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WJVF2020 レポート

「犬の低アルブミン血症」 〜中島亘先生〜

初のオンラインで開催されたWJVFの講義まとめです。

アルブミンとは、ほとんどが肝臓で産生されます。その半減期は犬で8日間程度です。このアルブミンが減少した場合に臨床獣医師はどうするべきなのか?が今回の講義内容になります。

犬の低アルブミン血症は、猫より多いです。臨床兆候は様々で全く認められない症例もいます。猫は、蛋白漏出性腸症超や肝硬変、門脈圧亢進が少ないからです。

もし、低アルブミン血症が認められた場合には、比較的重症な疾患に移行する可能性があることを家族に伝えることが大事になります。また臨床兆候がない場合でも、進行し生命の危機に陥る可能性があるため精査が必要になります。

蛋白漏出性腸症における臨床兆候の重症度と生存期間について。臨床兆候が重度なほど、生存期間が短く2年を超える犬は、25%くらいだそうです。軽症な場合、比較的長期に生存する可能性がありますが、3年目くらいで徐々に病気が蓄積して崩れていくケースが多いようです。

低アルブミン血症の鑑別リスト
・蛋白漏出性腸症
・蛋白喪失性腎症
・肝不全/門脈高血圧
・出血
・アジソン病
・重度の胸膜炎や腹膜炎
・飢餓/低栄養
・膵外分泌不全
・過剰輸液や右心不全

低アルブミン血症を見つけたら・・・
・スクリーニング検査・UPC測定・TBA・コルチゾール基礎値
・下痢があったらTLI・胸腹水があったら採取

一般的にアルブミンが1.5を下回ると腹水や胸水が貯留し始めます。
ほとんどが単純漏出液です、アルブミンが2.0で重度の腹水が観察される場合、他の要因(門脈圧亢進、右心不全、出血)を考慮します。

◯蛋白喪失性腎症の診断
・BUNは上昇しないことが多いです。
・UPCの測定が確実にR/Oできます。低アルブミンの原因であればUPC>5であることが多いです。PLEとPLNの併発は、ヨーキーに多く観察されます。

◯蛋白喪失性腎症の治療
・テルミサルタン
・糸球体腎炎であれば、免疫抑制剤の使用。

◯肝疾患による低アルブミン血症
・肝機能低下_肝臓機能の75%以上に低下する場合。
・門脈圧亢進症

◯門脈圧亢進症の治療
・スピロノラクトンやトラセミドによる腹水コントロール
・肝性脳症のコンロール
・腹水が無くなったらALBは上昇する傾向にある
・慢性肝炎と診断されたら抗炎症/免疫抑制療法に入る。

◯アジソン病
・副腎皮質の機能低下で副腎皮質ホルモンが欠乏する疾患です。最近では、非定型アジソンが多くコルチゾールのみが欠乏し、電解質の乱れが認めらないことがあります。症状として、元気食欲低下、体重減少、嘔吐、下痢があります。
・診断基準には、
 ①ACTH刺激試験後のコルチゾール値が<2.5
 ②血症Na/K比が正常(>27)
 ③発症の6週間前からステロイドの使用歴がない
・治療
 Pre 0.1-0.1mg/kg/SID-BID

◯蛋白漏出性腸症
・胃腸粘膜から蛋白が漏出
・粘膜のびらん、潰瘍、リンパ管拡張/破裂
・炎症や腫瘍による透過性亢進

◯PLEの診断は除外診断から始めます。超音波検査における小腸の観察は重要です。必ず絶食で実施することが基本です。食事を食べると食事中の脂肪で粘膜の縦線が際立つことがあるので必ず絶食下での観察が必要になります。

◯PLEの予後についてです。アルブミンの低下の度合いではなく、症状の強さによって予後が決まるようです。臨床兆候が強いほど徹底的に治療をするべきです。


 ・慢性腸症/リンパ管拡張症でPLE
    3年 生存率50%
              5年 生存率30%ほど
 ・小細胞性リンパ腫
    1−2年 生存率50%ほど
 ・大細胞性リンパ腫
    2−3ヶ月 生存率50%
    6ヶ月  生存率10%ほど

◯予後不良因子
 CIBDAI高値、治療で良化しない、血清ビタミンD濃度の低下
病理組織検査でリンパ腫、十二指腸のリンパ球クローナリティー陽性

◯PLEの治療
・軽症なら食事だけでもいける!!
・食事中の脂肪は低めを選ぶ。特にリンパ管拡張があるならば。
・治療抵抗性のPLEには、ULF(超低脂肪食)を選択する。
・ステロイドなどの薬剤を必要とする場合も多い。
・低脂肪食:消化器サポート、ささみ+ジャガイモ、
ダック&タピオカ、I/d low fat

◯主な治療
・ステロイド1-2mg/kg
・クロラムブシル 2-6mg/kg

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