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新型コロナワクチン接種後の死亡事例を整理する(5月26日発表分まで)

 厚生労働省は5月26日、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けた人の「副反応疑い」のある報告事例を発表した。接種後に死亡した事例は合計85名となった。
 接種後に死亡した事例といっても、接種が原因で死亡したということを意味するわけではない。医療関係者により接種と死亡の「関連有り」と報告があったのは4件(*)で、いずれも専門家は接種との因果関係について「評価不能」と判断している。
 現時点で、接種と死亡の因果関係が認められた事例は出ていない。
 接種回数は医療従事者や高齢者を対象に、5月21日までに611万2406回となっている。

(冒頭写真:首相官邸の新型コロナワクチン特設サイトより)

年齢・男女別内訳

 厚生労働省が発表した「新型コロナワクチン接種後の死亡として報告された事例の概要」に基づき、年代別、男女別、基礎疾患の有無で整理すると、次のようになった。

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 死因別に整理すると、次のようになった(なお、2名以上が同じ死因の場合のみ掲載した。死因が1名だけのものは42通りもあったため、掲載を見送った)。

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20代の死亡事例は…

 20代で3名の死亡例があったため、詳細を整理した。
 いずれもワクチン接種から5日以内に死亡している。うち2名は基礎疾患はなかった。

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「関連有り」との報告があった事例は…

 接種医療機関・搬送先医療機関が、ワクチン接種と死亡との間に「関連あり」と判断した事例は3件あったので、詳細を整理しておいた。
 いずれも、専門家は「評価不能」と判断している。

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「評価不能」の場合、救済制度は適用されるのか?

 万が一、ワクチン接種で健康被害が発生した場合の救済制度はどうなっているのか。
 「予防接種健康被害救済制度」というものがあり、厚生労働大臣がワクチン接種と健康被害との間に因果関係を認めた場合には、予防接種法に基づく救済を受けることが可能だ(新型コロナワクチンQ&A)。
 新型コロナワクチン接種により、副反応などで死亡した場合には、一時金4420万円が支払われると田村憲久厚労相が明らかにしている(朝日新聞)。

 厚労省の資料には、「健康被害救済制度の考え方」として、救済を受けられるかどうかを認定にあたって、

「厳密な医学的な因果関係までは必要とせず、接種後の症状が予防接種によって起こることを否定できない場合も対象とする」という方針で審査が行われている。

と記載がある。

 現在、新型コロナワクチン接種後に死亡が報告された85名中、55名については「情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できないもの」と専門家によって判断されている(残りの30名は「評価中」)。

 このように、専門家によって因果関係が「評価不能」と判断された場合、予防接種健康被害救済制度に基づく救済を受けることが可能なのだろうか。

 この点について、厚労省が設置する新型コロナワクチンコールセンターに問い合わせたところ「現時点では、お答えできかねる」との回答だった。

報告義務があるのはアナフィラキシーのみ その他は医療現場の裁量

 予防接種法上、ワクチン接種を受けた人が一定の病状を呈した場合には、医師は「副反応疑い報告」を行うことが義務付けられている。

 たとえば、インフルエンザワクチンについては「副反応疑い」として報告義務があるのは、アナフィラキシーだけでなく、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)や脳炎・脳症など15の具体的症状が定められている(参照)。

 ところが、現在、新型コロナワクチン接種による「副反応疑い」の具体的な症状として報告義務が定められているのは、接種から4時間以内に発生した「アナフィラキシー」のみとなっている(厚労省サイト)。

 その理由について、厚労省は、ファイザー社製の新型コロナワクチンの添付文書上、「重大な副反応」に記載されている症状が「アナフィラキシー」のみであることを理由に挙げている(「新型コロナワクチンの副反応疑い報告基準の設定について」)。

 たしかに、ファイザー社の説明書には、重大な副反応として「アナフィラキシー」のみ挙げており、「なお書き」として「本ワクチンは、新しい種類のワクチンのため、これまでに明らかになっていない症状が出る可能性があります」との記載にとどまる。

 だが、WHOが作成した副反応の報告書には、報告する具体的な副反応として、「脳症」や「血小板減少症」など、アナフィラキシー以外の症状も記載されている(報告義務まで課すものかは定かでない)。

 米国疾病予防センター(CDC)でも「急性散在性脳脊髄炎」「急性心筋梗塞」や「ギランバレー症候群」などの20症状についても、ワクチン接種との因果関係の評価を進めているとの記載があった(厚労省資料)。 

 もっとも、厚労省も「アナフィラキシー」以外の症状について全く報告しないでよいと言っているわけではない。
 「医師が予防接種との関連性が高いと認める症状であって、入院治療を必要とするもの、死亡、身体の機能の障害に至るもの又は死亡若しくは身体の機能の障害に至るおそれのあるもの」については、報告することとなっている。 

 厚労省が定めた報告基準にも、「注意事項」として次のような記載がある。

新型コロナワクチンについては、我が国において使用実績がないワクチンであることを踏まえ、これまでワクチン接種との因果関係が示されていない症状も含め、幅広く評価を行っていく必要があることから、当面の間、以下の症状については規定による副反応疑い報告を積極的に行うよう検討するとともに、これら以外の症状についても必要に応じて報告を検討すること。
けいれん、ギラン・バレ症候群、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、血小板減少性紫斑病、血管炎、無菌性髄膜炎、脳炎・脳症、脊髄炎、関節炎、心筋炎、顔面神経麻痺、血管迷走神経反射(失神を伴うもの)

 これら12の具体的症状について積極的な報告を求めているが、アナフィラキシーのように「報告義務」があるわけではない、という違いがある。
 そのため、報告すべきか悩む医療機関もあり、遺族が報告を求めるケースもあるとされる(読売新聞)。

 現時点で、「報告義務」の対象を広げることは検討されていないようだが、医療現場の判断に委ねるやり方で問題はないのだろうか。

【訂正】
「医療関係者により接種と死亡の「関連有り」と報告があったのは3件」としていたのは、正しくは「4件」でした。訂正してお詫びいたします。

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