J2第17節 ギラヴァンツ北九州vsヴァンフォーレ甲府

前節群馬に勝ち連敗を止めた甲府。
今節はアウェイに乗り込み2位北九州とのシックスポインターとなる大一番。
台風の状況も気になる一戦だが勝ち点3を持ち帰らなくてはいけない。

一方の北九州は昨シーズンJ3で優勝し昇格してきたチーム。
前節栃木と引き分け連勝は止まったがそれまで9連勝で10戦負けなし。
その間毎試合複数得点を重ね得点数はリーグトップの30得点を挙げている。
一方で無敗期間中最初の2試合は完封もその後の8試合は失点を続けている。
ここ3戦は先制されながらも追いつき、勝ち越しまで持っていき勝ち点を重ねる。
間違いなく強い相手だ。

前節完封したとはいえ守備には不安のある甲府。
後ろに引かず前節の前半のように矢印を前に前に持っていき撃ち合いに持っていく形が理想か。

1.勝負の時

スタメンはこちら。

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甲府は前節から8人変更。
注目は新井涼平。
前節の前半可変が上手くハマり機能した中で大きな役割を果たしていたのは山本英臣。
その山本に代わり同じポジションには新井が起用された。
北九州のハイプレスをいなすには可変しアンカーに入るこのポジションの選手は肝となる。
ハイプレスをいなしボールを持つことが出来れば前線のラファエルが孤立することはなく厚みのある攻撃に繋げられる。

北九州は前節から5人変更。
注目は高橋大悟。
昨シーズンから清水エスパルスよりレンタルで加入。
14試合7ゴールを挙げJ3優勝に貢献。
今シーズンもレンタルを延長し残留。
ここまで16試合に出場し4ゴールの活躍。
左足のキックの精度が高い選手。
第13節大宮戦よりボランチに転向。
どのようにゲームを作りゴール前に関わってくるか注目。

立ち上がりよりアグレッシブに入ったのは甲府。
開始2分に太田のシュート。
前節の松田同様早い時間にファーストシュートを放ち積極的な姿勢を見せる。

今節の攻撃時の可変はこのような形か。
433形成は変わらずも新井をアンカーに上げる形ではなく全体的に右にスライドする形を採用。
前節は山本がアンカーに上がる形+武田の左SB化で433形成であったが北九州のハイプレス対策か、DFラインの背後のケアのためにスピードのある新井を最終ラインに残して置きたかったのか定かではないがまた新たな形を披露する。

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一方の北九州の攻撃時の可変。
加藤弘堅が出ている時は左CBの位置に降りることが多かったが今節出場した藤原はそのような動きはあまり見せず。
ワントップで構える甲府に対してはCB2枚でボールを回せるという判断か?

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お互い狙いは幅を取ること。
上記のように相手DFラインの人数よりも1人多く配置し大きな展開からDFラインを広げることが狙い。
サイドの攻防がこの試合のキーポイントとなる。

前半10分のCK。
甲府はトリックプレーを使う。
今まではショートコーナーはあるがトリックプレーは無かった。
この試合に懸けていることが伝わる場面。

その気持ちの強さが実を結ぶ。

武田が中塩からボールを受けると北九州は全体が押し上げボールを奪いに来るが泉澤が上手く背後を取ることに成功。
武田のパスは相手DFが滑ってしまう幸運もあり通る。
最後は泉澤のシュートのこぼれにパスを出した武田が詰める。
北九州のハイプレスを逆手に取る形から先制に成功する。
栃木戦に敗れて以降の群馬戦、北九州戦とゴールへ向かう姿勢が高まってきている。
負けが許されない試合で最高の入りを見せた。

しかし、北九州も少しでも隙を見せたらシュートまで持っていかれる怖さは常にあった。
28分の佐藤のシュート場面。
ハイプレスに来た北九州の守備をいなし、相手を引き出しDFラインの裏を狙うも通らず武田がDFラインにプレスをかける
その空けたスペースを泉澤が絞って対応しなくてはいけなかったが怠ったことにより中塩が釣り出されそこを鈴木に使われてしまう。
抜け出した鈴木からのパスを受けた佐藤が最後はシュートを放つがなんとかブロックした場面。
一瞬の隙も見逃してくれない。
2位にいることもリーグ最多得点なのも納得の攻撃力である。

2.起点

この試合攻守共に起点になったのはラファエル。
攻撃では楔のパス、シンプルなロングパスを常に収め続けた。
前半は孤立する場面もありながらも失わず味方を活かし、時間を作った。
守備ではファーストディフェンダーとしてパスコースを限定し、守備の方向づけをし続けた。

伊藤監督の試合後のコメントより。
『4-3-3の距離感がよかった。前半、ラファエルが孤立するところもあったが、後半は修正できた。自分たちのやってきたことが出来始めてきたのかなぁと。自信を持っていいと思います。 』

