慢性腎不全②
・治療
動物の慢性腎不全の治療法には、大きな柱は3つあります。
①食事
②サプリメント
③点滴
個人的な所感ですが、治療効果が占める割合は
①15%
②15%
③70%
といったようなイメージで、特に点滴は効果がはっきり目に見えてわかるためお勧めしやすい治療法です。
1つの方法だけではなく、組み合わせてできればそれだけ効果がわかりやすく出ます。
①食事
原理としては単純で、食事でとったタンパク質を分解すると尿素窒素などのゴミが出てしまうため、《タンパク質量を制限した食事に変えることで、尿素窒素の産生を減らそう》と言うものです。
そうすることで、腎臓や腸で処理すべき尿素窒素の量を少なくすることが目的です。
(*図では通常のフードだと100のゴミが出てしまうところ、腎臓用療法食にすることで70のゴミに抑えられています。)
基本的に獣医師のすすめる療法食は、そのフードと水を与えるだけで必要な栄養バランスを満たし、健康を保つことができる"総合栄養食"です。
それ故に腎臓食は、タンパク質を制限する代わりにバランスをとって脂肪分が高くなりがちなフードです。
その脂肪分により便が緩くなる・嘔吐回数が増えるなどの症状や膵炎を発症するケース(犬)もある為、獣医師にしっかり相談しましょう。
慢性腎不全において、
食べてくれるならば最も動物にもストレスが少なく、初期から積極的に行っていける治療法です。
費用面は、療法食の値段に依存します。
500g : ¥1500前後
2kg : ¥4500〜5000程度
(病院や販売会社により変動します)
②サプリメント
《本来腎臓から尿として排泄されるべき尿素窒素などを吸着して、腸から便として出す》役割をします。
その結果腎臓から排出すべき尿素窒素が減るため、慢性腎不全には良い効果をもたらします。
(*図では、通常腸から50 , 腎臓から50捨てるゴミをサプリメントの効果で腸から70 , 腎臓から30捨てるように腎臓の負担を軽減しています。)
一部を除き、あくまで医薬品ではなくサプリメントですので、効果はその子その子によってマチマチではありますが、副作用などはすくないため気軽に試すことができます。
販売種類は多いため、服用させやすい剤型や味・量で選べるところはいい点です。
主に食事・点滴と併用することが多く、サプリメント単独で治療を試みることは少ないように感じます。
費用面は1日2回のサプリメントがほとんどで種類によりますが、
1回 : ¥50〜120
が多いように感じます。
(病院や販売会社により変動します)
③点滴
点滴は直接水分を摂取しているのと同じような効果が出るため、通常よりも排尿回数が増えます。そのため《一度に排出できる尿素窒素が少なくとも、回数を増やせばそれを補うことができる》というのが狙いです。
(*図では、一度の排尿で50のゴミを捨てられていた腎臓が慢性腎不全によって一度に10しか捨てられなくなってしまった。
それを5回排尿することで10×5の50のゴミを捨てるように促しています。)
動物の点滴には2種類があります。
時間 効果
皮下点滴 15分程度 約半〜1日後
静脈点滴 8時間以上 数時間後
・皮下点滴
背中の皮膚の下に点滴を溜めて帰る処置です。15分もあれば終わるので時間は短く、特別な医療行為ではないため練習は必要ですが自宅で飼い主の方も実施できます。
・静脈点滴
人間と同様に静脈の血管確保を行い、長時間点滴を流し続ける処置です。
慢性腎不全の場合少なくとも8時間以上流し続けるため、預からせていただくケースがほとんどです。
即効性は比較的高いため、皮下点滴で維持できなくなった子に対して数日〜1週間入院して静脈点滴を行い、ある程度改善したら皮下点滴に戻るという方法を取ることもあります。
基本的には医療器具が必要な為自宅で行うことはできません。
他の2つの治療法とは違い効果がすぐに実感できる、目に見えて体調の改善が顕著に現れるため慢性腎不全の中では治療の主軸を成しています。
費用面は
100ml 皮下点滴 : ¥1600
200ml 皮下点滴 : ¥2000
症状によって週何回かは変わります。
1日入院静脈点滴 : ¥3000〜4000
(病院により大きく異なります。特に入院の場合静脈点滴以外のことも必ずさせていただくため追加費用が別途発生します)
少しでも目安になるといいかなと思って載せています。
・治療のデメリット
慢性腎不全の治療をしているため腎臓に対しては負担を軽くする良い治療をしていますが、他の臓器に負担がかかる場合があります。
・療法食
腎臓食は脂肪分が多いフードのため、犬の場合は膵炎になる可能性があります。
今現在では猫は脂肪分の影響は受けないとされています。
・サプリメント
あくまでサプリメントなので、効果が必ずあると言うものではありません。
効果が出やすい、出にくいがあるものなので、実際に試してみる他ありません。
・点滴
一時的に血液を薄めて血液量が多くなるため、その分心臓に負担がかかります。
心臓病を抱えている子には、悪化リスクへの注意が必要です。
この他にも続々と新しい治療法ができてきています。
今後、腎臓を治す治療法が出てきたら動物たちの寿命に大きく影響を与えそうですね!!