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夜のニュースで流れる話題は1日にたった6本!?

今回から、私ヴェレ(@vere_oku)がさまざまな方にお話を伺う対談シリーズをスタート!今回お話を伺うのは、トレーダーのXさん。大手テレビ局を退職後、企業コンサルティング業務の傍らでトレードをなさっているXさん。プログラマーとしての側面も持つXさんは、500を超えるメディアから情報を自動収集するシステムを構築し、国内株でピーッ(内緒)を達成。そのトレードのスタイルと哲学を伺います!

テレビは1,000万人が興味を持つニュースしか報道しない

ヴェレ:Xさんは大手テレビ局に在職していたこともあって、退職後は情報を発信する側の目線でファンダメンタルを読み解き、国内株にトレードしているそうですね。

X:情報には発信する側と受け止める側がいて、僕は発信する側でした。テレビの情報は1,000万人以上が見るという前提で作られています。さっきヴェレさんが「ファンダメンタル」とおっしゃいました。この言葉は、今僕とヴェレさんの間では通じますが、テレビで放送しても990万人は知らない言葉ですよね。

これをトレードに当てはめて考えてみると、多くの人が理解できないような話題は、世の中を巻き込まないということです。世の中全体が動くのは、たとえば今なら「コロナ」とか「テレワーク」とか。あるニュースが、わかりやすい言葉を使ってプレゼンテーションされているかどうかというのが、重要なことなのではないかと僕は思っています。

ヴェレさんは、テレビのニュースって、1日に何個ぐらい扱いがあるかご存知ですか?

ヴェレ:えー?2、30個ぐらいですかね~?

X:実は大きなニュースは1日に6個ぐらいなんですよ。1時間のニュース番組で7分前後の話が5個か6個あると、もう3、40分ぐらいになってしまいます。あとはスポーツと天気予報をやったらおしまいです。毎日のテレビの話題で注目されることが5、6個ぐらいしかないと思うと世の中って結構わかりやすいですよね。情報を集めるときも、無限に集めるんじゃなくて、柱は5、6本。この整理だけで本当に楽になります。

ヴェレ:全然知りませんでした!

朝のニュースは夜のニュースの焼き回し

X:後場が終わってから、企業がいろいろな発表を行うじゃないですか。でもそこから先ってニュースは結構止まるものなんですよ。小池知事がコロナについて話すのは午後3時過ぎ。首相の会見も午後5時ぐらいのタイミングが多い。この段階で6本のニュースは決まって、1日の集約として夜のニュースが流れます。ニュース7、ニュースウオッチ9、報道ステーション、news zero、NEWS23、WBS…すべて「6本のニュース」が流れる。

朝のニュースは、夜のニュースのリフレインがとても多いですよね。夜は取材しようがありませんからVTRも編集もほとんど同じです。専門家にコメントをもらうこともできません。唯一動いている海外の動向が補完されます。ニュースを発信する側の構造がわかると、情報収集は結構さぼれるんですよね(笑)。

連日、航空会社や鉄道、旅行会社などが今期決算の強烈な赤字の見通しを発表しています。これは、これまでの業績を見ている人であれば皆わかっていることだったと思いますけど…。

ヴェレ:えー、私わかりませんでしたよ!ファンダメンタル、全然わからないお…🤪(てへぺろ)。

X:(苦笑)

テレビ局がニュースでどの会社の業績見通しを報道するかというと、先ほど申し上げた1,000万人に伝えて意味があるかを軸に判断するわけです。それで日本の血流である旅客業やライフライン系のニュースはインパクトがあるので、前面に押し出されがちですね。でも同じ日に発表された小さな会社の決算については報道されません。

だから、ニュースは1,000万人が興味を持つ話題なのかどうかで選別すると、重要度があっという間にわかるんだと思いますよ。

ヴェレ:まさに情報のプロの考え方ですね。

「集める能力」と「濾しとる能力」

ヴェレ:Xさんは日々どのように情報を収集しているんでしょうか?

X:約500サイトほどの情報を自動収集しています。国内・海外のテレビ、新聞、ネットニュース、SNSはもちろん、まとめサイトも見ていますよ。

ヴェレ:まとめサイトまで!?そんなに大量のニュースがあっても読み切れないと思うんですが。

X:実は集めたニュースを選別する仕組も自分で作っています。ここがとても重要で、先ほどニュースの柱は1日に5、6本と申し上げましたが、その5、6本を抽出するような仕組みなんです。

たくさんの情報に囲まれると、都会の雑踏の中で重要な人を探すようなもので、探したいものが逆に見つからなくなってしまいます。いくらデータを集めても、その先にどうするかというビジョンがない人にとっては、全然使い物になりません。ですから「集める能力」だけでなく、「濾しとる能力」も重要です。これは人間には不可能なので、コンピュータを活用していくことになります。

ヴェレ:自動収集した情報を、さらに濾しとっているわけですね。濾しとった後のニュースは、ほかのトレーダーさんより早い情報だと思われますか?

