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煩悩は除夜の鐘で消せるのか

 除夜の鐘は大晦日の夜に24時を挟んで、鐘を108回打ち鳴らす。なぜ鐘を鳴らすのか。煩悩を消すためと108個の数については、日本大百科全書によると「凡夫の煩悩を108種とし、その消滅を祈念する」とされている。
 なぜ108種であるかについては後述するとして、寺はなぜ鐘を鳴らすのか。また寺の鐘といえば晩鐘もある。晩鐘・暁鐘と除夜の鐘は何が違うのであろうか具体的に考えてみたい。

寺の鐘「梵鐘」とは、そもそも何か

 仏教語大辞典に梵鐘は「寺院の鐘楼につりさげ、撞木で打つ鐘。」と記される。これはTop写真が示しているもののことである。
 ではそれだけの意味であるのか。日常ではあまり見慣れない「梵」の字の意味は、神聖なものという意味がある。となると聖なる鐘というのが梵鐘の意味である。
 この梵鐘を鳴らす音が響くことで、聖なる力が世界に響き渡っていく。と考えて良いのかもしれません。聖なる力により、皆の苦悩を滅却するとを祈った音ともいえるでしょう。

晩鐘・暁鐘は何のため鳴らされるのか

 では晩鐘や暁鐘として鳴らす鐘には、どのような意味があるのか。晩鐘は日暮れの時間に鳴らされる鐘。暁鐘は夜明けの時間に鳴らされる鐘である。
 時計が日用品になるまでは、時間を知らせる意味がありました。しかし先の聖なる音を響かせるという意味から考えた時に、一日の始まりと終わりを聖なる鐘を響かせることで、一日をすっきりと迎え、終えることを祈念しているとも考えられます。

除夜の鐘とは何か

 除夜の鐘は大みそかの夜に107回、そして年が明けて1回の鐘を鳴らします。この鐘の音により「凡夫の煩悩を108種とし、その消滅を祈念する」のです。さて108種の煩悩の108の数とは何でしょう。

・無慚・無愧・嫉・慳・悔・睡眠・掉挙・惛沈・忿・覆の10種と、人々を迷いに結縛する98結を加え108であるとした説。
・六根と六境の関連から六塵(穢れ、煩悩)が生ずるとき、それぞれに好・悪・平(非好非悪)の3種があって18(6×3=18)となり、おのおのに染・浄の2を乗じて36(6×3×2=36)、さらに過去・現在・未来の3種があり、これを乗じて108(6×3×2×3=108)となる説。
・1年を分けた十二か月、二十四節気、七十二候を合した数であるとした説。

 仏教としてこのような様々な煩悩の数に対する考え方があります。現代社会に置き換えると会社やネットなどにて、生じる多種多様な懊悩ストレスはまさに煩悩である。これらの煩悩を生み出す社会環境は簡単には無くならないでしょう。
 しかし無慚・無愧・嫉・慳・悔・睡眠・掉挙・惛沈・忿・覆の一つ一つに懊悩やストレスとなる元の感情を整理することで、その苦しみに対する受け取りかたを変化させることも出来るかもしれません。
 新しい歳を迎える準備として大みそかの夜に自身の思いを少し整理する時間を作り心の準備を行うことを、古(いにしえ)から続けてきたと考えることができる。

「煩悩は除夜の鐘で消せるのか」の結論

 ここで表題に掲げた「煩悩は除夜の鐘で消せるのか」に戻ります。ここまでの議論により、鐘の音は「聖なる力により、皆の苦悩を滅却するとを祈った音」と定義しました。そして除夜の鐘は「煩悩の滅却を祈って」鳴らすものである。
 この除夜の鐘を聴きながら、自分自身にとっての懊悩を整理する。そして新たしい歳に対する希望を整理することで、煩悩を消滅させる心の準備が行えると考えることができることで、煩悩は除夜の鐘で消せるといえる。のではないでしょうか。

 読んでいただけた全ての皆様に、
   新しい歳があなた様にとって良い年になりますように
 と祈念させていただきます。


top画像: ei-miさんによる写真ACからの写真 を使用させていただきました。

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