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移住したばかりの北海道から帰ってきちゃった話

ローソンで大好きな酸辣湯の春雨スープを買って、ほくほく帰った。
私たちが買ったばかりの、北海道の家に!帰ったとたん

「この家を売って、長野に帰ろうと思う」

と夫が言うので、酸辣湯をひっくり返しそうになった。一瞬「また売らないといけないから酸辣湯はこぼさないほうがいい」と頭に浮かんだ私ってすごいな。

夫はドイツ人だ。青い目はあんまり興味なかったけど、彼のちょっと緑がかった瞳はとても好き。でも、家を売るのは好きじゃない。

買ったばかりだし、もうリフォームの見積もりもしてるし。転入届出したし、電気も灯油もガスも水も通したし、Wi-Fiもつないだし、あとは住むだけなのに

「長野に帰りたいと思う」

だそう。なまらびっくらこいだ。びっくらきすぎて酸辣湯はすっかり冷めた。ピンチのときの春雨スープはとても好きです。


というわけで、移住したばかりの北海道を離れることにした。買ったばかりの家をもう一度売りに出した。

不動産の方に相談したらすぐに動いてくれた。この数ヶ月間、この方にはとてもお世話になっている。

150万で購入したとても小さな家。「ゼロがひとつ足りない!」と周りからよく言われた。でも、きちんと住めるし、一戸建てだ。

持ち主の方が大工さんで、ご自身でちょこちょこ手入れをしていたようだし、できないところは業者さんに頼んでいたそうだ。愛されて、手入れされてきたんだなあと感じる家だった。

挨拶したばかりのご近所さんたちに、また挨拶に行った。みんな、何かのジョークだと思ったようで笑っていたが、本当の話をするべきか迷って、やめて、私も笑っておいた。

在宅でない方には、何も言わずに出てきたから、今ごろ噂を聞いて驚いているかもしれない。

初対面なのに家にあげてお茶を出してくれたり、近所を一緒に散歩しようと誘ってくれたり、犬を撫でさせてくれたり、ゴミ出しの方法を丁寧に教えてくれたり。

いろいろな機会に恵まれた、本当にいい引越しで、だから離れることはとても残念だった。


どでかい芋もち棒はすっごくもちもち🍠



引っ越したのは9月の上旬で、帰ってきたのは21日の土曜日。着いた時は「さあ、いまからはじまるぞ」と意気込んでいた。その10日後に、東北を駆け抜けて東京で乗り換え。高速バスで長野の家へ。

なんか冗談みたいです!でもしょうがなかったな。

みんなが住んでいるところを通過しているなーと思いながら、何回か寝て、すっかり夜になって長野の住んでいた家に着いた。弟が作っておいてくれたチキンカレーを食べて寝た。夫は食べずに寝た。

寝られることはいいことだ。ずっと、なかなか眠れなかったもんね。



この引っ越しで、夫が思った以上に体調を崩してしまった。それが一番の理由だった。

私の病気、ビザ、仕事や家計。夫にたくさん無理をさせていたのは知っていたけど、ここまでだったとは。引っ越しのばたばたを団結して通り過ぎれば、なんとかなると思っていた。

でもどんどん悪くなる。

引っ越しの重さで、溜まっていた膿が潰れてしまったように見えた。救急車、と頭をよぎった。呼ぶよ?というと「帰りたい」というのですぐに新幹線を予約して長野に帰ってきた。

帰りの新幹線の中、青函トンネルを抜けながら「人生はなかなか思うようにはいかないのだなあ」と思った。

でも、東京に着いた頃にはもう万全だった。銭湯モード、じゃなくて戦闘モードになっていた!

いままで支えてもらってきた分、今度は私が支える番なんだな、よっしゃ。そう思った。大丈夫、なんとかします。そう伝えた。

守る人がいると、人は強くなる。なんでいうのは安易なラブソングの歌詞だと思っていたけど、本当にそうかもしれない。

私は東京に着いたら、夫にすぐクレープを買った。東京駅のクレープ。すっごいクリームが入っているのを期待したけど、すごく気品のある量だった。

1つ1300円。たっkkkっか!!!でも、食が細くなってしまったのでカロリーが多いものは夫にはいい。

北海道で一度、夫は「どん底かもしれない」と言った。そうかもしれないね、と言っておいた。腹のなかでは「ふふ、アマチュアだなあ」と口笛を吹いていた。

こんなの、ぜんぜん。
私の人生には、もっともっとどん底があった。どん底にいるとすぐわかる。地面がひんやりとしていて「あ、ここだ」と思う。

いまはどん底じゃない。こんなのはどん底とは言わない。

ちょっとした壁だ。こんなのらくらく、突破していくぞ!

そう思って、アパート探しを始めたらすぐ見つかった。ほらね。
電話して下見を予約して、出かけて行って不動産と話す。役場の人と話す。私の最近の動きはスムーズなのだ。

この先、いい時間が待っているから、ひどい人生だなんていっちゃいけないよ。そう思いたい気持ちもわかるけど!

現実は何も変わっていない。楽しいと思っていた時間と、何も変わっていない。脳がちょっとわるさをしているだけで、現実は平和に残酷に広がっている。

だから、大丈夫なんです!



