命の水

小学生の時に下校途中、家までの距離が長いので途中どうしても喉が乾いてしまい、通りすがりのお店の方にお願いしてお水を飲ませてもらうことがよくあった。

喫茶店、時計屋さん、お米屋さん、水道屋さん、ガソリンスタンドなどなど
街の様々なお店に友達と行ってはお水をもらってカラカラに乾いた喉を潤していた。

この、水をもらう風習がいつからできたのか分からないが、当時は夏場でも飲み物を学校へ持参することができなかったのもあったり、学校から家まで2kmという小学生からしたらまぁまぁな距離あったのでとても助かった。

姉も、姉の友達もお水をもらっていたのできょうだいや友達、そして後輩へと受け継がれてきていたのかもしれない。

お店の人も優しく、「お水くださ〜い!」と言うといつも快く下さった。
友達と一緒の時は1つのコップを回し飲みしたりした。

お米屋さんは気を利かせて水ではなくお茶をくれたり、お菓子までもくれた。
一方でガソリンスタンドはぬる〜い水道水で後味が悪かったのを覚えている。
水道屋さんも水道屋さんなのにぬるい水で、1回行ったっきり一度も行かなくなった。

こんな感じで「今日はどこどこのお店に行ってみようか」などと友達と作戦を立てて新しくお店を開拓したりもしていた。

特に美味しかったのが、既にお水ください軍隊からよく名の知れていた某喫茶店のお水で、キンキンに冷えていて、夏場の暑い時にはそれはそれは生き返るようなおいしさだった。

これは水道水ではない、ちゃんとしたミネラルウォーターか何かを冷やしたものを使っているのだと分かった。

そこのお店は本当によく訪ねていた。そして周りの子からもたいへん人気が高かった。

子供用のプラスチックのコップに入れてくれた水は、キラキラと宝石のように輝いて見え、まるで命の水かのように元気を与えてくれ、残りの距離を頑張って歩こうという気持ちになった。

ただの水なのに、「あと少し、頑張れ!」と背中を押してくれるようだった。

本当に子供に優しい街だなと思った。

こうやって馴染みのあるお店があるともし不審者に遭遇した時も助けを求めて行きやすいのかもしれない。

今現在もこの風習が残っているかはわからないが、数少ない私の下校途中の思い出だ。

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