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アメリカ大統領就任式・前夜

アメリカの歴史が音をたてて変わろうとしている。
(※以下日付は現地)

アメリカ首都ワシントンDCは街ごとロックダウンするかのような厳戒態勢が続いている。配備された州兵25,000人はFBIの身元調査を受けて過激派との関係を疑われた計12人が任務から外された。誰が敵だかわからない状態で内部からの犯行を警戒している模様。キャピトルヒル/アメリカ連邦議会議事堂周辺はフェンスと有刺鉄線で囲われた。車も全てゲートで止められて不審物を所持していた人物は逮捕された。

バイデン次期大統領はデラウェア州にて近親者の前でワシントンDCへむけて出発前に挨拶をした。冒頭から感極まって涙を拭う姿を見せた。マーチン・ルーサー・キング牧師の暗殺に衝撃を受けた若かりし頃を振り返りながら、「12年前は黒人初のアメリカ大統領・オバマとホワイトハウスに入った。今度は副大統領・カマラハリスを連れてホワイトハウスへ入る」「暗闇が続く時代ではあるが、必ず希望はあると信じている」と挨拶で述べた。

"I know these are dark times but there is always light."

かつて上院議員時代にシングルファーザーとしてデラウェア州とワシントンDCを往復していたときに使っていた鉄道での移動を考えていたようだが、1月6日アメリカ議会議事堂襲撃を受けて警備の都合から飛行機に予定が変わった。 当然まだ大統領専用機エアフォース・ワンではない。

就任を祝う前夜にパンデミック惨禍で犠牲となった40万人を偲びながら、厳かな追悼式にて祈りが捧げられた。ここでカマラがスピーチをする前に、黒い革手袋をサッとはずすと、パートナーがそれを自分のコートのポケットにスッとしまう。そのやりとりが実にスマートで新しい時代の到来を感じた。

ミシガン州の医療従事者がアメージンググレイス、ゴスペルシンガーがハレルヤを歌う。歌の最中、大統領夫妻と副大統領夫妻がワシントンモニュメントにむかって黙祷。大切な人たちを失ったリーダーに寄り添うリーダー。アメリカが4年かかって見失った何かを取り戻し始めた。

以下バイデン:「今夜、コロナの犠牲となった40万人のアメリカ人へ追悼の祈りを捧げました。昨年は想像を絶するかたちで試練にあった私たち。これから、癒しの時を迎え、困難をともに乗り越えていく時です。」

今回の大統領就任式は異例づくめ。パンデミック最中であること、警備上のこともあって会場に集うことが叶わない人たちのかわりに星条旗20万本。

2020年1月21日にアメリカで初の感染確認。
2021年1月19日トランプ最後の執務の日に犠牲者が全米で40万人を越えた。

CNNアンカー アンダーソン・クーパー:「20万本の真っ直ぐに静かに立っている旗がこの長くツラい夜の暗さの証人となるが、明日には何か新しいものの始まりを見届けてくれるだろう」

トランプ政権の招いたカオスが負の遺産として次期政権へ。バイデンは初日の執務からそれらの方向転換にかかる予定と報じられている。パンデミック対策、地球温暖化問題、移民問題etc。

CNNジム・アコスタ記者:「人々の心にトランピズムが残した憎しみや敵意を拭い去り、パンデミックを乗り越えるためにも協調を目指すときだ」

トランプベビーの巨大バルーンはロンドン博物館へ収蔵される。明日100人の恩赦を発し、後任の就任式に立ち会わない現職大統領として名を残す。

1月20日正午からの大統領就任式ではレディー・ガガによる国家斉唱も予定されている。先日襲撃の現場となったキャピトル内から「憎しみよりは、愛を。怖れよりは受容を。」と祈る。


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