J2第30節 栃木SCvsヴァンフォーレ甲府 レビュー

今節はアウェイで栃木SCとの試合となる。
プレビューを書きましたので前置きはなくレビューに入りたいと思います。

1.闘い

スタメンはこちら。

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甲府は前節から6人、前回対戦からも6人の変更となった。
プレビューでの予想スタメンとは6人違った。
繋いで崩しきるのではなく、パワーで負けない、セカンドボール争いで負けないことを選択した。
ここでシーズン途中に加入したメンデスを起用してきた。
古巣相手にどんなパフォーマンスを見せるか注目となる。
また、前節完勝しながらも唯一悔しい思いをしたであろう新井にも注目したい。
厳しい声もあるようだが、キャプテンの存在は必要不可欠。
新井の活躍に期待したい。

プレビューの予想スタメンとは半分以上違うスタメンになっており、お読みいただいた方には申し訳なく思っております。

一方の栃木は前節から4人、前回対戦から6人の変更となった。
プレビューでの予想スタメンとは2人違った。
川田は9試合ぶり、佐藤は6試合ぶり、矢野は4試合ぶりの先発出場。
大崎は第9節以来の先発出場となる。

立ち上がりは栃木が前線に蹴り込んでくる圧力に押し込まれる入りとなる。
メンバーからもわかるように甲府が選んだ戦い方は栃木に合わせること。
繋いでハイプレッシャーをかわして行くのではなく、蹴り合う栃木の土俵の上で対抗して行く。

試合後の伊藤監督のコメントより。

『栃木の戦い方は分かっていたがハードに戦うことが必要。』

試合の入りからメンデスの起用が当たる。
徹底して蹴り込んでくる栃木に対してメンデスを中心に跳ね返し続ける。
それに対し、栃木はセカンドボールを回収し、また蹴り込んでくる。
序盤はこの繰り返しとなり、陣取り合戦の様相を呈する。

試合後の伊藤監督のコメントより。

・メンデス選手の評価は?
ロングボールやクロスの跳ね返しは素晴らしかった。

5分の松田のファール、8分の武田のファールの場面はこの試合の戦い方を示す場面であった。
松田のファールは甲府側の姿勢を示した場面。
球際で一歩も引かない姿勢を見せた。
武田のファールは栃木側の姿勢を示した場面。
攻守の切り替えを怠らず、甲府陣に近い位置でボールを奪ったら一気加勢に攻め込む姿勢を見せた。

10分の内田のスローイングは高さ、球際で負けない、栃木のスタイルで戦うことを示した。

普段はあまり使わないが、DFラインから今津とメンデスを上げロングスローを入れた。
田代がクリアしきれずにファーサイドの小柳のところに溢れてきたが合わせきれず。
再開後の初戦となった新潟戦では、太田のゴールを演出したように内田のロングスローは武器になりそうだ。

今節は綺麗にサッカーはしない。
漢と漢の闘いを制した方が試合を制する。
そんな試合の入りとなった。

2.再現性

15分頃から甲府は自陣から繋ぐ姿勢を見せるが、栃木のプレッシャーの前にあまり前進はできずボールを失うことが多くなる。

飲水タイムの直前には右サイドでプレッシャーを回避し、左サイドの泉澤へ展開する場面を作る。
このプレーが効いたのか飲水タイムを経て、甲府がボールを握れる時間が増える。

試合後の伊藤監督のコメントより。

『前半は最初の飲水タイムまでは栃木さんもハードに来ることは分かっていましたので、われわれとしてはその後にボールを握りながら勝負することも含めて、前半は良くできたと思います。』

飲水タイム明け最初のプレーでチャンスを作る。

相手のスローイングをカットし、内田から相手DFラインの背後へ。
ドゥドゥが抜け出しシュートを放った。

試合後の川田選手のコメントより。

『シュートストップとクロス対応についてはしっかりできたかなと思います。ドゥドゥ選手のシュートに対しては、相手の持ち方を見て、打ってくると思ったので、距離を取って準備したという感じでした。』

