役員報酬

不勉強で今日の日経新聞を見るまで、2019年12月成立の改正会社法における役員報酬関連の内容をあまり見ていませんでした。

上場会社における取締役の報酬等の決定方針の義務付け(改正後の会社法361条7項)
株式や新株予約権を報酬等として付与する場合の株主総会決議事項の具体化(改正後の会社法361条1項)
事業報告における報酬等の決定方針や個人別報酬等の決定の代表取締役に対する委任などの事項の開示

法律的な詳細は、私自身が専門家でもないので書ける内容でもないのですが、実際の取締役報酬の決定はいつも悩ましいと思っています。

代表取締役社長が決めてしまう会社も多いとも思うのですが、一方で、最近のベンチャー企業を見ていると、他にも論点がある気がします。

1 代表取締役社長が若く、ストイックで自らの役員報酬を上げたがらない人もいる。そのため、会社全体の給与水準が上がらないことの方が悩みがあったりします。

2 IPOを目指す会社では、少し給与水準が相場より低めで、代わりにストックオプションなどを付与することが一般的です。このストックオプションを報酬金額としてどう評価するかは、悩ましいところです。

3. IPO後は、税制適格SOでも費用計上が避けられなくなり、一方で損金算入も難しく、IPO前のような過剰な期待値がなくなるため、徐々に役員だけでなく、社員も含め、全体的で、金銭固定報酬を徐々に引き上げていきます。一気にあげると、会社の経費負担も上がるので、適正値の水準まで報酬の決定方針を整理しにくいのも悩みです。

4 最近では、役員報酬は固定報酬の比率よりも適切なインセンティブ設計がなされているか、も論点。損金参入も考えると、短期業績インセンティブは、事前報酬届出制度に沿った制度設計が必要ですが、開示も含め面倒だったりします。株式インセンティブの割合の設計も、最近は、譲渡制限株式を活用したものも多いですが、インセンティブ報酬比率など日本ではまだこなれていないので、比率が悩ましい。

5 株式を保有している、あるいは、ストックオプションが、株式譲渡課税であるのと比較して、業績インセンティブも、譲渡制限株式も、所得税の課税対象で、累進課税が適用。付与金額ベースが同じでも、手取りベースが大きく異なるため、制度設計しにくい。

6 IPO前は、IPOのスケジュールや社内の期待値調整を誤ったり、IPO後は、株価が低迷すると、株式インセンティブはほぼ意味がなくなります。せっかく、付与しても、何のモチベーションも上がらない可能性もあります。

報酬委員会を設置するのは、上場企業でも規模が小さいと現実的でない気がしてしますし、報酬をやたら上げたいわけではなくても個別報酬決定の方針をしっかり作るのも人数も少ないし、結構悩ましい問題かな、と。でも、ちゃんと考えないといけないなあ、と思う今日この頃です。


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