月刊Synthwave生活 2021年12月号

このシリーズでは、だいたい月1を目標にSynthwave、Outrun、Darksynth、Chillsynth等の作品のレビューと言うか紹介をしていきます。
先月はMASTER BOOT RECORDが今までBandcampで購入した履歴のある人を対象に?謎のファイルのURLをメールで送ってくるという出来事がありました。ファイル名が怪しくなかなか躊躇させるものがありましたが、しかしまあ中身はレトロゲームのゲーム音楽のカバー集で、なんと40曲分のMP3が入っていました。MASTER BOOT RECORDの一風変わったサービス精神が伺えるエピソードです。
というわけで、今月もレビューの方に行きましょう。

Jay Diggs - Jams

TimeSlave Recordingsが送る、ジャケットからしていかにも、というようなR&B作品。聞いてみると思った以上にR&Bで、思った以上に80'sなサウンド。どちらかと言うとSynthwaveと言うより80年代の音楽を忠実に再現する試みかもしれない。その分完成度は高い。

Windows96 - Magic Peaks

待望のWindows96の新作。独特な不定形なサウンドの孤高の世界は健在。人の声のようにも動物の鳴き声のようにも聴こえる音色が多く印象的。作風としてはぶっちゃけいつものWindows96だが、しかしこの作風は唯一無二なのでぜひ続けていただきたいところである。

Phaserland - Heart Plaza

結構初期からSynthwave界隈にかかわるアーティスト、Phaserlandの新作。この人は今まで結構色んなSynthwave系アーティストの作品に参加してギターを弾いていたと思う。この作品は割と古典的なSynthwaveではあるが、その分安定感がある。いくつか入っているボーカル物の曲の、エレポップとしてのメロディの良さが光る。

Sung - Archium Drive

硬めの質感のシーケンスで攻めまくる作品。ポップさはないがストイックで無機質な渋いサウンド。

Robots With Rayguns - The Digital Life of Xanye Quest

Robots With Raygunsの新作。この人のTwitterはSynthwave系の人としては異様にツイートが多めでしかもふざけたツイートと写真ばかり・・・。最近のツイートを見るともっぱらNFTの方に入れ込んでいるようにも思えるが、それでも一応はSynthwaveのアーティストなんだと言わんばかりにアルバムをリリース。以前の作品と同様なダンスミュージック寄りのSynthwave。あんまりベタなスタイルのSynthwaveではなく独自性が強いが、安定感のある堂々としたサウンドでクオリティは高い。

Midnight Danger - Nights at Lake Milsen

80年代のB級ヘヴィメタルとB級ホラー映画の匂いが立ち込めるDarksynth。NewRetroWaveはこういう路線も捨ててはいなかった!という所がうれしい。メロディックでハードな「Out in the City」が素晴らしい。

TWRP - New & Improved

カナダの特殊なコスチュームに身を包んだ4人組による最新作。今作もかなりフュージョン・AOR的なサウンド。それも本格的に当時のサウンドを再現していくスタイル。どこか昔のセガのアーケードゲームのBGM的な所も感じる。最後に入っている「Terraform」はMagic Swordが参加しているが、とてもMagic Swordなシンセが聴けるので良い。

Sewerslvt - we had good times together, don't forget that

この記事で取り上げるようなジャンルからは結構外れているが、何となく気になったので紹介。JvneもしくはJvnkoと名乗る人物(名前やタイトルは意図的にuがvに代わっている事が多い模様)によるドラムンベース、レイブ、ノイズ等のごった煮的なサウンド。以前からYoutubeなどで見かけるので名前は認知していたが、いまいち情報がなくよく聴いていなかった。どうも身の上によくない事があったらしく活動を停止するらしい。これがその最終作とのこと。最終作とともにYoutubeに大量の動画が投稿されていたが、どれも切迫感のある曲と映像。このアルバムがリリースされた直後、Redditの/r/Sewerslvt/では「ありがとう、Jvne」という内容のコメントが大量に寄せられる事態となっていた。映像やアートワークも含めて、時代が求める狂気と安らぎをもたらしたアーティストだと思う。