月刊Synthwave生活 2021年2月号

このシリーズでは、だいたい月1を目標にSynthwave、Outrun、Darksynth等の作品のレビューと言うか紹介をしていきます。
この間本屋さんで雑誌を見ていると、なんとサウンド&レコーディング誌の表紙に「シンセウェーブ」の文字を見つけたわけなんですが。まあKavinskyのOutrunから8年くらい?で、HOMEのResonanceから数えても6年ぐらい。私がこのジャンルを聴き始めてからも約5~6年かなという頃合いですが、ようやく一般的なメディアでもこのジャンルの名前が出るようになったということでしょうか。でもまあ、あんまり一般に広く知れ渡るようなジャンルになるとは期待はしてないですが。海外でも、多分それほど認知されているもんでもないとみています。多分聴いている層は、いつもBandcampとかSoundcloudばっかり見ているような層がメインじゃないかと思うし、世間一般で流行っている音楽を受動的に選択する層とはあんまり混じらないでしょう。どっちかというとこの手のジャンルを聴く人は、BandcampやSoundcloud、あとYoutubeで有象無象の無名アーティストの山の中から名盤を掘り当てたいという能動的な聴き方をすると思うし、私もそれが面白いからこのジャンルを追いかけているわけです。
というわけで、今月もレビューの方に行きましょう。

Mr Creep - OUTRUN IS DEAD

「~~ is dead」という言い回しは昔からあるが、むしろこの言い回し自体が死語になっているような気もしないでもない。で、実際のところこのアルバムは、普通にOutrunなサウンドそのものであったりする。いやほんまにすがすがしいまでにB級感満載で汗臭いOutrunだ。まさにSynthwaveとかCyberpunkというワードよりOutrunの方がしっくりくるサウンド。

Marvel83' - Metropolis

派手さはないが、優しいシンセと優しいメロディのしんみりとしたSynthwave。キラキラとしているけども耳に優しい音がスネアとともに深いリバーブに沈んでいく感じ。

Kiile - Destiny 2021

わりと牧歌的でオールドスクールなSynthwave。上で書いたMarvel83'が参加している曲もあり、方向性は近い。というか、被ってる曲があるな。曲の再生時間が違うが。やっぱり派手さはないが、その代わりノスタルジーがあり、帰ってくるべきところに帰ってきた安堵感がある。

PVLSX - PULSE 80

ロシアはモスクワのSynthwaveレーベル"NeonRetroRecords"からのリリース。なんかモスクワにはもう一個似たようなレーベルがあったような気もしてなんか頭の中でごっちゃになっている・・・。ロシアは意外にこのジャンルのリリースが充実している国のようだ。曲のタイトルに「180SX」とか「Shakotan 1992」とか、まあ何というか日本の文化に興味を持ってもらえるのは光栄ではあるけども・・・。「Shakotan 1992」はよく分からない日本語の映画かなにかのサンプリングも入っていて元ネタが全く分からんので微妙に気になる。個人的には「Heaven」がなかなかゴキゲンで良い。柴田恭兵と舘ひろしが走ってそうな感じのカッコよさがある。

Don Dellpiero - Believe in Magic

透明感のあるポップ系Synthwave。ジャケットのイラストの雰囲気がかなり良い。やはりSynthwaveはこういうコンセプトの部分も含めてこそのジャンルだと思う。

Sheaf - Daybreak

まったりとした感じだが、しかしChillsynthよりはシャキッとしたサウンドで、若干のフュージョン風味も感じられる。Duettに近い音楽性かもしれない。私のPCにはこのSheafの過去のアルバムもすでに入っていたようなので、もしかしたら以前にここで紹介したことがあるかもしれないし、無いかもしれない。もはや自分の書いた記事も覚えていない・・・。

Toucan - Vision II

なんかジャケットのイラストが良かったのでジャケ買いしてしまった。基本的にはChillsynth的な柔らかいアナログな音が主体だが、70年代後半のアシュラ/マニュエル・ゲッチングを彷彿とさせる所がかなりあり、そういう意味では80年代的なレトロ感とはまた違うレトロでユートピアな感覚を持った作品。非常に気持ちいいサウンドであるのは間違いない。これもまた日本語のサンプリング(電車の案内音声)あり。