月刊Synthwave生活 2020年4月号

このシリーズでは、だいたい月1を目標にSynthwave、Outrun、Darksynth等の作品のレビューと言うか紹介をしていきます。
最近は世の中がなぜかクラスターの話ばっかりしているような気がしているので、何となくクラウトロックを聴く機運が高まりつつあるように思います。個人的にはクラウトロックには若干トラウマがあって、初めてタンジェリンドリームを聴いたとき、最初に聴いたのが「ZEIT」だったんですが、「たぶんクラフトワークみたいな感じだろう」という程度で思っていたので、予想との落差に愕然として「これは夜中に聴いたらアカンやつや」という感想しか出なかったんですが、今は割と慣れました。最近は、仕事が忙しすぎて気力が全くない状態の時とかにクラウトロックを聴くとしっくりくるので、あれはたぶんそういう音楽なんだろうと納得できた気がします。いい感じに気分を盛り下げてくれます。

Ultraboss - This is Shredwave

80年代的なHR/HMを思わせるようなギターソロを全編にわたってフィーチャーしたSynthwave。ジャケットの雰囲気に反して、それほどダークな感じではなく、割とカラッとした明るい曲が揃っている。とてもパワフルでどこかスポーティーな感じのするギターが、これでもかと弾きまくられている。

Paradise Walk - Cruel Hearts Club

良質なSynthpop。爽やかなボーカル有りのSynthwave。Synthpopというジャンル自体はそれこそ80年代の誕生以来、90年代、2000年代の間も細々と存続し続けたようだが、こういう正統派で正面から勝負するタイプの物は意外に見つけにくかったと思う。それぞれ時代に合わせた適応を余儀なくされていたというか。それがSynthwaveの登場によって、またこのような王道のSynthpopに日の目が当たるようになったのは良いことだ。

MASKED - Showdown

マスク、それは今、見つける事すら難しい物。売ってないはずなのに何で皆付けているんでしょうか?それはそうとしてこのMASKEDはBandcampの情報によればアルゼンチンの人らしい。アルバムの内容は、一言でいうとゴリゴリの直球Darksynth。非常にサイバーパンクで忍者感のあるジャケットのイラストに完全にマッチした作品。

Andy Fox - Browser Cat

全編80年代ディスコ的なSynthwaveの一枚。どうやらイタリアの人らしい。無事なんだろうか。と言っても、こっちもそんなこと言っている場合でもないかもしれないが・・・。まあ、そんな情勢とは無関係に、非常にノリノリなイタロディスコを展開している一枚。

VIQ - Last Path

Synthwaveには硬いSynthwaveと柔らかいSynthwaveの二つの方向性があると思うが、こちらは柔らかい方で、要するに、いわゆるチル系のSynthwave。この傾向のSynthwaveは最近は安定的に供給されている感がある。「Emerald Wind」の何とも言えないとろけたような質感のシンセがなかなか良い。

VHS Glitch - CNTRL

Synthwaveアーティストとしては古参のVHS Glitchの今作は、Bandcampの情報によれば、すべてアナログのハードウェアのみで作ってライブレコーディングされた作品、とある。具体的に使った機種名は書いていないが幾つかのシンセメーカー名と、そしてTascamの名前がある。ということはやっぱりカセットMTRで録音ということか。実際聴いてみると、非常にレトロでビンテージなアナログシンセの音色が満載で、80年代的というか、一部70年代の領域に差し掛かってクラウス・シュルツェ的な部分もある。

CRT - STATE X​-​RAY

レトロ系のエレクトロニック・ボディ・ミュージック。何というか、ローファイEBMとでもいうべきか、リアルな80年代のEBMの音質を再現するかのような荒々しいサウンド。シンセの音もアナログでプリミティブかつ、エッジの効いた音色。