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認知の癖③丨個人化ーあれは自分のせいだ…と思ったら

僕が動物病院にスタッフに多いと考えている認知の癖、最終回です。その名も「個人化」。物事を当事者意識を持って捉える、いわゆる「自分ごととして考える」ことが習慣となっている方に多い印象です。


「個人化」とは

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周囲に生じるさまざまな事象について、自分に関連付けて考えてしまう癖を指します。まさに「自分ごととして考える」こと。多くのビジネス書でも「自分ごととして考える」ことが礼賛され、「社会人たるもの当事者意識を持って仕事をしなければ!」との価値観が広く受け入れられているように思えます。


「個人化」の具体例

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Case 1.
■状況
正しく診断されたアトピー性皮膚炎の犬にステロイドを処方したが、効果がなかった。

■個人化の具体例
あぁ‥効かなかったかぁ。飼い主さんにも、わんこにも申し訳ないことをしてしまった。


Case 2.
■状況
受付でいつもどおりの対応をとっていたつもりだが、ある飼い主の感情を傷つけたようで嫌な顔をさせてしまった。

■個人化の具体例
あぁ…私がもっと飼い主さんに合わせて臨機応変に対応していれば…


「個人化」の罠

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前提として、物事を当事者意識を持って捉えることを非難する意図はありません。適切なレベルの当事者意識をもつことは成長のエンジンにもなりますし、所属する組織にとっても貢献度の高い人材となることでしょう。

一方で、当事者意識が過剰になると自責の念、後悔の念があとからあとから湧いてきて、精神的な落ち着きを保つどころではありません。成長に向かうエネルギーどころか、普段の生活や暮らしを維持するエネルギーも奪われてしまいます。

Case 1. を見てみましょう。
アトピー性皮膚炎の犬にステロイドを投与して改善しなかったのは、獣医師の責任でしょうか(実はアトピーではなく疥癬だった、とかはナシです!)。

違います。アトピーの犬が100頭いれば、何頭かはステロイドが効かないのです。それは誰が悪いわけでもありません。


Case 2. はどうでしょうか。
自分ごとで振り返ることで、今後に活かす学びや改善点を見出すことはできるかもしれません。そこで「よし、次に向こう!」と思えるなら、問題はありません。

一方で、そこで自責の念、後悔の念に襲われるのであれば。もう少し柔軟に考えたほうがいいかもしれません。


これまで100人に対して「いつもどおりの対応」で問題なかったのなら、たまたまその相手に合わなかっただけでしょう。振り返りをして、自身の改善点を探すことは素晴らしいことですが、「自分のせいで」とまで思い悩む必要はないといえます。相手の感情は相手のものであり、相手の責任でもあるのです。


自分に「個人化」の癖がありそうなら…

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物事を自分ごととして捉える。当事者意識を持ってさまざまなことに向き合える。なかなかできることではありません。仕事をしていくうえでも強みとなることでしょう。

まず、自分のその強みを認めた上で、せっかくの強みが自分のメンタルを悪化させにくくする方法を探すのが良いと僕は考えています。

おすすめは、あえて「他人事として考えてみる」ということです。

あなたの同僚が同じ状況で、同じ思考になり、辛い感情を持っていたらなんと声をかけるでしょうか。

あるいは、あなたの後輩なら?友人なら?

「当事者として捉えている視点」も、結局は数多くある視点の1つに過ぎません。他人事の視点から考えたからと言って、当事者視点で考えられなくなるわけでもありません。両方の視点を合わせ持っておけばいいのではないでしょうか。物事を柔軟にたくさんの視点から考えられる、という新たな強みも伸ばすことができます。

ただし、コツがあります。

これまでも繰り返しお伝えしてきていますが、頭の中だけで感情や思考を整理するのはとてもとても難しいです。紙に書き出したり、人に話してみたりすることをおすすめします。


「個人化」の癖で苦しんでいる人を見かけたら…

病院のスタッフや、後輩の獣医師・看護師、はたまた家族など…この癖に苦しめられている人に気づいたら。

「深く考えすぎじゃない?」

「大丈夫、大丈夫!あなたの責任じゃないよ!」

「あれはしかたないことだと思うよ!」

といった言葉をかけてはいないでしょうか。その優しさは素敵なものですが、残念ながら効果をあげる可能性は低いでしょう。


「あなたの親しい人が同じ状況で、同じ思考になり、同じく辛い感情を持っていたらどう感じる?」と声をかけてあげるほうが、辛い感情を軽減させる可能性が高いと思っています(経験的にもそうでした)。

そして…!このnoteを紹介してみてください!
最後の最後に宣伝でした笑

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