伊藤監督のコメントにあるように後半は距離感を修正することができより存在感を増していく。

3.覚醒の時

ここまで3得点を挙げドゥドゥ、バホスに次ぐ3得点を挙げている太田。
先日には入籍が発表された。

恩師の想いも背負い大学経由で戻ってきた。

2年結果が出ず苦しいシーズンを過ごしてきたが再開後初戦の新潟戦でJリーグ初ゴール。
水戸戦、琉球戦でもゴールを挙げていた。

小林のクロスに太田。
アカデミー出身者2人で奪ったゴール。
最高のゴール!
栃木戦で上手くいかなかった小林だが1週間で建て直してきた。
起点はラファエル。
右サイドに展開し、右WB小林の突破から左WBの内田がニアで潰れて太田が決めきった。
WBのクロスに反対サイドのWBという形はあまり見られなかった。
厚みのある攻撃を仕掛けられていのを証明するような得点。

試合後の太田選手のコメントより。
『1点目は、今日の選手間の距離がすごく良かったので、そこでまず真ん中で引きつけて、(小林)岩魚がサイドを突破してくれて、ニアに(内田)健太君が走り込んでくれていたのですが、右ウイングバックのクロスに左ウイングバックがニアに入るという、今までにあまりなかったような形で、2列目が空くというのはスカウティングにもあったので、今日やりたいことが出た得点だったと思います。』


今節2点目のゴール。
1人で持ち込み決めきった。
この場面岡西のキックが味方のいない所へ蹴ってしまう。
ラファエルが触れずとも献身的に寄せたからこそボールが太田の元へこぼれて来た。
太田のゴールは見事であるがラファエルの献身性も見逃してはいけない。

試合後の太田選手のコメントより。
『2点目は、今日は、試合が始まる前から、自分がボールを持ったら相手ゴールにどんどん向かっていくことを見せていかなきゃいけないと思っていたし、それが自分の売りなので、そこは余すところなく出そうと思っていたので、前に道が見えたので、パッと決めて行きました。行くところまで行ったのであとは足を振り切って、シュートには自信があるので、相手に当たって入った形でしたが、振り切ったのが良かったのかなと思います。』


両チーム最多のシュート数、ドリブル数も泉澤に次ぐ数。
ゴールを目指し続けた姿勢が結果に繋がった。

これで今シーズンチームトップタイの5ゴール目。
アカデミー出身者が甲府で挙げたシーズン最多ゴールに並んだ。
1点目のようにワンタッチゴールが多い印象の太田。
水戸戦ではミドルシュートを決めたが2点目のように1人で打開して決め切るイメージはなかった。
得点パターンも増えてきておりいよいよ量産体制に入ったか?

背番号は恩師の亡き小佐野さんの好きだった18を背負い、先日は入籍も果たした今シーズン。

いよいよ青赤の漢太田修介覚醒の時が来た。

4.ハイライン

試合を通してDFラインは高く保たれた。
特に3点目を奪ってからはボールに対して最終ラインが30m以内に設定されていた場面も何度も見られた。

チーム全体のアグレッシブな姿勢に新井のDFラインのコントロールがハマった形。
最前線のラファエル、金園が献身的に前線からプレッシャーをかけてくれなければできないこと。

ハイラインハイプレスは長らく甲府では見られなかった形。
当然リスクもある形であるがリターンも大きい。

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今節はメリット面が多く出てデメリット面を消せた試合である。
チーム全体でハードワークし、前線から連動してプレスをかけ続け、新井を中心に積極的にDFラインを上げることができた。
1人でもサボる選手がいたら北九州の攻撃力であれば失点をしていた。
栃木に完膚なきまでにやられて1週間。
北九州も似たような志向のチームであるがその北九州相手に、相手の土俵で戦い完封で勝ち切った。
チーム全員の頑張りが10試合連続で複数得点を奪っていたチームを完封することに繋がった。

5.あとがき

完勝である。
随所に北九州の怖さを思い知らされる時間もあったが、相手のやりたいことを逆に自分たちができた試合であった。
しかし、北九州は強かった。
2位にいることは全く不思議では無いチーム。
そのチームに完勝したことは自信になる。

伊藤監督のサッカーの形が見えてきた。
この勝利は甲府のサッカーが変わるきっかけの試合になるかもしれない。
そういう期待感を抱かせる試合となった。

反撃の9月。
待っていろ首位長崎。
J2の主役は俺たち甲府だ!

MOM ラファエル
ファーストディフェンダーとして守備の起点となり、ラフなボールも収め攻撃の起点ともなった。
空いているポジションを見つければDFラインまで下がり守備に加わる。
ストライカーとして決定機を決められなかったことは課題だが攻守ともにチームを牽引したのはラファエルだった。
結果だけで評価してはいけない選手である。

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