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「Amazon成長の14カ条」にはベンチャー採用担当の心得が詰まっていた。

 11月18日の東洋経済オンラインの記事、「アマゾンを圧倒的に成長させた14カ条の大原則」を人事広報担当全員で読みました。これがものすごく勉強になった……!ということで全員でこの記事に書いてある、「14カ条」を採用の目線から分析しました

そもそもAmazon成長の14カ条とは?

 Amazon成長の14カ条としてスティーブ・アンダーソン氏が分析したのは、ジェフ・ベゾスが毎年株主宛に書いている21年分の”レター”です。アンダーソン氏曰く、そこにはAmazonの経営哲学や方針が詰まっており、分析した結果このような14カ条が浮かび上がって来たとのこと。さっそく見ていきましょう。

実験のフェーズ

 第1条 「いい失敗」を促す
 第2条 大きなアイデアに賭ける
 第3条 ダイナミックな発明や革新を実践する

構築のフェーズ

 第4条 顧客にこだわる
 第5条 長期的な考え方を採用する
 第6条 自分の「弾み車」を理解する

加速のフェーズ

 第7条 決定は迅速に行う
 第8条 複雑なことは単純化する
 第9条 テクノロジーで時間を短縮する
 第10条 所有者意識を持たせる

拡大のフェーズ
 第11条 企業文化を守る
 第12条 高水準を重視する
 第13条 重要な項目を計測し、計測項目を疑い、自分の直感を信じる
 第14条 つねに1日目だと信じる

 たしかにこの14カ条を見てみると、どれも本当に大切なことばかりです。企業の大きさや事業内容に関わらず、実験ー構築ー加速ー拡大の4ステップは必ず必要になりますし、その中の要素もかなりわかりやすく分解されています。

採用担当者はこの14カ条をこう応用せよ!

 それではさっそく、この14か条をより噛み砕いて、採用担当者がどのように応用したらいいのか考えて見たいと思います。それぞれの4つのフェーズを、採用活動における時期にわけつつ分析しました。

  今回の記事では有名ではない、いわゆるベンチャー企業やスタートアップでの採用活動を、以下の4期に分けています。

1.  初期
 まだまだ認知のないところから、泥臭く採用活動をしていく時期。トライアンドエラーや戦略立案を頑張るタイミングでもある。

2. 萌芽期
 ある程度戦略がわかってきて、少しずつ採用活動が回るようになる時期。まだまだやるべきことは多いが、地道ながらも結果が出てくるタイミング。

3. 成長期
 萌芽期を終え、いよいよ採用が活発化してくる時期。多くの候補者をさばいたり、採用担当者が増えてくるタイミング。

4. 円熟期
 企業としての採用やブランディングが確立されてきた時期。もはやどう採用するかではなく、誰を採用するかにのみこだわることができるようになるタイミング。

1. 実験のフェーズ → 初期「採用への試行錯誤」

第1条 「いい失敗」を促す
・採用活動でどうしても発生してしまうロスを恐れずに行動する
(※ロス=採用基準に達さない人や転職意思がまだ固まっていない人と面談したり面接する時間、人事担当者の労力など)

第2条 大きなアイデアに賭ける
・”会社をどんな人たちで作りたいか?”という大きな目標を大切にする。
・どんなに採用が苦しくても、元のアイディアをないがしろにはしない。

第3条 ダイナミックな発明や革新を実践する
・普通の採用活動や説明会をしても、知名度のないベンチャーに勝ち目はない。そうであれば、何か別の方法を考え出すことに時間を使い実践してみる。
・これに関しても、「いい失敗」を促すのが大切。恐れずやってみる。

 採用戦略立案上で大切にしたいことを、Amazon流にいうとこのようになります。採用をするときには必ずロスや失敗、うまくいかないことが発生します。それを恐れずにたくさんまずは動くことも採用においては大切です。


2. 構築のフェーズ → 萌芽期「候補者との関わりかたを考える」

第4条 顧客にこだわる
・採用におけるターゲットをとにかく明確にする。
・どんな人材が欲しいのか?どこにいるのか?どんな人たちと関われば欲しい人材と出会えるか? 

