月刊Synthwave生活 2021年8月号

このシリーズでは、だいたい月1を目標にSynthwave、Outrun、Darksynth、Chillsynth等の作品のレビューと言うか紹介をしていきます。
急にSynthwave界にちょっと気になるニュースが入ってきまして、まあ一言で言いますと、The Weekndの新曲が、Makeup and Vanity Setの2010年の作品に酷似しているという話です。実際聴いた限りではかなり似てます。これを書いている時点で現在進行形の話なのでどうなるか分かりませんが注視するしかないでしょう。Synthwaveにも色々な方向性があるとはいえ、似てしまいがちなパターンも結構あると思います。偶然なのかどうかはまだ分かりませんが。まあしかしMakeup and Vanity Setは結構昔から活動してたんですね。2010年とか、さすがにそのころの私はそもそもこういう音楽の存在すら知らなかったです。
というわけで、今月もレビューの方に行きましょう。

Power Glove - 2043

Synthwaveの初期のシーンから活動しているオーストラリアのPower Glove。今回のアルバムはかなりEBM色の強いDarksynthと言えるような作品。というか純粋なEBMとしてもかなり良いと思えるようなストロングなシーケンスが繰り出される。ジャケットのタイトルロゴのデザインもとてもストロングで、かなりゴリゴリの硬派な一枚。

Future 80's Records -Hot Summer Synth vol​.​2

タイトルの通り、夏向けのSynthwaveのコンピレーション。やっぱりSynthwaveの季節と言えば夏である。冬用のSynthwaveがあるかと言われたらちょっと困る。Synthwaveの世界の中では常に夏なのだ。多分。全20曲入りで、基本的には爽やかなドライブ気分のポップなSynthwaveが多いが、多少のChillsynthやCyberpunkな曲も交えつつ全体としてコンセプト通りの選曲。

VIQ - Crystal Shores

フランスのChillsynthアーティスト、VIQのアルバム。純粋な電子音のみによるChillsynthと言うわけではなく、ギターなどの生楽器も多めでインディロック的な雰囲気も少なからず入っている。とはいえ、音楽として目指している所はとてもChillsynth的で、求めている所は同じと感じられる。

ED-209 - Liminal

こちらもChillsynth。型番のような名前に、商品パッケージのようなジャケットで職人気質を感じさせ、なかなか期待させる雰囲気。気持ちよく揺れるオシレーターと、羽毛のように柔らかいアタック感。色あせたようなローファイなドラム。

NINJACAT - Summ3rtape

またしてもChillsynthの紹介になるが、こちらはロシアのアーティスト。しかし別にロシアっぽさを出しているわけでもなく正統派のChillsynthである。まあタイトルの通り夏に聴くのにふさわしい爽やかな風のようなChillsynth。最後の曲の、輪郭が解けて失われていくような勢いでフェードアウトする感じが良かった。

Nanonovo - Origins

そしてまたまたChillsynth系だが、こちらはChillsynthと言うかWindows96系というか、まあかなりWindows96を意識している。ニューエイジ的な雰囲気に、とてもふにゃふにゃしたシンセと、湿ったドラム。bandcampのプロフィールによるとギリシャのアーティストで、レスボス島の兄弟だそうです。

Acryl Madness, Starfounder - Lips \ Steel

Acryl MadnessとStarfounderという2つのアーティストの共作となっているアルバム。ジャンルとしてはDarksynth。禍々しくバイオレンスなサウンドでありながら、Synthwaveならではの透明感のあるシンセも随所に入ってきて、その辺りにDarksynthならではの独特な味わいがある。

Кузина (Kuzina) - Zaklinanie

ロシアのポストパンク系のレーベルからのリリース。Sovietwaveというか、ポストパンクと言うか、と言った感じのバンド。まあ率直に言ってMolchat domaっぽいが、女性ボーカルで4ADっぽい感じとロシアの民謡っぽい何か?が同居したようなボーカル。ローファイなシンセとドラムマシンが主体だが、この音質はとてもポストパンクな質感。ロシア物が好きな人にはかなりお勧め。