X:そうですね。ニュースって5、6本の柱になる前に、「布石」がたくさんあるんですよ。

ヴェレ:え、布石?

X:トップニュースにはなっていない、二軍とか三軍のニュースがあって、2時のニュースや10時のニュースに小さく差し込まれている。全国放送はされているけれど、1日の特大のまとめにはならなかったもの。たとえば何かの新商品ができたとか、ビッグサイトで行われていた展示会のレポートで、取り上げられていたとか…。もちろん各社のIRもです。

ヴェレ:それがしばらくたつとビッグニュースの種になるわけですね!

X:そうです。それと、実は日本はとくにそうなんですけど、メディアが玉突きで取材していくということが多いですね。

ヴェレ:玉突き?

X:たとえば、ある日ぼくが世界ではじめて「金色のカエル」を見つけたとします。そのニュースをまず日本テレビが報道したら、翌日にはたぶん、テレビ朝日がワイドショーで紹介して、TBSもNHKも…という風に、話題が広がっていくわけです。だから、メディアにかすった、2軍・3軍のニュースが、実は伸びるんです。

ヴェレ:かすったニュースって、どこにあるんですか🤩!?

X:たとえばヤフーニュースでも、ずっと生き残っていく話題がある一方で、一瞬しか掲載されない話題があったりします。あと、エンタメ、ビジネスとか、それぞれのカテゴリーのなかにしかいなくて、トップまで上り詰められなかったような、いわばある程度はニーズがあるものの、トップになれなかったニュースもありますよね。こうしたものをちゃっかり記録しておく。小粒の情報が延々と続いて、あるとき爆発する…。そういう情報の構造を理解すると得しますよ。

ニュースで絞ってテクニカルでインする

ヴェレ:500サイトから情報を自動収集されていると、年間どれぐらいの情報が収集できるものなのでしょうか?

X:ちゃんと数えたことはありませんが、年間だと50万から100万本ぐらいは記事や情報を収集していますね。「ヤフーだけを見て」「時事通信だけを見て」とかいうのはダメで、収集すべきは「全部」です。

ヴェレ:人間では絶対に収集できませんね。

X:AIで自動的に重要度を判定するのは非常に難しいことなんです。デジタルという話題一つとっても「DX」「5G」「テレワーク」というのはそのままデジタル用語とわかっても、「脱はんこ」だってデジタルの話題です。言葉の意味を判別し、それを束ねるようなことをしていかないと、なかなか社会にとって重要とされるテーマを見つけられません。

僕の「濾しとる」仕組みはAIを使っていますが、AIは学習させないと全然いいものにならないんですね。ですから僕自身がサンプルデータをAIに喰わせて、「これは重要」「これは重要ではない」と徹底的に育てています。

それと、実際の売買ではテクニカルもちゃんと見るようにしています。「6本の重大ニュース」は、トリガーの話なんです。トリガーって、ぐんぐん値上がりするための起爆剤のことです。でもそれだけだと抽象的で、結局具体的にどのタイミングでインするかに関しては、テクニカルな話だと思います。

ヴェレ:ほおお、意外です😮!
ニュースで銘柄を絞って、テクニカルでインすると。

X:そうです。情報の広がりには2つあります。一つは先ほど申し上げたトリガー。これはバーンと一気に広がって、そのあと収縮するものです。もう一つは延々と長く続くものです。

以前大災害の際にTwitterでデマがどのように広がったのかというのを調べたことがあります。地震がきたら「地震だ!」「びっくりした!」とみんな書き込みますよね。そのあとに「大丈夫でしたか?」みたいなやり取りをして終わる。さらに大きな地震になると「こっちが倒れた」「こっちが火事だ」となって、そのあと、「まだちょっと揺れるから不安だ…」というツイートが延々と続きます。つまり最初の「びっくり」と、長く続く「不安」という情報の2つに切り分けられるんです。

トレードの世界でいえば「トリガー」、つまりきっかけがあってぐんと値上がりして、そのあと収まりながらも小さなアップダウンが続く…。情報を分析するときには、この「トリガー」とじんわりした「トレンド」を取ることが重要です。

ヴェレ:おもしろいな~。

X:平均移動線を見る期間にも、5MA、25MA、200MAとかいろいろ種類がありますけど、その性質の違いを意識して、私は長いものでトレンドを確認して、出だしの5分でタイミングを見極めています。

ヴェレ:5分レベル。すごい!

(続きます)

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