【すわってみた#3】青春18きっぷで琵琶湖一周(後編)
青春18きっぷは改札機非対応。最初の入場時に日付のハンコを押してもらい、次から出入りする時は有人改札口で駅員さんに切符を見せるアナログ式です。駅員さんに青春18きっぷを見せる時、自分がVIPになった感じがするのは私だけなんでしょうか?
実際の自分は(他の人は違うと思うけど)青春18きっぷ一日あたり2410円の交通費を絶対に下回ることがないよう誓いを立て、そればかりか、いかに2410円を上回る乗車を実現し"得した感"を向上させるか、元を回収して得を増したい!という、セコ根性起源の行動にも関わらず、何故か駅員さんに青春18きっぷを見せる時には「私、JR乗車を心から愛しているJRラバーです」みたいな慎ましやか、かつ、誇らしい気分になります。
気のせいなのでしょうか?
青春18きっぷを見せる時に、確認してくれる駅員さんとの間に "JR愛の一致" という瞬間が湧く。「いってらっしゃいませ」と笑顔で声掛けしてくれる駅員さんもいました。「楽しんで!」という言葉は聞いてはいないけど聞こえる気がする。「このJRというインフラはガチのアトラクションだよ!楽しんで!」と、駅員さんは皆さん思っておられるのではないでしょうか?
青春18きっぷを使ってみて、このJR愛の共有が私(の精神)を美しくしてくれた(セコ根性中年女性→VIP)ということがすごく楽しかったです。これまでJRを愛しているとか、あんまり考えたこともありませんでしたが、この際に、JRていうか、青春18きっぷを愛している自分を見つけました。青春18きっぷユーザーとしてフリーパスで入場する時、私のワクワクした気分込みで駅員さんは承認の頷きをくれる(気がする)。それは自分を丸ごと承認された感っぽくて、自分でも、うん。この自分で行く!と心と体のぴったり感。「なんかすごい楽しい!ありがとう!」と思って、心新たに、そこから始まる旅を丸ごと楽しめる意識に入っていく感じがしました。たとえハプニングが起きても、それ込みで楽しめる!
King gnu好きなので引用した。
JR。基本定刻通りに来るところが本当にすごい。
でも万一のため、トイレをすませて、飲み物も持っているようにしてます。
長浜から近江塩津行きに乗る。
普段乗る電車の行先として目に入る「近江塩津」。私はいつも途中で降りてしまう。行ったことがない終点の、その名の響きに最果てのロマンを感じていました。ロマンは北にある。北上する。窓の外に余呉湖!
伝説の湖として有名な余呉湖が目の前に!なんと余呉駅から余呉湖までって歩いて5分なんだって!神秘的で近寄りがたいイメージでベールに包まれた遠い存在と思ってた。ベスト全景サービスフリー・フォー・電車ビュー(英語は間違っています)て、そんなオープンな性格ていうか庶民の味方やったんや。。。意外過ぎた。力抜けて笑える、いやいやでもでも、電車から見える夏の余呉湖の光景は絵葉書みたいにキメてて、高潔さがあって、素敵でした。そして、憧れの近江塩津に到着。普通に簡素な山間の駅でした。降りたホームでそのまま待つと3分後に湖西線がやってくる。それで折り返して南下して琵琶湖一周〜。となるのですが、屋根のないホームの灼熱凄まじく3分が耐え難いほど。え?北なのにな?最北なのにな?。。。
盛夏8月においては北っていっても暑さはあんまり変わらなかったです。
そこに湖西線登場。冷房冷え冷え電車がやってくる。という想定がまた外れる。なんか、近江塩津発だと思い込んでいたのですが、普通に車両を満たすくらいの乗車率でやってきた!え〜っ?!始点が敦賀だったみたいです。
座れたけど、人が多くてなんとなく蒸した空気になってるし。湖北を走るガラ空きの鄙びた車両は冷房効いてて〜♪というイメージと逆の現実にシュールさすら感じてしまいました。
そのうち、駅をいくつか過ぎて人々が降り涼しい空気感が漂うようになりました。長浜のカフェで買ったアイスコーヒーを自分の水筒に移していたのですが、中の氷がカランカランと響く音が好きで、保冷が効いて冷たいまま飲めるのも嬉しく、ゆっくり味わいながら外の景色を見ていました。
夕方、出てきた雲が分厚く琵琶湖の上を覆って空も湖面もブルーのグレー。反対側の窓の向こう、山の上は雲が切れていて太陽はまだはち切れんばかりに光の勢力を保っているのでピンクオレンジの光線が強力な眩しさで真横から差し込んでくる。曇った中に当たって光が反射して水田とか住宅とか、それと琵琶湖。世界美しい!最高。あと3時間くらい乗っていたい。けど、降りるまで1時間くらい。そこで「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」岸田奈美(小学館文庫)をリュックから取り出して読みました。面白かった。奈美さんの状況は本当にハードなんだけど文章が面白くて何度か吹き出しそうに。。。この琵琶湖一周の前半で読んだ佐藤愛子さんのエッセイと、どこか通じるものがある。共通点は、ペーソス?&バイタリティー(高エネルギー)のドラマ?
読むと元気が湧く。
青春18きっぷで琵琶湖一周は、強くて優しくて面白い女性が書いた本を読む旅。となりました。
青春18きっぷシリーズはまだ続きます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?