数学のifは物理で答え合わせ

高校数学:高校までに習う数学
大学数学:大学以降で学ぶ数学

私は大学で物理学を専攻している。
と同時に、数学も好きなのでちょこちょこ勉強している。
傍から見れば両者とも数式をいじってなんかやってる印象だが、両方やっていると物理学と数学の違いがなんとなくわかってくる。

高校生のときは数学科と物理学科の違いがよくわからなかった。教員には「高校数学が好きなら物理学科に行け。数学科の数学は哲学だ。」とも言われていた。
言いたいことはわかるし、端的に説明するとそれで良いけど、この記事ではその違いについてもうちょっと踏み込んでみる。タイトルにもあるとおり、数学はifで物理はその答え合わせなのである。

再三言うが大学数学は高校数学と一味も二味も違う。
高校数学は、習ってきた公式や性質を如何に上手く使って与えられた問題に解答するかがカギになる。
大学数学ではその公式を導いたり、(嬉しい)性質を見つけたりするのが主となる。そこで大切なのが公理と定義である。
公理というのは証明無しに用いられる前提条件みたいなものだ。定義というのはその公理内での用語を明確にすることだと認識している。
高校数学において幾何学といえばユークリッド幾何学を扱う。平行線は交わらないし、線の太さは無い。もちろん、点の大きさは考えない。
大学数学において幾何学とは「何を一緒と見なすか」を扱う。平行線は交わっても良いし、形を変えても問題ない。それは公理次第でいくらでも変わるからだ。
公理の設定次第で、そこで扱われる性質はガラッと変わる。これが数学はifということだ。平行線って普通交わらないよなぁ、“もし”交わったらどうなるんだろう。今はこんな数存在してないけど、“もし”$${ x ^2 = -1}$$に無理矢理解作ったらどうなるんだろう。数学は机上の空論こそ至高、“もし”が数学を支えている。

一方で物理は何なのか。それは数学で数多く生み出された“もしも”の世界を上手く適応させること。
例えば野球場でのボールの動きを考えれば平行線は交わらない世界を適用できる。
じゃあ大砲で水平線の向こうにいる戦艦に当てることを考えたら?これだと平行線が交わることを考慮しなければいけない。
もっと進んで人工衛星を打ち上げることを考えると平行線は当然交わるし、時空が歪むことを考えなくてはいけない。
もしも数学でifの世界が考えられていなかったらこれらの研究はもっと難しくなっていただろう。
他にも存在しない数として作られた虚数は量子力学の世界で大活躍しているし、ガロア理論の最中にうまれた群論は、素粒子論で大活躍している。歪んだ時空は非ユークリッド幾何学を考えると素直にいく。

数学で扱うのはifの世界。
物理学でifの世界を答え合わせしてみる。
まぁどっちも難しいことには変わりないけど。


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