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「ストレスをなくそう!」は苦しさをうむ!?

ストレスの対処法をまとめているのに、このタイトルはどういうこと!?と、のっけから混乱してしまう方。このタイトルで混乱してしまうのならば、ある思い込みがあるのかもしれません。

ストレスの対処法シリーズを始めたものの、大前提を紹介していなかったことに気づきました。というわけで、今週はシリーズはお休み。ストレスに対処していくために、大切となる考え方を紹介します。

ストレス対処の本質は「ストレスを減らす!なくす!」ではなく「ストレスをいかに肯定的に捉え直すか」にあると僕は考えています。


ストレスは悪いもの、減らすべきものという思い込み

意味わからん!読むのやめよ!!…と、なる前に。

「ストレスは悪いもの。だから減らしていったほうがいい」という考え方を持っていませんか? 僕も持っていました。そう思い込んでいたともいえます。テレビをみても、自己啓発系のビジネス書をみても、どこをみても。

「ストレスは健康に悪い、メンタル不調につながる」
「ストレスはパフォーマンスを下げる」
「ストレスのない生活!素晴らしい!」

こんなメッセージにあふれていて、それに疑問を持つ発想さえありませんでしたから。しかし、専門的な学びを深めるにつれて世間に浸透する「ストレスは排除すべき悪!」という価値観が覆りました。



「ストレス」という言葉が使われる範囲は限りなく広い

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生理学者ハンス・セリエの「ストレス学説」に端を発したストレス研究(実験開始:1936年、ストレス学説の発表:1956年)。世界各地で盛んにストレス研究が行われ、メディアもこぞって取りあげ。いまや、知らない人はいないほどの言葉として普及しました。

しかし、その言葉と研究結果がひとり歩きしてしまった感は否めません。これまでのストレス研究の結果の多くは、ヒトではなくラットなどの動物実験のデータに基づいています。そこで従来行われてきたストレス負荷をかける方法とは、陸地のない水槽で長時間に渡って泳がせる、回避不可能な電気ショックを予測不可能なタイミングで与える、完全な身体拘束をほどこす、といったものです。

その結果、健康に悪影響が及ぼされ、最終的には死に至る。そりゃそうだろ!?

一方で、私たちが「あー。ストレスやばいわ。」といっている場面を想像してみてください。多くは人間関係や仕事の悩み、人生についての悩みといった心理的ストレスを言っているはずです。

陸地の見えない太平洋の真ん中に放り出されたり、無慈悲な電気ショック装置を埋め込まれていたり、というバイオレンスなストレスではないでしょう。ないと願っています!

僕らの日常生活の中での「ストレス」と、多くの研究の中での「ストレス」という言葉は実はまったく異なっているのです。その認識なしにマスメディアの「ストレスがかかると〜」という話を信じ込むのは危険といえるでしょう。

月80時間を超えるような長時間の残業や、生理的に必要な睡眠時間もとれないなどのストレスはうまく付き合うことなど考えず、逃げてしまうのが最善です。それは心理的ストレスではありません。氷点下の屋外で裸の人間が生きていけないのと同じレベルの話です。この記事内の「ストレス」とは日常生活で僕らが直面する「心理的ストレス」を指します。


ストレスには良い面もある

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ストレスはうつ病や適応障害などの精神的疾患だけでなく、高血圧や糖尿病などの身体疾患まで含めて幅広く健康に害を及ぼす。

この点に異論を唱えるつもりはありません。ストレスによって、今日ひろく知られているような健康への悪影響が生じうるのは多くの研究が裏付けています。

ただ、一方で。

ストレスが免疫機能を高めることがあるという証拠も多く出ています。ストレスが気力を増し、覚醒レベルを高め、心身のパフォーマンスを底上げして課題や困難に対処する力をもたらすこともわかっています。

ヒトが最高のパフォーマンスを発揮できるとされる「フロー(没頭)状態」。フローに入るにはストレスの存在が欠かせないといわれています。プレッシャーのかかる困難な手術の最中、完全に手技に没頭していた経験はないでしょうか。ストレス反応の1つとしてフロー状態がもたらされ、最高のパフォーマンスがもたらされるのです。

さらに。

ストレスを感じた時に分泌されるコルチゾール。PTSD(心的外傷後ストレス障害、いわゆるトラウマ)の治療に、コルチゾールの投与が効果を示すとされています。ストレス下で分泌されるホルモンが、いわゆるトラウマの治療に役立つのです。



積み重ねられてきた知見をまとめると、「ストレスは100 %悪いもの」と断言することはどうしてもできないのです。前出のハンス・セリエ自身も「ストレスには良いものも悪いものもある」という言葉を残しています。



「ははーん、ストレスの強さ・量が問題なんだな?」…いいえ、違いそうです

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ストレスが良い影響を与えるか、悪い影響を与えるか。それはストレスの量(強度)によってわかれるんだろう!?

いいえ。最新の知見によって、この通説がどうやら違いそうだという考え方が広まりつつあります。では、ストレスが良い影響をもたらすのに必要な条件はなんでしょうか。

「ストレスを肯定的に(成長・学習の機会などと)捉える考え方(マインドセット)」だと言われています。

たとえ強度のストレス下にあっても、それを肯定的に捉えることができれば、ストレスは良い影響をもたらすというのです。

初めてこの考え方に触れた時、最初は半信半疑でしたが今なら心から納得できます。僕自身がストレスを嫌なものと捉えていた時期は、ストレスを感じている状況自体が嫌で嫌でしかたがなかったのを覚えています。ちょうど適応障害を発症するまでの時期です。しかし、ストレスを受け入れて共存する道を選んでから、以前のような息が詰まる苦しさを感じることはほぼなくなりました。(もちろんたまにはありますよ。仙人ではありません。)

そして実は心理療法の世界でも同じ考え方をしていました。
心理療法として広く行われている認知行動療法や、来談者中心療法・ブリーフセラピーなどに代表される実存主義的カウンセリング流派群。

これらカウンセリング技法の最終目標・本質は、「ストレスを減らすこと、なくすこと」ではないのです。カウンセリングを通じて、クライエントがストレスを受け止め、色々な視点から捉え直し、成長へと繋げられるようになることが最終目標です。その過程でストレスの強度や量が減ることはあるでしょう。しかし、ストレッサーを減らすことそのものはあまり重要視されません(…と僕は考えています)。

多くのカウンセリングの技法や理論は、ストレスへの向き合い方を肯定的な方向へ変える支援ともいえます。


さいごに丨 ストレスを受け入れ、共存し、利用する

こちらの記事でも紹介したように、心理的ストレスは「どうでもいいこと」には原則発生しません。自分の人生に「大切なもの」がある限り、ストレスは生まれ続けると僕は考えています。

ストレス対処の本質は、「ストレスを減らそう」ではなく「ストレスといかに共存して利用するか」にあると考えています。その第一歩が、ストレスを冷静に受け入れること。


とはいえ、ストレスに関する考え方を急に変えるのも難しい。半信半疑の方もいるでしょう。そのためのストレス対処法シリーズです。ストレス対処法シリーズは「ストレスを減らす!なくす!」ためのシリーズではありません。「ストレスを肯定的に捉え直す」ためのシリーズです。


シリーズ名変えようかな…!ストレス利用法シリーズ!読む人いなくなるかな笑


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