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北海道日高ツアー 新冠編(2019年)

BTCの余韻に浸りながらAERUのチェックアウトを済ませ、浦河から新冠に移動した。まずは優駿記念館に立ち寄り、当日15時からの優駿スタリオンステーション見学申し込みを済ませた。その後ビッグレッドファームへ向かう。事務棟のロビーで受付の記帳を済ませ、牧場を見学させてもらう。
青鹿毛のロージズインメイ、一昨年社台から移って来たダノンシャンティ、高松宮記念馬アドマイヤマックス、13歳で真っ白になったジョーカプチーノ、ブルードメアサイアー(メイショウマンボ等)として活躍中のグラスワンダー、TJ君の愛馬ジュネスドールの父アグネスデジタル、種牡馬としては活躍できなかったロサード、北海道所属のまま中央で活躍したコスモバルクに会うことができた。皆食欲旺盛で暇さえあれば牧場の草を食んでいる。「ゴールドシップが放牧されていない」とTJ君が心配したが、結局厩舎で元気にしていた。初年度から産駒が活躍し始めたゴールドシップ、そう思って見るせいか現役時と変わらない威厳を感じる。私にとって皆1年ぶりの再会だが、変わらず元気そうで良かった。

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ビッグレッドファームと道を隔てて明和牧場がある。屋根付き馬場がある道の脇に昭和の怪物ハイセイコーの立派なお墓がある。昨年時間が足りずに見つけられなかったので、初めてのお墓参りとなった。1973年私が高校2年のダービーデー、父が珍しくテレビで競馬放送を見ている。どうやら馬券を買ったようだ。父が「田舎から凄い強い馬が出てきたらしい、ハイセイコーって言うんだぞ」と得意げにつぶやいた。結果は3着でどうやら父の馬券は外れたようだ。この頃からなんとなく競馬に興味を持ち始めた。そしてその後ハイセイコーの活躍が社会的なニュースになるとともに、私の競馬観はギャンブルからロマンに変わっていき、大学時代にはカメラ片手にトウショウボーイやテンポイント等名馬の写真を撮りに中山競馬場へ通うまでになっていた。因みに馬名は9文字以内だと知ったのも、ハイセイコーの初年度産駒のダービー馬カツラノハイセイコのおかげだ。「ハイセイコー!競馬の道に誘ってくれてありがとう!」と手を合わせた。皐月賞馬ハワイアンイメージ、スプリンターのメイワキミコ、ウインザーノットなど懐かしの名馬たちのお墓も並んでいた。3人それぞれの思いを抱えながら「合掌」。

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㈱優駿は、新冠地区のサラブレッド生産牧場が共同出資し1988年に設立された「競走馬の総合商社」である。翌年には優駿スタリオンステーションが設立されており、18億円でオグリキャップの種牡馬シンジケートが組まれた。ベーカバドなど海外一流馬を導入すると共に、内国産の種牡馬キングヘイロー、マヤノトップガン、カネヒキリ等を有していた。優駿メモリアルパークは今やオグリキャップが主役となっているが、かつてCBスタッド(早田牧場)の頃は三冠馬ナリタブライアンが主役だった。そのブライアンに会いたくて1998年の夏に訪れたのだが、急に体調を崩したということで対面できなかった。それから間もなくナリタブライアンは急逝してしまった。その後施設はナリタブライアン記念館と名前を変え、立派なお墓が作られた。そういえばその時13歳になったオグリキャップに会うことができた。芦毛の馬が年齢を重ねると真っ白になることをそのとき初めて知った。そして記念館の隣の放牧地ではマヤノトップガンが草を食んでいた。トップガンには菊や有馬など何度も馬券でお世話になったので思い入れがあった。

