それもあってかサイドからのクロスに活路を見出だすことが多くあった。
2017年に吉田監督が就任して最初の試合で決めた得点のような形を多く作りたいところ。

カウンターからだけでなく、ビルドアップで相手を食いつかせ、SBの背後を取り仕留める形は武器となりそう。
ただ、解任された2018年はDFラインでボールを回すだけとなり奪われてカウンターを浴びるという場面も作られていた。
シンガポール代表を見るとシンプルに背後を突く形も見せており、ビルドアップで上手く前進出来なければシンプルに背後ということもやるだろう。
シンガポール代表の最前線の選手は裏抜けもポストも上手く起点となる働きができる選手であったが、このタイプの選手は必要だろう。
リラは残した方が良いのでは?

サイド攻撃を重視する点は似ているが、異なる点は選手同士のポジションが重ならない点にある。
伊藤監督は主に左サイドに人を集め、可変を行うことで目先を変えながら相手を引き付けて空いているスペースを突くことを狙っていたが吉田監督のシンガポール代表はボールに人が集まることはなく、今シーズンの甲府のようにローテーションしながらポジションを変えることはあっても基本的には同じエリアに人が重なることは無い。
WGの選手が幅を取ればSBの選手がインサイドに入り、WGの選手がインサイドに入ればSBが高い位置で幅を取る。
この点は手持ちの選手や相手のやり方に合わせて形を変えていくだろう。
また、サイドで孤立とまではいかないが、相手と一対一で対峙する局面が多くなると予想されるだけにドリブラーの存在は必要となる。
泉澤が長期離脱中であることを考えると宮崎や鳥海の存在は大事となる。

崩しの局面を仕込めるコーチを呼ぶことができれば魅力的な攻撃は展開できそうである。

4.被ボール保持時

ボール保持を許した際にはまずはブロックを作ることを優先する。
ボールを失った際にもすぐに奪い返しに行く意識よりも一旦下がってポジションを取ってからボールを奪いに出ていくことが多い。
4バックか3バックかによってブロックを組む形は異なるが、守り方は同じと考えて良さそうである。
基本となるのは2ラインをしっかりと築くこと。

4バック時には45のブロック、3バック時には54のブロックを敷く。
54のブロックは甲府の伝統ともなっているだけにイメージはしやすいかもしれない。
相手が2CBでビルドアップを行う際には、1トップの選手1人で対応すると数的不利となるが中盤の選手が1列上がる形で牽制を掛けていた。

これは今シーズンの甲府と同じ形であり、4バックでも3バックでも同じように行っている。
甲府であれば左の野津田が出ていくことが多かったが、シンガポール代表は右の選手が出ていく形が多くあった。
そのため、ボールを奪いに行く際には4バックでは442、3バックでは352のような形となる。

ブロックを敷いて中央を固めることを狙うが、シンガポール代表はオープンな局面ができることが多く、ライン間が空く傾向が見られた。
中央に人を配置し、固めようとしていたもののDFラインが低くライン間が空いていたが新井がDFラインにいればこの点は大丈夫かと思う。
また、ボールへの寄せも甘くポジションを守ることに囚われていた傾向も見られた。
だが、この点はミャンマーにも見られ、以前日本代表がタイ代表と試合をした際にも見られたため東南アジア全般の傾向なのかもしれない。

ハイラインを敷いているわけではないが、DFラインの背後を突かれていた点も気になる点であった。
主に左SBの裏を突かれていたため、個人の問題も大きかったのかもしれないが修正を施していた雰囲気が感じられなかった点は不安要素である。
また、右サイドではSBとCBの間を同じような形から破られていた場面もあった。
悪い点を修正出来なかったことも気がかりではある。

サイドを突かれ、クロスを上げられるとペナルティエリア内はゾーンで守る傾向にある。
そのため、高さのある選手にはヘディングを許す場面は多くなるかもしれないがきちんとボールに寄せ切ることが求められる。

今シーズンの甲府の最大の課題はセットプレーであったが、シンガポール代表は甲府のようにゾーンディフェンスでは無く、マンツーマンがベースの危険なエリアには人を配置してマンツーマンとゾーンの併用という形で行っていた。
セットプレーの守備はGKコーチが主導する場合が多いため、吉田監督の意向ではないかもしれないが変化は見られるかもしれない。

球際の強度やライン間のスペースをコントロールできるなら安定した守備は見込めそうではある。

5.予想布陣

吉田監督の代名詞である433に現状の甲府の選手を当てはめてみるとこのような陣形になると予想した。

退団の可能性が報道された選手を除いて選んでみた。
この中から移籍する選手も出てくることは予想され、新たに加わる選手も出てくるため参考にはならないと思うがまとめ的な意味合いで予想してみた。

6.あとがき

失礼かもしれないが、シンガポール代表は意外と良いチームであった。
このレベルのチームとしては非常にコレクティブであり、日本代表よりも現代的であった。
だが、やはりJリーグのレベルで考えると足りないと感じていた部分は隙となってしまうようにも思う。
これがシンガポール代表だからであれば良いが、素人にはわからない。
球際の強度や戦術理解度の高さは甲府の選手のが高く、この問題が杞憂に終わってくれると来シーズンも期待は持てそうだがどうなるか。
シンガポールの地で通訳無しで指揮を取る辺り頭の良さも伺えるだけにJリーグ仕様にアップデートできるのか。
過去3度失敗しているが、甲府の監督に就任となればシンガポール代表監督としての集大成となる大会で約10年ぶりのベスト4進出を果たしたことは見事である。
頂点を掴み、甲府に戻ってきて欲しい。

まだ、最有力と言うだけで決定ではないが今回は吉田監督について書いてみた。
伊藤監督の継続というと正直微妙な面もあるが、近い面も多々見られた。
どうなるかはわからないが、就任となれば全力で応援したい。
今度は達磨さんと共に喜び合いたい!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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