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高齢者の重症化率・死亡率が低下傾向 大阪府のデータで明らかに

 新型コロナウイルス感染症に感染した高齢者の重症化率・死亡率が「第5波」と言われる7月以降、大きく低下していることが、大阪府が8月18日公表したデータで明らかになった。
 60代以上の重症化率が「第4波」以前と比べほぼ半減。死亡率も大きく低下している。ただ、現在の感染拡大により重症患者数は増加傾向のため、今後、重症化率・死亡率が上昇する可能性に留意する必要もある。

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 大阪府は随時、年代別に重症化した人数をとりまとめており、対策本部会議の資料で公表されている。
 東京都は年代別に重症化した陽性者数を発表しておらず、貴重な資料だ。

 8月18日の公表資料に基づき、第3波(2020年10月10日)から8月15日までの年代別重症化率、死亡率をまとめた(公表資料は重症化ゼロの年代の陽性者数が省かれているため、府の担当者に直接確認して補充した)。
 なお、大阪府は「重症」を「重症病床におけるICU入室」「人工呼吸器装着」「ECMO使用」のいずれかに当たる場合と定義し、集計している。

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 これをみると、70代の重症化率は、12.3%(第3波)→12.9%(第4波)→6.2%(第5波)、死亡率も6.5%→10%→1.8%(第5波)と大きく低下していることがわかる。60代、80代以上も同様の傾向だ。

 50代の重症化率は、2.8%→4.6%→2.3%、死亡率は0.3%→0.9%→0.1%となっている。
 「第4波」では、大阪府で深刻な病床不足に陥ったため、重症者・死者増につながった可能性がある。
 50代以下の重症化率・死亡率が「第3波」より低下しているとはまだ言い切れない。

 一方、若年者の重症化例はどの期間も非常に少ない。とくに10代以下の陽性者数は昨年10月10日以降、1万5千人を超えているが、重症化は4人、死亡例は0人となっている。

デルタ株の影響は

 大阪府で、デルタ株に置き換わった割合が5割を超えたのは7月下旬以降とみられる(国立感染研究所のデータ)。
 デルタ株が8割以上となったのは最近であるため、重症化率低下にデルタ株の影響を評価するにはまだ早いと思われる。

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8月18日開催アドバイザリーボード配布資料3-2より一部抜粋)

ワクチン効果か

 ワクチン接種の影響はどうか。
 大阪府での65歳以上のワクチン接種率(2回完了)は、7月下旬に5割を超えた。
 このことが高齢者の重症化率・死亡率の低下に寄与している可能性はあるが、これもまだ即断できない。

【大阪府のワクチン接種率】大阪府の資料より一部抜粋)

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 というのも、2回接種完了者で感染したのは8月15日現在317人で、うち60代以上は161人に過ぎない大阪府の資料)。
 府によれば、この317人で重症化例、死亡例は一つもないという。いわゆる「ブレークスルー感染」した高齢者161人に関しては、ワクチン接種の効果が寄与しているとみえる。
 ところが、「第5波」(6月21日〜8月15日)における60代以上の陽性者は2030人に達している。
 つまり、60代以上の陽性者の9割以上が接種完了者ではないにもかかわらず、重症化率・死亡率が大きく低下している可能性があるのである(ブレークスルー感染者を陽性者母数から差し引いても、60代以上の重症化率は第4波以前より低くなる)。
(※追記しました。後掲の「追記」も参照してください)

【大阪府における接種完了後の感染者】

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大阪府の資料より一部抜粋) 

 実際、府の資料には、65歳以上の陽性者に占める未接種者の割合が圧倒的に多いことを示すグラフも掲載されている。

「ワクチン接種歴別のワクチン接種人口当たりの新規陽性者数(10万人対)」と題するグラフ大阪府の資料より)

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 本当に、未接種者が大半を占める高齢陽性者の重症化率・死亡率が低下しているのであれば、その要因はワクチン以外に存在することになる。

 もっとも、これは「陽性者の接種歴をきちんと把握している」という前提にたてば、の話である。
 もしそうでないのであれば、接種完了者の感染者はもっと多い可能性がある。その場合はワクチンによる重症化率低下の寄与が推測できる。

【追記】大阪府の感染症対策企画課に確認したところ、接種歴のある陽性者のデータは、感染者情報のデータベース「HER-SYS」から抽出したとのことである。
 そこで、「HER-SYS」を管理している厚労省(新型コロナウイルス感染症対策推進本部保健班)のシステムに詳しい担当者に取材したところ、発生届に設けられているワクチン接種歴の欄は必須入力項目とはなっておらず、接種歴があると判明した場合は回数や接種日を入力できる仕様になっているが、接種歴がないと判明した場合はその旨を入力する仕様になっておらず、空欄になるという。
 つまり、接種歴が空欄になっている陽性者は、未接種者なのか、接種歴不明者なのかは区別がつかないことになる。
 府の前掲資料では、3〜8月の陽性者8万5325人中「接種なし・不明」は8万3207人としているが、この中には接種歴のある陽性者が含まれている可能性があるが、実数は不明だ。
 府の担当者も、「接種なし・不明」の内訳はわからないため、合算した数字しか出せないと説明している。

 もうひとつ、留保すべき点がある。
 大阪府の集計期間が「第3波」は5ヶ月弱、「第4波」は4ヶ月弱であるのに対し、「第5波」は2ヶ月弱とまだ短い。
 最近急増中の陽性者が今後、遅れて重症化したり死亡したりする可能性があり、それに伴って重症化率が上昇する可能性があるということだ。
 現在の重症化率はまだ暫定値である。
 今後も、府の公開情報を注視し、必要に応じて報告したい。

 とはいえ、東京都でも、7月以降の死者数は、第4波(4〜6月)に比べて、大きく減少していることを、参考までにグラフで示しておきたい。

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