約束の時間が近づくと優駿スタリオンの見学者が記念館に集まってきた。総勢40名はいるだろうか。「それではこれから向かいます」案内してくれるのは厩務員さんかな。ぞろぞろと坂の上の厩舎に向かう。馬に触れないよう注意を受けた後はフリーの見学時間だ。馬房の外からお目当ての馬が顔を出したところを狙って写真を撮る。馬房からなかなか顔を出さない馬には厩務員さんが人参を餌にシャッターチャンスをくれる。無傷でNHKマイルを勝ったのに秋天から不調が続いたカレンブラックヒルはもう10歳、引退したばかりの6歳ミッキーロケットもいる。8歳になるまで頑張りダートGⅠ・Jpnlを9勝したエスポワールシチーも14歳になる。有馬や宝塚(2着)でお世話になったゴールドアクターもいる、グラスワンダーの血を受け継ぎ走る産駒を期待したい。大好きだったマヤノトップガンは今年で27歳、人なら90歳くらいかな。全身の筋肉が落ちて見た目にも年齢を感じさせる。「トップガン長生きしろよ!また来るよ!」と声をかけた。15頭の繋養馬見学、30分があっという間に過ぎ、坂を下って引き上げる。懐かしい名馬たちに会えて本当に楽しかった。「優駿スタリオンステーションの方々、ありがとうございました」

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静内の「競走馬のふるさと案内所」に立ち寄り16時以降に見学可能な牧場や施設があるかどうかを尋ねたが、さすがに「この時間は無理ですね。」と言われた。案内所は日本軽種馬協会北海道市場の中にあり、この敷地内でサラブレッドオークションが開催される。休憩所には多くの馬関連書籍があり、3人で本棚を漁る。「あっ!この本、家にあります!」TJ君が手に取った本はA3サイズの分厚く古いサラブレッド血統辞典、ブックオフで見つけてすぐに購入したらしい。筋金入りの競馬ファンだ。休憩所には訪問者へのお土産として、JBC2018とプリントされたカード袋があり、中を開けると2007年・2008年・2009年のJBCクラシック優勝馬ヴァーミリアンのポストカードが入っていた。「素敵なカードありがとうございます!」

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ふるさと案内所を出て桜舞馬公園(オーマイホースパーク)に向かう。ここにはテスコボーイの銅像がある。そしてサクラシンゲキ、ダイナガリバー、アンバーシャダイ、タマモクロスなどの功労馬たちや名種牡馬ブライアンズタイムなどのお墓、そしてメジロライアンやサクラショウリの石碑があった。
テスコボーイは英国から輸入され、トウショウボーイ、キタノカチドキ、テスコガビー、ハギノカムイオーなど数多くの活躍馬を輩出した。そして後継の天馬トウショウボーイは、三冠馬ミスターシービー、アラホウトク、ダイイチルビーなどの活躍馬を出し、地元の生産者を救うことになり「お助けボーイ」と呼ばれたことは有名だ。「街のはずれにこんな立派な公園があるなんて素晴らしい!さすがは馬産地だね」名馬への思いを胸に抱きながら、薄暗くなった公園を後にした。

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静内のビジネスホテルでチェックインを済ませ、食事の前に夜のサラブレッド大壁画を見に行く。日程的にこの日を逃すとチャンスがなくなる。初日に車中から見たときと違い、ライトアップされた壁画は神秘的である。1990年にできたということは、その後何度か見ているはずなのだが記憶がない。闇夜に浮き出た馬の絵画、これは新冠に行ったら見逃せないスポットだ。3人で写真を撮りまくり、思わず「素晴らしい!来てよかった!」

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ホテルに戻って車を置き、19時過ぎから夕食の場を捜した。この時間、人気のある店は待ち時間もあるらしい。目に付いた店は「めし処 椿」蹄鉄からサラブレッドが顔を出して「馬いっしょ!」のポスターを見て、「よし、ここにしよう!」「北海道に来たら、牡丹エビにイカやサーモン、それにザンギだよね。」店内は想像以上に繁盛していて忙しそうだ。TJ君「手羽の黒胡椒揚げが気になります。サーモンとザンギも欠かせません」ツアー二日目の乾杯をしていろいろオーダーする。料理はどれも絶品だ。特にザンギは唐揚げとの違いが一口でわかる。刺身も新鮮だ。馬談議が続きふと店内を見渡すと、いつの間にか3人だけになっていた。「この店は当たりだね。次回来た時はまた来よう!」「椿さん、御馳走様でした!」さて、明日は帯広だ。

⇒ 北海道日高ツアー帯広編につづく

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