東京ヴェルディのレインボーロゴの件についてのまとめ

本日、東京ヴェルディがこんなリリースを発表した。

東京ヴェルディは、世界中でLGBTQ+の啓発活動が行われる「プライド月間(Pride Monthly)」に合わせて、東京ヴェルディのVロゴのレインボーバージョンを作成し、ステッカーを製作して6月のホームゲームで来場者に配布いたしますので、お知らせいたします。

通常ロゴとレインボーロゴ

噛み砕いて言うと「東京ヴェルディのレインボーカラーロゴのシールを配布する」というイベントを発表した。

結果として、このリリースは東京ヴェルディサポーターを中心に燃えた。

これは様々な正義がぶつかり合い、どの立場から見るのかによって答えが変わってくる難しい問題であると私は解釈している。

個人的な見え方にはなるが、それぞれの立場に立って考えてみよう。


サポーターから見た視点

最初に断っておくと、私は昨年から東京ヴェルディの試合を見ている程度のファンであり、このクラブのカルチャーを100%理解している訳ではない。そんな中でもこのサポーターに共感できる部分は大いにあるので、まずはこの立場から見ていきたい

このイベントに対して、サポーターの意見としては明確で「東京ヴェルディのアイデンティティーである緑を上塗りするとは何事じゃ」ということ。

これを説明するには、東京ヴェルディの歴史に少し触れたいと思う。

東京ヴェルディは創立50周年を迎えた2020年に、エンブレム変更を伴うリブランディングを行なった。

旧エンブレムと新エンブレム:https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00588/00002/

このリブランディングによって、それまでクラブ創設からデザインが受け継がれてきた中央部の始祖鳥のデザインが一新され、「Verdy TOKYO」のロゴも「V」マークへと移行。

マスコットのヴェルディくんもマスコット勇退という形で、新マスコットのリヴェルンにその席が受け継がれることになった。

つまり、これまでの東京ヴェルディの要素はほとんど無くなってしまったといったも過言ではない。

しかし、これほどまでに変わってしまったクラブの中にも変わらないものがある。それは東京ヴェルディは「VERDE(緑)」であること。これはリブランディングサイトのトップにも堂々と書かれている。緑こそが東京ヴェルディのアイデンティティーだと。

https://www.brand.verdy.co.jp/brand

今シーズンは、赤青に支配され続けていた飛田給駅に「TOKYO GREEN」の看板も掲出した。それぐらいに東京ヴェルディとグリーンの関係は奥深く、東京ヴェルディのサポーターが緑色を大事にしている理由なのだ。

今回はそのグリーンに、別の色を重ねられたのだ。

怒らないサポーターの方がおかしい。

いくらイベントのためとはいえ、グリーンを軽視したようなイベント企画に関しては、サポーターを怒らせるのには容易い。

この件に関して、別のクラブのサポーターが「たった1試合だけシールを配布するだけなんでしょ?いくらなんでも怒りすぎ」というような意見もみられたが、これは理屈では説明しようがない話なのだ。

クラブのアイデンティティーを、クラブ側から上塗りして発表されたことにサポーターは怒り狂っているのだ。


クラブから見た視点

東京ヴェルディはリブランディングによって、サッカークラブという枠組みを超えた「総合型スポーツクラブ」を目指し、それを体現しつつある。

具体的には、男子サッカーの東京ヴェルディや女子サッカーの日テレ・東京ヴェルディベレーザ、バレーボール、フットサル、トライアスロン、ビーチサッカー、チアダンス、ビーチバレーなど、多様な競技チームを運営。

また、障害者支援という文脈でも積極的に活動をしており、昨年に関しては味の素スタジアムの協力の元で、車椅子と共に選手入場を行うなど、かつて例のないイベントなどにも積極的に取り組んでいる。

東京ヴェルディ公式サイトより引用:https://www.verdy.co.jp/page/1601

また、Green Heart Roomというスタジアム観戦への心理的ハードルの高い方にも試合を楽しんでもらえるような座席を用意するなど、総合型スポーツクラブの名に恥じないような取り組みを行なっている。

東京ヴェルディ公式サイトより引用:https://www.verdy.co.jp/news/10725

そんなクラブが打ち出した2023年のスタジアムコンセプトがこちらだ。

https://www.verdy.co.jp/news/11895

説明にも書かれているように、本当に誰でもが楽しめるスタジアムを目指すという。

そして、世界中でLGBTQ+の啓発活動が行われる「プライド月間(Pride Monthly)」の一環として、東京ヴェルディとしても啓蒙活動を行おうと取り組むために発案されたのが今回のイベントだ。

これは東京ヴェルディが取り組んできた文脈として筋が通っているし、間違いどころか総合型スポーツクラブとして立派なアクションだとさえ思う。

さて、ここからが問題となってくる。


どう着地させればよかったのか

このイベントが発表された時に、多くの東京ヴェルディサポーターが批判のコメントを付けた。

私から見えた画面だけでも、ツイートに対するリアクションにポジティブなものは数えるほどしかなかった。

ただ、私は東京ヴェルディが間違った方向性のイベントをしている訳でも、サポーターがただ考えも無しにクラブを叩いているとも思っていない。

ここで得られる教訓は1つ。

「エンブレムやクラブカラーには気安く扱うな」ということ。

それが学べただけでも、大きな勉強になったと思う。

さて、着地点としてだが、さっさと結論を言うと、LGBTQ+の啓発活動が行われる「プライド月間(Pride Monthly)」に関して別の企画を考えればよかった。

というのも、実は東京ヴェルディは過去にも同じようなイベントを行なっているから話は早い。

これは2021年11月に、東京ヴェルディおよび日テレ・東京ヴェルディベレーザの試合において下記のイベントを行なっている。

本試合では、選手入場時に選手がレインボーカラーのリストバンドを着用したり、レインボーフラッグの掲出を行う予定です。さらに、試合会場には、プライドハウス東京のパネル展示や「Sport for Everyone」「プライドハウス東京レガシーハンドブック」などの冊子の配布を行うブースを設置します。

選手入場時にレインボーカラーのリストバンドを着用し、試合会場に啓蒙のためのブースと冊子を設けるというものだ。

ツイッターを用いてこちらのイベントの検索をかけてみたところ、批判のコメントは見当たらなかったし、このイベントに対して強く嫌悪感を抱くコメントは見当たらなかった(少なくとも”私のツイッターアカウントから見られる、オープンな場での感想において”だが)。

つまるところ、クラブ側がサポーターの地雷を踏んでしまったのが何より悪かったということだ。


残念だったこと

個人的に残念だったのが、このイベントが公開されてからの東京ヴェルディサポーターのリアクションだ。

この記事内でも書いたように、私は東京ヴェルディサポーターとしてこの案件に怒ることはある種当然だと思っている。ただ、怒り方が良くない人が多々見られた。

怒るのは良い、ただ怒るにしても限度と節度を持ちましょう。

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