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動物病院業界の現状丨獣医療従事者のメンタル事情
前回の記事では、日本社会全体のメンタルヘルスに関してまとめました。
一方で、僕がいるのは動物病院業界。
獣医療従事者に焦点を合わせたとき、どのような知見が出てくるのか。
実は思ったよりもかんばしくありません…(あるいは予想通り!?)
前回の記事同様、重要なポイントは画像でまとめています。
つまみ食い、流し見、どうぞどうぞ!
日本の現役動物看護師さんのうち…48.8 %!
いきなりクイズ!
現・北里大学講師の木村裕哉氏が発表した日本国内のデータです。
この数字はなにを示しているでしょうか。
いきなりヒント!
この調査では、
うつ病や抑うつ状態のスクリーニングを行うために開発された
心と身体の健康調査票(STPH)が用いられています。
正解は…
正解は、前述のスクリーニングツールでうつ病の可能性があると判断された調査対象者の割合でした。
「うつ病である」ではなく、「うつ病の可能性がある」としているのは
うつ病の診断には医師の診察が必須であるからです。
しかし木村氏はこの報告の中で、以下のように述べています。
STPHのうつ病診断に対する特異度は0.88と優れており、
偽陽性が少ないため、この調査票で陽性であった場合に、うつ病と診断される可能性は比較的高いと考えられる。
僕は初めてこの結果を目にした時には衝撃を受けました。
国内において、生まれてから死ぬまでの間にうつ病を発症する人の割合は
約 10%といわれています。比較して、あまりに多すぎると感じました。
さらに、調査対象は「現役で勤務する」動物看護師です。
繰り返します、「現役で」働いている方たちです。
木村氏の調査は比較的少人数を対象としているがゆえ
研究パワーの限界もあるでしょうが、
よくよく振り返ってみると僕の肌感覚とも一致しています。
多くの動物看護師さんがうつ病に匹敵するほど精神的に辛い状況の中で、
それでも踏ん張って働き続けている姿が想像されます。
うつ病に代表されますが、精神疾患の中には病状が重くなるほど
正常な判断力が失われ「病識(自分が病気になっているという認識)」を
持つことができなくなっていくものがあります。
もし今、画面の向こうで。
大きな精神的負荷を感じている方がいるならば、どうか自分を追い込みすぎないでくださることを願ってやみません。
獣医師はどうなの?
前章で動物看護師さんに関するデータを紹介しました。
では、獣医師はどうなのか。
実は日本国内において獣医療従事者のメンタルヘルスについて調査した報告は、非常に数が少なく、まだまだ実態は明らかにされていません。
前述の木村氏の報告は貴重な一報であるといえます。
対して、欧米諸国では頻発する獣医学生や獣医師の自殺などを経て、
獣医療従事者のメンタル不調リスクが広く認知され始めています。
代表的とも言える報告をかいつまんでご紹介します。
イギリスでは職業別にみた獣医師の自殺率が飛び抜けていることを受け、
すべての獣医学部にカウンセリングルームを設置したり、
獣医師を対象としたカウンセリングサービスが展開されたりといった
取り組みが行われているようです。
オーストラリアの獣医大学では、獣医師の自殺問題が授業のカリキュラムに組み込まれていると聞きます。
(海外の実情に詳しい方、ぜひ教えて下さい!情報求む!)
アメリカでも同様に獣医師のうつ病や自殺リスクの高さが問題とされ、
ニュース雑誌の世界的権威である『Time』誌でも取りあげられています。
対して、日本は。
研究報告の数をとっても、
まだまだこの分野においては諸外国に遅れをとっているといえるでしょう。
人口減少、労働力不足が深刻化しつつある日本社会で、
日本の獣医療が継続的に発展していくために、
獣医療従事者が動物を救い続けていくために。
そのためにメンタルヘルスへの取り組みが重要であると僕は考えています。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
次回は「セルフケアの重要性」についてまとめる予定です。
コメント・シェア大歓迎!
こんな話もあるよーも大歓迎!
獣医業界に限らず他業界のことでもなんでもぜひ教えて下さい!
参考文献
木村 裕哉ら, 動物看護師31名の労働状況とメンタルヘルス, Animal Nursing, 15-16, 1-5, 日本動物看護学会, 2010.
Batram DJ et al., A cross-sectional study of mental health and well-being and their associations in the UK veterinary profession, Soc Psychiatry Psychiatr Epidemmiol, 44, 1075-1085, Sprlnger Internatlonal, 2009.
Fritschi L et al., Psychological well-being of Australian Veterinarians, Aust Vet J, 87, 76-81, Australian Veterinary Association, 2009.
イタリックにする方法がわからない…!!
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