月刊Synthwave生活 2022年1月号

このシリーズでは、だいたい月1を目標にSynthwave、Outrun、Darksynth、Chillsynth等の作品のレビューと言うか紹介をしていきます。
年末は大掃除をしてスッキリした気分で新年を迎えましょう、と言いますが、実際には年末の大掃除は心身ともにハードな作業で、非常につまらない上に一銭にもならない労働で、結局それが大晦日のギリギリまでやっても全部終わり切らないのが常なのです。普段の仕事と同じくらいしょうもない労働を年の瀬のギリギリまで行うので、実質的に大晦日まで仕事をしているのと大して変わらないし、結果としてスッキリしない気分で新年を迎える羽目になるわけです。なんで年末に大掃除をしないといけないんでしょうか?
というわけで、今月もレビューの方に行きましょう。

YATTE - yecco emecco

ヨットロック的なAORからプログレ感のあるAORまで、完成度の高い曲が揃っていてまさに実力派と言う感じがする。やっぱりこのバンドはガチだ。演奏も歌も、下手に今風に寄せることもなく、また80年代のパロディー的な感覚でもなく、ずばりそのものを目指して、そしてきっちりとやり切っている。

Makeup And Vanity Set - Time

いかにもなベタなSynthwaveからは離れているが、シンセの音作りにはやっぱりSynthwaveならではのサウンドが感じられる。1曲目の「Time」が印象的。人の声が機械的に加工されたようなサウンドは、サイバーパンク的でもあり神秘的でもある。サイバーパンク2077で、サイバー空間上に入ってAIと会話するシーンがあって、そこではAIが一種の神のように描かれていてまるで神話のようなシーンだったが、なんかふいにそれを思い出した。Mind.In.A.Boxとかが好きな人にもおすすめかもしれない。

Wojciech Golczewski - Inert

ポーランドの人で、多分メインは映画音楽の作家と思われる。デモシーン出身で過去にはゲーム音楽も手掛けていたようだ。デモのシーンと言うのは知らない人に説明するのは難しいが、昔日本ではメガデモと呼ばれていた物で要するに90年代くらいの(欧米における)レトロPCをコアに弄り回していたサブカルチャーのシーンで、このアルバムを出しているレーベルData Airlinesもそういうシーンにルーツを持つ所の模様。Makeup And Vanity Setも同レーベルからリリースしているが、この人もやはり同様のバックグラウンドらしい。

Ourra - Fantasy Point

https://starcreatureuniversalvibrations.com/album/fantasy-point-double-lp


レトロな感じのファンクから、90年代的なDeepHouseまでといった感じの一枚。徹底的にレトロで徹底的にファンク。本当にレトロな音ばっかり使っているので素晴らしい。

Vector Seven - Crimson Sunrise

ドイツのDarksynth。ジャケットもなんだか和風だが、曲の方は思った以上に和風なサウンド。和楽器がたくさん使われているが別に違和感がある感じでもない。まあ多分日本人がこういうの作っても同じような感じになると思う。まさにお正月にふさわしい一枚。

tÆ ┬▌mΣ - matcha

どう読んだらいいのか全く分からない名前だ。Vaporwave系のレーベルから出ていて、Vapor感は結構あるが何となくCom Truiseっぽい部分もある。意味深な日本語のサンプリングから始まるわりには、まったりとした雰囲気。