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着床遅延で冬眠中に出産!?「熊蟄穴(くまあなにこもる)」獣医さんの七十二候:

七十二候くまあなにこもる

自由研究のヒント:

ツキノワグマ・エゾヒグマは冬眠中に出産する!
授乳のエネルギーも蓄えた脂肪から!
赤ちゃんはお母さんクマの300分の1の体重で生まれてくる
きみは生まれたときどうだったかな?出生児の体重とお母さんの体重から計算してみよう

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二十四節気は太陽の動きに合わせて一年を24等分したもので、より細かく季節の移り変わりを記したものが七十二候です。
七十二候の一つで12月12日〜12月16日頃を指し、二十四節気のうちの大雪の期間の真ん中にあたる時期です。

意味としてはクマが冬眠を始めるくらい寒い時期という意味合いですが、近年は気候の変化もあります。

そもそも冬眠とはいったいなんでしょうか。島民とはごはん(餌)が極端に乏しくなる冬期に体温や心拍数、呼吸数などエネルギーを使う生命活動を低下させることでやり過ごすことです。鳥類ではアマツバメやハチドリで冬眠がみられることが知られています。

冬眠といってもうやり方には何パターンかあり、リスなど小型の哺乳類では眠りと覚醒を繰り替えす動物もいます。七十二候にも記載されているクマは中途覚醒することなく冬期はずっと眠り続けます。そのため冬眠中のエネルギー源は秋までに貯めた脂肪分となるので、かなり体重が増えます。そしてさらに興味深いことに、雌のクマは冬眠中に出産します。

交尾するのは初夏である5~7月にかけてですが、その間受精卵は着床せずにお母さんグマの子宮角の中を浮遊しています。この受精から着床まで時間があくことを着床遅延と言います。そして、5〜7ヶ月の着床遅延のあと、11月下旬頃に着床し、胚は成長して冬眠中に出産を迎えます。

人間では着床した受精卵が何ヶ月も子宮内をふわふわ浮遊することはないはずなので、クマはかなり特殊な繁殖方法を持っていますね。

エゾヒグマの赤ちゃんの出生時の体重は約420gで、お母さん熊の体重(約120kg)です。お母さんの体重の285分の1の大きさで生まれてくるんですね。

厚生労働省によると人間の出生児の体重は男の子で3.076kg、女の子で2.990gです。大体3kgですね。お母さんの体重を50kgとすると大体母体の16分の1でうまれてきますね。

これはふーの感想ですが、冬眠中の出産と授乳のエネルギーも蓄えた脂肪から捻出するため、小さく生まれてくるのかもしれませんね。

飼育されているエゾヒグマでは、1月11日頃から3月1日の間に出産する個体が多いようです。

参考:
・土屋徹, 芳賀靖彦, 鈴木かおり『大きな字の情景ことば選び辞典』, 2019
・厚労省:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/syusseiji/tokubetsu/kekka03.htmlより引用
・村田浩一, 坪田敏男『獣医学・応用動物科学系学生のための野生動物学』, 文永堂出版
・浜名克己, 中尾敏彦, 津曲茂久『獣医繁殖学 第3版』, 文永堂出版


犬や猫、ウサギの獣医師です。色々と勉強中の身ですが、少しでも私の経験や知識を飼い主さんや動物に還元していきたいと思います。