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「変異株で若者も重症化しやすい」は本当か

 新型コロナウイルスの変異株の拡大に伴い「若者も重症化しやすい」という指摘が、メディアで何度も取り上げられた。
 ただ、具体的なデータをもって説明されることはあまりなく、「若者も重症化しやすい」というのが既成事実であるかのように繰り返し語られる一方で、実はそのような事実はないという言説も一部であった。
 そこで、変異株(N501Y)が急拡大したとされる大阪府が発表した最新のデータなどをもとに、本当に、若者も重症化しやすくなったと言えるのかどうか、検証してみた。

(冒頭:2021年5月7日の東京都知事記者会見、YouTubeより)

大阪府の資料からわかること

 大阪府の新型コロナウイルス感染症対策協議会が6月9日開かれ、「第3波」と「第4波」の重症化率を年代別に比較したデータが公開された。
 この資料では「第3波」は2020年10月10日〜2021年2月28日の判明分、「第4波」は2021年3月1日〜6月7日の判明分とされている。

 年齢別に比較すると、たしかに10代〜60代のいずれも、第3波より第4波の方が重症例が増えており、重症化率が高くなったようにみえる。

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 とはいえ、第3波でも第4波でも、若年者の重症化率は、60代以上の高齢者に比べて圧倒的に低いという傾向に変わりはない。

 「若者」の決まった定義はないが、社会の一般通念を踏まえて、20代以下(若年者)、30〜50代(壮年者)、60代〜(高齢者)という3つの大きなグループに分けてみると、次のようになった。

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 ここまで重症例のデータを確認してきたが、死者数も見ておく必要があるだろう(なお、重症者がそのまま死亡する例もあるため、両者には重複があるとみられる)。

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 ここから30〜50代の死亡率がやや上がっていることは留意する必要があるものの、20代以下は皆無であることが改めて確認される。

ECMOnetからわかること

 もう一つ、コロナの重症者に関する信頼できるソースである「ECMOnet」のデータも確認しておく。
 大阪府が集計している「重症者」には、人工呼吸器/ECMOで管理されている重症者のほか、ICUで管理している患者も含まれる。ICU在室者の全てが必ずしも重症ではない。
 一方、ECMOnetでは、人工呼吸器/ECMOで管理されている重症者のみ集計されている。こちらの方が医学的に基準が明確である。

 ECMOnetでは、大阪府における人工呼吸器/ECMO症例の患者の年齢変化を掲載している。

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 これによると、2021年3月1日以前と以後とで比較すると、重症患者の平均年齢は70.2歳→63.1歳に若年化したことがわかる。
 とはいえ、30歳未満(20代以下)、40歳未満(30代)が極めて少ないことに変わりはない。

 以上のデータから、次のようにまとめることができる。

・変異株の流行で、従来株に比べ、重症者全体の平均年齢は若年化した。
・とはいえ、重症者の中心は、60代以上の高齢者であることに変わりなく、重症者の約6〜7割を占めている。
・変異株の流行で、壮年者(30〜50代)の重症化率がやや高まったことは事実のようである。だが、死亡率では1%を大きく下回り(0.35%)、60代以上の死亡率(9.41%)とは非常に大きな格差がある。

・変異株が広まった後も、若年者(20代以下)の重症化率は約0.1%で、死亡率はゼロである(全国でみても、20代以下の死者は7人)。よって、20代以下の若者が重症化しにくいこと自体は変わらない。

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