第5条 長期的な考え方を採用する
・採用は長期にわたってやって行くもの。
・会社の成長フェーズに合わせてフレキシブルにできるような採用方法を考えて行く。
・もちろん、一人の候補者との長期的な関係構築が必要な場合もある。

第6条 自分の「弾み車」を理解する
・採用への投資を惜しまない。投資とは、”採用できなかった候補者との時間、関係性”。
・自分にとって採用をするための原動力や、うまく行くサイクルを発見することに力を注ぐ。

 第4条、第5条に関しては説明は不要かと思います。ターゲットを明確にして、そこに対して長期的にアプローチして行く……地道ですが大切です。

 第6条について補足すると、「弾み車」とは、Amazonにおけるフライホイール効果のことと思われます。Amazonでは、出た利益を新しい事業に投資し、最初にエネルギー(=投資)をかけることにによって長い期間自走するビジネスを作って成長させて行くことを「フライホイール効果」と呼んでいます。(詳しく知りたい人はこちらの記事がおすすめ。)

 採用に関してもこれが大切です。採用活動を長く自走し、最初にかけたエネルギー以上のリターンを得られるように回して行く方法を考える、というのが第6条の意味するところです。確かに採用活動において最初は多くの人と会ったり準備をしたりエネルギーとコストがかかります。しかし、候補者が他の候補者を呼んでくれたり、会社の評判が人を集めたり……そういう”自走する”モデルを考えられたら採用活動ははるかにスムーズに進んでいきます。


3. 加速のフェーズ → 成長期「会社全体での採用活動と仕組み化」

第7条 決定は迅速に行う
・採用するかしないかの決定も含め、スピード感が大事。
・優秀な候補者を逃さないためのスピード感を会社全体で意識。

第8条 複雑なことは単純化する
・採用フローは複雑化しない。あくまでも「候補者のここを見る」というのが明確になるように。

第9条 テクノロジーで時間を短縮する
・候補者の管理などは迷いなくテクノロジーツールを使う。
・FacebookやTwitterはもちろん、HRMOSやTalentioなどの管理ツールもつかい、「この人どんな人だっけ……」に時間はとらせない。

第10条 所有者意識を持たせる
・採用担当者は「自分がこの会社を作るんだ」という当事者意識と経営者の目線を持つ。

 回り始めた採用活動をより発展させるためのキーワードが「単純化」と「高速化」です。決定はもちろん、候補者との連絡なども怠らずとにかく高速で動かしていきます。そうでないと、あっという間に優秀な候補者は他者に奪われてしまうからです。

 このフェーズで何より大切なのが「所有者意識=オーナーシップ」だと思います。会社に言われた採用計画どおりに動く! ではなく、「今の会社にどんな人材が必要なのか」「どうしたら会社の売り上げが最大化するか」を含め考えながら採用して行くのがベストです。


4. 拡大のフェーズ → 円熟期「採用最前線から組織の未来を見据える」

第11条 企業文化を守る
・入ってくる人がカルチャーにマッチしているのかを見極める
・さらに、入ってきた人によりカルチャーが浸透して行くようなオンボーディングを行う
・カルチャーを崩しそうな人に対しては組織をさってもらう選択をできるようになる

第12条 高水準を重視する
・100人から1人を採用するのではなく、1人の厳選した人と会ってその人を確実に採用できるような活動をする
・人材の質を絶対に落とさない。目先の採用に絶対にとらわれない。

第13条 重要な項目を計測し、計測項目を疑い、自分の直感を信じる
・入ってきた人のデータ(チャネル、採用までにかかった日数や経費など)を細かく計測し、それをかならずチェックして行く
・データが溜まって行くと直感が鍛えられてくる。

第14条 つねに1日目だと信じる
・ベンチャーでよく言われる”最初の10人”の感覚での採用をやり続ける。
・絶対に”人を選ぶ立場”だと思わない。1日目の時のように”候補者に選ばれなくては”と思う人事であり続ける。

 人事・採用は企業の門番です。採用という観点から組織の未来を見据えることが、採用のお仕事の一つのゴールだと思っています。

 会社が拡大して行くフェーズでの採用においては、上記の通り「社員へのカルチャーの浸透」「人材クオリティーの担保」「PDCAを回し、KPIを立てながら人材の影響を計測して行くこと」が大切です。急速に拡大して行く会社を門番として守って行くためにはこれが必須になります。

 そして、第14条は非常にAmazonらしい考え方です。「つねに1日目だと信じる」。

 採用の現場での1日目はなんなのか? と考ると、

・会社を始めたばかりで人がまだいなかった頃。最初に関わってくれる挑戦者を探していた頃
・候補者がなかなか現れず、一人の発掘した人材に感動していた頃

これを無くさずに採用していけたら組織は盤石です。


採用の現場にも成長を

 Amazonの成長に代表されるように、実験ー構築ー加速ー拡大は非常に大切な四つのプロセスです。採用もまた組織を作って行く重要な機関、そして人がいなければ会社は成立しません。そういう意味でも、採用の現場も会社のフェーズに合わせて実験、構築、加速、拡大をはかっていくのが望ましい形です。

 採用の形は会社によってそれぞれなので、今回は非常に一般化したメッセージになりましたが、実際の人事担当者や採用業務経験者ならなんとなく実践の形まで落とし込めるのではないかなーと思っています。

 参考になったら幸いです!

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