27分には栃木の守備の特徴を逆手に取り、背後を突く。

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甲府のビルドアップに対し、右肩上がりに人を捕まえに行く栃木。
人は捉えられるが場所は空けてしまう守り方で、右SB裏が空く。
この場面は川田の好判断で防いだ。
飲水タイム明けのプレーもスローイングからとはいえ右SBの背後を突いた形。
この時間は意識的にこのエリアを突いていった。

栃木のプレッシャーに対する逃げ道を見つけたことにより、ボールを保持できるようになり右サイドで小柳が高い位置を取り出す。

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だが、普段に比べ圧力が高く明確に可変はできない。

甲府がボールを保持する時間が増えるが、栃木も球際強くファールも含め試合を止めながら完全には甲府の流れにさせない。

40分にも上記の形からチャンスを作る。

右サイドから始めたビルドアップで相手を食いつかせ、左サイドで三角形ないしは菱形を作り、最前線の選手が背後を突く。
メンデスから内田へのパスに対し、武田が横にサポートに入り、背後へ抜け出すドゥドゥあるいは泉澤を使う形。
再現性のある形。
栃木の特徴を逆手に取るやり方ではあるが、他のチーム相手にも充分使える形だろう。

3.セカンドボール

前半の飲水タイム以降ボールを持てるようになり、いくつかチャンスを作ったが武田を中心にセカンドボールを拾えたことにより一方的に押し込まれ続けた前回対戦とは違いを見せる。

試合後の武田選手のコメントより。

『相手のやり方に対して、闘う部分、セカンドボールを奪う部分についてはできていたかなと思います。』

試合後の田坂監督のコメントより。

『相手もわれわれに合わせて長いボールを入れてきたあとのセカンドボールを狙うという争奪戦でした。特に武田(将平)選手に拾われたシーンがいくつかあって、そこで押し込まれるシーンは何回かありましたが、逆にセカンドが拾えたときには押し込めるシーンもあったと思います。』

後半に入り、どっちつかずの落ち着かない展開に戻る。
セカンドボールが拾えないため栃木の蹴り合う形に付き合うことになる。
はっきりとクリアできない場面が目立つ甲府。
特に今節は割りきる戦い方を選んだだけに中途半端では相手の思うつぼとなる。
前半の飲水タイム後、ボールを持てた要因は栃木がプレッシャーを掛けに行ってもDFラインの背後を突くことができていたから。
60分に後半初めて背後を突く形を作る。

松田、ドゥドゥの関係性から右サイドの背後を突き決定機を演出。

相手のDFラインを裏返す、ヘディングでクリアさせないボールを入れないと苦しくなる。
セカンドボールを前向きで拾わせないことにより、時間を作ることができ、ボール保持に繋げられた。

4.焦り

1つ裏を突いたことにより、甲府がボールを持つ時間が増える。
新井が中盤に上がり、ピッチを広く使いながら攻めるも最後の質を欠き、ゴールに迫りきれない。

試合後の武田選手のコメントより。

『相手を押し込んでからゴールを急いでしまった部分もあると思うし、押し込んでからもっと相手を見ながらボールを動かすことができれば良かったと思いますが、そこは今後の課題かなと思います。』

一方の栃木はチャンスらしいチャンスは作れなかったが71分にセットプレーの流れからゴールに迫る。

柳、田代、矢野とターゲットになる選手は揃っており、黒﨑のキックの質も高くセットプレーは栃木にとって大きな武器。

74分に西谷と大島を、80分に瀬川とエスクデロを投入し、ボールを持つ時間を増やす栃木。
特に西谷、エスクデロでボールの落ち着きどころを作れることにより蹴り込むだけだった攻撃に変化が生じる。

試合後の田坂監督のコメントより。

『後半は選手交代でゲームを動かしましたが、(西谷)優希やセル(エスクデロ 競飛王)やセグ(瀬川和樹)が入ったあたりからはボールを動かしながら落ち着かせることができたのですが、そこでなんとか1点が奪えれば良かったのですが、また次に向けて準備したいなと思います。』

対する甲府は83分に山本と金園を投入し、得点を取りに行く。
83分で最初の交代と遅く感じるようにも思うが、隙を見せた方が失点しかねない試合では交代は難しい。
栃木も最初の交代は74分と遅めであったし、山本と金園と経験豊富な選手ですら試合に入りきれなかったことからもわかるはず。
自分達の土俵で戦った栃木はいつもと変わらないため選手交代もスムーズにこなせたが、普段とは違うことをやらざるを得なかった甲府は動きにくい展開となってしまった。

