月刊Synthwave生活 2023年4月号

このシリーズでは、だいたい月1を目標にSynthwave、Outrun、Darksynth、Chillsynth等の作品のレビューと言うか紹介をしていきます。
本屋さんで、帯にVaporwaveがどうのこうのと書いてある本があったので何となく目を通してみたら、「ファッシュウェーブが、トランプウェーブがどうたら、ニックランドがどうたら」という内容で、またそのパターンか?と思いました。これはもう昔の「ヘビメタのレコードを逆再生するとサタンの声が入っている」みたいな面白陰謀論と同列の物とみなして問題ないと思います。VaporwaveとSynthwaveを俯瞰してみれば、個人や少数の人が勝手に名乗ってるだけの「○○Wave」が山ほどあることはすぐわかると思います。星の数ほどある「○○メタル」よりさらに泡沫的な存在です。そして私はいまだにVaporwaveと加速主義の関係が実感として全然わかりません。2010年代はVaporwaveとSynthwaveのデザインやスタイルが、音楽以外も含むありとあらゆるジャンルに流用されました。無意味にVHS風のエフェクトがかかった動画は今時珍しくもありません。そういった文字通りのミームとしての影響力が、くだらない政治ネタコンテンツを作っている人たちにまで波及していた、というところが妥当な見方でしょう。
というわけで、今月もレビューの方に行きましょう。

A.L.I.S.O.N - Deep Space Archives

Chillsynthの立役者の一人、A.L.I.S.O.Nの未発表デモ曲集。タイトルもそうだがスペーシーな感じがある。やっぱりChillsynthは普通のSynthwaveと比べるとスペーシーな感覚を表現しやすいのかもしれない。

Acryl Madness - Blood Rage Hurricane

結構Darksynth作品を沢山出しているAcryl Madness。この人のTwitterを見ると22歳とか書いてある。まじか。今作ももちろんひたすら直系のDarksynth。というかDarksynthにはあんまり傍系はないかも。

Ghost of Chiba - Avenger

だいぶサイバーパンクなDarksynth。「ゴースト・オブ・千葉」と言われると我々日本人としてはどうしようかと思ってしまうかもしれないが、ウィリアム・ギブスンの「ニューロマンサー」の第1章が確か千葉を舞台にしているのでそこから来ているのだろう。多分千葉に行ったことのない外人なら何となくかっこいいのかもしれない。かくいう私も、子供の頃にディズニーランドに行ったときしか千葉に行ったことがないが…

Aeros - Tabula Rasa

そしてまたDarksynthだがジャケットの画像を見る通り、こちらはサイバーパンク感よりもレトロなEBMとかゴス的な要素に寄っている。と思ったが、後半には普通にポップな曲もある。

idrcauaurltm - Xan​/​Empathy

YouTubeでSewerslvt系の曲をあれこれ探索していた時に発見したアーティスト。ブレイクコア、ドラムンベース、あるいは90年代的な諸々のサウンド。Sewerslvtの影響下っぽいサウンド及びアートワークを持ったアーティストは雨後の筍のように増えつつある。Sewerslvt風の曲の作り方を解説したチュートリアル動画もある。idrcauaurltmは初期の作品ではbandcampのタグにそのまま"Sewerslvt"と入れていた。そこに他のアーティストの名前を入れるのはありなんだろうか…。ちなみにbandcamp上ではidrcauaurltmはウクライナの人となっている。