「どん底」の夜に銭湯で飲んだポカリ


そういえば、まだ灯りが心もとない新居で、届かないテーブルを待ちながら床に座り、イカ墨のリゾットを食べた。イカを買ったら、ぶしゅっと大量のイカ墨が吹いた。

キッチンが真っ黒になり、慌てて拭いたけど、すごくうれしかった。イカ墨は大好きなので。イカからちゃんと出てきたイカ墨を食べるのは初めてで、腕まくりをしてリゾットを作った。

まっくろい夜のまっくろいイカ墨リゾット。
いつか、あんな夜にあんなものを作って食べたよね、って言える日がきっとくる。

床に座ってダイソーのスプーンで食べたけど、すっごく贅沢なものなんだよ。イカ墨なんて。




私たちが二週間前に引っ越したのは道南という地域で、夜景がとてもきれいな都市が近く、美味しいイカやほっけの刺身が食べられる。素晴らしい地域だった。

家の周りにはドラッグストア、地元スーパー、コンビニや病院、バス停、駅、大きな郵便局もすべて徒歩圏内。

街にでればスタバのあるどでかい蔦屋書店と、カルディが待っている。町中華も、大好きな古着屋さんも、なんでもある。

私たちが買った家はすばらしくて、また売りに出すのが本当に惜しかった。

リフォームが必要な箇所を業者さんに見てもらい、見積もりも立ててもらい、工事に入るところだった。築46年だけど、リフォームが必須なのはトイレと水道管だけだった。

ちょうど屋根の塗りなおしの年でもあったから、それも頼もうとしていた。

畳も使える、フローリングは新しい、窓もきちんと開け閉め出来て鍵も締まる。

備え付けのFF式石油ストーブは驚くほど部屋が暖まるし、ボイラーも問題なく、熱いシャワーがでた。



町中華の半チャーハンは大好き。これを食べると元気が出るし、大将の覚悟がわかるからいい。世の中には覚悟している人がたくさんいるのだと実感できて頼もしい。


人について。

もともと、北海道の人たちは気楽でいいよ、と聞いていたけど、本当にそうだった。


町内会に入ればアポなしで家に上がり談笑なのだし、お隣さんへの挨拶へいけば「わかんねこと何でも聞けよ!」だし


不動産の方は何度も来てくれて水道栓や電気の確認など、もうゼッタイ業務外のことをてきぱきとしてくれる。


灯油やさんはFF式ストーブとボイラーが不安、と言っただけで訪問して様子を見てくれる。つけたり消したりして「まだまだいけますね」と。


出張費を渡そうとすると「いや、ちょっと見ただけなんで」と受け取らない。押し売りも宣伝ももちろんなく、ほんじゃーまた、と帰ってゆく。

と思ったらご近所の方が飛んできて、突然お茶に招かれたり、クレープをつくるホームパーティーに呼ばれたり。


絵にかいたようないいご近所で、もう目が回る。

コンビニの店員さんですら親切なのだ。10日あまりの滞在で、もう、お互いの顔も住所も知っているコンビニ店員って何だ。

出る日の朝も、底で朝ごはんを食べた。「気を付けて帰ってね」と言われて、とてもうれしかった。また来ます、と言えないのが残念だったけど、また会えるといいなって思う。



夫は、2020年でベルリンの大学を卒業して日本へ来た。そこからいろいろ、頑張った。人が苦手でも、病気が悪くなっても、とにかく前にすすんだ。働いた。

私は疾患で働けないから、自分が稼がないと世帯全体が崩れてしまうという圧が常にあったはずだ。

どうしてもしんどくて、フルタイムから週3のパートに切り替えた。生活費はぎりぎり、でも何とかしてきたよね。

いつか二人で北海道に住もうね、って励ましあいながら来ました。


ああ、お金全部なくなっちゃったね。一生けんめい、貯めたけどね。私たちには届かないところがあるっていう、勉強代です。

体調崩しちゃったね。病院行くか。一緒に精神科に通院する夫婦ってのも新しいカタチかもね。

この長野の実家は長くは住めないね。ここにも事情があるからね。

行くところ、ないね。2人で住めるアパート探そうか。もう誰もいない、本当に田舎へ。そしたら、もう誰とも話さなくていいもんね。


でも、何度も言うけど。
こんなの全然、どん底じゃないよ!

そんなふりするのはやめよう。全然、ちがう。まだまだ下に空気があって、気流は上に向かって流れている。

全然、まったく、なまら問題ないよ!



もし、北海道への移住や別荘に興味ある方がいたら



失礼ながら、ここで少し宣伝してしまいます。

もし、北海道への移住を考えていて、私たちが10日ちょっと住んだ家に興味があれば教えてほしいです。

買った時と同じく150万で売り出していますが、お値下げもします。

秘密は厳守します。どなたからご連絡が来たかなど、一切のことはわたしから外に漏らすことはありません。

よかったらご連絡ください。ロケーション、住み心地、近所の方々のイメージなど、なんでも聞いてください。

さらに、下見したいとなれば、例の親切な不動産屋さんが仲介してくれます。管理や案内は全部お任せしているので、その方におつなぎします。

断っても私との関係になんら変化はありません。もしよかったら、訪れてみてくださいね。人の優しい、素敵な地域でした。



みなさんがくれたコーヒーをいつもお守りみたいに持ち歩いては淹れて飲んでいました。それぞれに性格があって、それぞれの香りと記憶が相まって、いい経験になりました。嬉しかったです。


というわけで、引っ越す引っ越す詐欺をしてしまいました。北海道まで会いに行く、と言ってくれた方々が多い中、申し訳ない気持ちもあります。

ありがとう、とごめんね。でも、イベントする気持ちは変わりませんので、次は東京かな。その次は長野かなと思います。

ここまで読んでくれてありがとうございました。
また本州でお会いしましょう。長野、暑い!


🥵



信濃の国へかえって、この緑と空を拝むと、あーやっぱり。このアルプスがたまらないね。北海道もよかったけどね(未練w)


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