終盤はメンデスを前線に上げてのパワープレーも見せるが効果的な場面は作れず。

試合後の伊藤監督のコメントより。

『最後パワープレーに出ていったときは大味になったところもあるが、選手はよく戦ってくれた。』

試合を通して相手のテンションに付き合わざるを得なかったため、終盤のパワープレー含めてゆとりや丁寧さに欠ける攻撃が多くなってしまった。
また、チャンスを作っても最後の砦川田修平を超えることができなかった。

試合後の田坂監督のコメントより。

『トレーニングのときも非常に体がキレていて、コンディションを維持してくれていました。一時期は連戦で少し疲れの状態もあったのですがそれも抜け切って、オビ(パウエル オビンナ)がいる間もすごく良い状態でいてくれました。今日も川ちゃんらしい安定したプレーを出してくれましたし、シュートストップやクロス対応は彼の特徴であり、オビにはオビの良さがありました。そういったところで今日の失点ゼロにかなり貢献してくれたのではないかなと思います。』

試合後の川田選手のコメントより。

『守備が今まで良い形できていたので、自分が入ることで崩したくなかったというところで、ゼロで終えることができたことは良かったと思います。自分の強みをしっかり出せたかなと思います。』
『プレッシャーも多少はありましたし、チームが昇格のためには勝ち続けないといけないというところで、自分が入っても勝てるようにチームに貢献したいという思いはありました。これからも自分の強みをしっかり出していきたいですし、チームを勝たせられるようなプレーをしていければと思っています。』

一方の守備陣はメンデスが空中戦の強さを発揮するなど栃木にはチャンスらしいチャンスは作らせず、守備陣はタフな闘いを頑張りきった。

終了間際に栃木がシュートシーンを作るも決め手には欠ける。

試合後の大﨑選手のコメントより。

『今日に関しては、なかなかアタッキングサードまでボールを持っていくことができず、攻撃チャンスも少なかったと感じているし、点を取るためにはもっと怖いところに進入していかないといけないし、どう進入していくかはというのもこれからもっと突き詰めてやっていかないといけないと思います。やはり、あれだけディフェンス陣が頑張っているので、攻撃陣もクオリティを出していかないと、良い戦いをしたのにという展開で終わってしまうので、僕は攻撃の選手だし、点を取ることについては引き続きこだわってやっていきたいなと思います。』

この大﨑のコメントは甲府にも当てはまることだろう。
試合を通して慣れない戦い方で戦わざるを得ず、終盤にはパワープレーも行ったが上手くはいかず。
明本不在ながらもファーストプレスや球際の強度は相変わらず高かった。
一方で明本ほど2度追い、3度追いでもプレッシャーの強度が落ちない訳ではなかったためあと1つ、2つボールを動かせばよりチャンスは作れた。
どうやって得点を奪い、勝ち切れるかまでは積み上げきれてないのが現状。
過密日程で積み上げが難しいシーズン。
立ち返るべきものはあれど信じきれず、焦りを生んでしまっている。

4.あとがき

選んだ策は相手に合わせること。
相手の良さを消すことに関しては成功したが勝ちきるまでには至らず。
前回対戦を考えれば良くやったと言えるだろうが、昇格に向けて後が無い中での状況では良かったとは言いがたい。
栃木は特殊なチームであり、自分達の積み上げてきたものを出しにくい相手である。
その栃木の土俵で戦い負けなかったことは成長と言える。
あとはいかに勝ちに繋げられるか。
ビルドアップはできるようになってきた。
崩しでも再現性ある攻撃ができるようになってきた。
間違いなく成長はしているが、質を上げること、決めきるまでに至っていない。
難しい問題で簡単にはいかないが、まだまだ成長できるとも言える。

MOM メンデス
初先発となったが栃木のロングボールに対して跳ね返し続けた。
セットプレーでは前線に上がり何度も競りかった。
メンデスにとっては力を発揮しやすい相手ではあったが、残り試合の中で戦力となることを証明した。

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