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北米獣医師免許試験・備忘録2、これから獣医を目指す皆さんへ

前回、備忘録1は2012年初めごろに書いたと思ったんですが…違うかな、もしかしたら中旬頃だったかもと備忘録2を読んでいて思いました。

北米獣医師取得のコーナーなのに、何故にこんなタイトルで記事を書いているかというと、獣医業に戻るにあたって思うところがあったからです。

獣医学部を持つ、私の卒業校である酪農学園大学の獣医学類ホームページを見ると「動物の生命を救いたい、その情熱が強ければきっと獣医師になれる」と書かれています。それは勿論そうでしょうし、入学するまでは、私もそれを単純に信じていたのですが…実際獣医学部に入ると、最初は救う命より殺す命の方が多いです。卒業後に就く職種によっては、殺してばかりということもあります。だから私は獣医業というのは命を救う生業というより、命と向き合う生業と言った方がいいのではと思う事がしばしばです。獣医師というと「どうぶつのお医者さん」というイメージが強いのですが、就労条件が整っているなどの理由で公務員で獣医師という人も多い割には、この職種についてはあまり知られていないのではないでしょうか。

例えば私が従事していた「食肉検査員」。あれはどういった事の次第でそうなったか判らないのですが、法律的に「獣医師でなければ従事できない」のです。仕事内容としては、毎日と畜場に出向いて牛・豚・鶏その他が人の食用に適しているかを検査する仕事ですから、いつも死にゆく動物を見るわけです。あまり夢のある話じゃないですね。でも現実です。

保健所で「要らない」と持ち込まれた犬・猫を一定期間保護し、その後に殺処分をするという仕事がありますが、殺すのは獣医師免許を持ち、そのポストに配属された人になります。

鳥インフルエンザが発生した際に、テレビで白い宇宙服みたいなものを着て鶏を殺処分するシーンが報道されましたが、覚えてらっしゃいますか?あの白服の殆どは獣医師だったようです。九州で起きた事件ですが、人が足りないと北海道の獣医師界にも応援要請が来ていましたから。

また数年前にユッケ食中毒事件があってかなり騒がれましたが、あの事件を受けて全国の焼き肉店等に食品衛生監査が入りました。その監査をした各都道府県職員のうち何割かは獣医師です。やはり友人獣医師が、事件後に監査が忙しくなって大変だとこぼしていましたので。

そんな知られていない獣医師関連の職業。私は入学&卒業してから「え~そうなの?そうだったの!?」と驚き、正直かなり後悔したオッチョコチョイ獣医師です。なのでこれから獣医学部を選ぼうとしている方々に、ちょっとお知らせをしたいのです。

動物を、特に野生動物を護りたいという方は「自然保護」や「生態学」を専攻することを含めて検討した方がいいと思います。犬が好きでしたらトリマーの方が楽しいと思います。私が進路決定をしたころは「動物看護科」や「トリマー」などの学校はありませんでしたが、最近はすっかり職種の一つとして定着した様子。盲導犬協会なども、次世代の訓練士を「採用」するようになりました。犬猫を取り巻く環境も変わるものです。

さてどうぶつのお医者さんですが、獣医学部に女子学生が増えており、(私の時代で50%、今は75%と聞いています)、小動物臨床(どうぶつ病院勤務)希望の傾向は強まっています。またこの市場は飽和状態に達しているとも言われています。2004年ごろに某小動物関連団体の役職に就かれている男性が「これからは淘汰の時代が来る。どうぶつ病院の形態も多様になる」と言っていました。職場環境も考えると、小動物臨床が厳しい職種だと言わざるをえません。人間関係も複雑です。公務員獣医師には小動物臨床に進んだものの、進路変更をして公務員になった同僚が多くいました。私もその一人ですが…。

いいニュースもあります。日本獣医中医薬学院が2010年に開校し、これからは獣中医を学ぶ機会も身近になると思います。東洋医学に興味のある獣医師には朗報です。

マイナス面ばかり述べたような感もありますが、獣医師が強い資格であるのは確かです。私が仕事を辞めた時も、この御時世に「職種を選ばなければ、この先も獣医師として食いっぱぐれる事は無いよ」と言われたぐらいですから。特に地方自治体は慢性獣医師不足のため、就職してくれた獣医師は出来る範囲で優遇してくれます。これは人生の中で、とても大きなことだと思います。

私も獣医学部に入った時は、獣医職がどのようなものかは理解していませんでしたし、どれほど重い選択をしたのかを身にしみて実感したのは相当時間が経ってからでした。獣医学は厳しいですが、日本でその厳しさと強さで支えてもらった事も事実です。それを一度リセットするような形でカナダに来ました。今は移民として(まだ永住権申請をした訳ではありませんが)の、そして女性としての立場の弱さを感じています。そして、これからの生活を考えて、また獣医学一年生になる決心をしたのです。いつか子供を産みたいという希望もあり、今後どう進んでいくのかはわかりませんが…そう、女性陣にはこういう問題もありましたね。キャリアか出産かという板挟みです。でも大丈夫です。在学中に休学して出産した女性がひとりいましたし、両立は大変ですが不可能ではないと思います。

獣医師を目指すことにした皆さん、道のりは長いです。
お互い頑張りましょう。息切れをしない程度に!(笑)

今、読み返して思うこと x2
(1)獣医師免許って、つくづく強い
(2)結果論として、子供は授からなかったなぁ…
です。

北米でも獣医師免許は強いし、責任もついて来ますけど、自由度と生活に関する安心感は爆上がりしました。給料も上がりました。「日本獣医師、カナダで働こうと思ったら」で若干お給料について触れましたが、獣医看護士・獣医師の給料を少し上方修正しないとダメですね。ここ数年で獣医師不足が一気に加速し、完全な売り手市場、平均年収が押し上げられたためです。まあカナダはインフレがエゲツナイので、そこがやるせない部分ではあります。

個人的なことになりますが、うん、備忘録記事書いてた頃から、つい最近まで厳しかったです。日本で感じていた息苦しさみたいなものは無かったのですが、移民生活しんどい。色んな意味でしんどい。それもあってか、タイミングも悪かったのもあってか、私には子供ができませんでした。悲しい。そうしつつ、よく獣医師免許取れたよな…って思います。私がやってた時は、情報も殆ど無かったし。今は Nat-Vet さん他、SNSで数人いらっしゃるようで。羨ましいです。

まあ、この備忘録が情報としてどこまで役に立つのかは謎ですが、掲載はしていこうかなと思っています。

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