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【セッション・レポート】脱・働く#8 ― ジョブ型・新時代のキャリアオーナーシップ論:地方から見た既にある未来の生存戦略

「人々に『はたらく』を自分のものにする力を(GIVE PEOPLE THE POWER TO OWN THEIR WORK-LIFE.)」をミッションに掲げるパーソルキャリア株式会社。起業家や政策担当者など、多様なイノベーター達をつなぐ「Venture Café Tokyo」と共同で、2020年10月22日、トークセッションシリーズ「脱・働く-POWER TO / THE PEOPLE-」の第8回を開催しました。

今回は「ジョブ型・新時代のキャリアオーナーシップ論:地方から見た既にある未来の生存戦略」をテーマにトークセッションを実施。NPO法人ミラツク代表の西村勇也氏、長野県塩尻市役所の山田崇氏をゲストに招き、これからの時代に必要なキャリアオーナーシップとはなにか、地方ならではの戦略について語っていただきました。

◆「脱・働く-POWER TO/THE PEOPLE-」について

不確実性の時代とも称される今。技術進化や人口動態の変化などにより、あらゆるゲームのルールが加速度的に大きく変わりつつあります。

それに伴い、社会保障制度や終身雇用など戦後期に構築された様々なシステムも「制度疲労」に直面しているように思われます。

我々はこの来るべき時代において、どのようにはたらき、生きるべきなのでしょうか?

本シリーズではこの考えをもとに、様々なステークホルダーを招いて皆さんとの対話の場を持ち、「日本らしい“はたらく“のその先」について議論を深めることを狙いとします。

①未来を生き抜くためのキャリアオーナーシップとは?

中山氏:パーソルキャリアの中山です。弊社は主に転職や新卒の就活、そして企業の採用の支援など、「はたらく」という領域で様々なサービスを展開している会社です。昨年の秋、我々のミッションを「人々に『はたらく』を自分のものにする力を(GIVE PEOPLE THE POWER TO OWN THEIR WORK-LIFE.)」と制定しました。

特にコロナ禍においては、リモートワークやワーケーションなど、働き方に関していろいろな声が上がっています。「はたらく」という領域でサービス提供をしてきた者として、改めて振り返ってみると、これまでは国や企業が決めた時代の変化に対応してきた感覚があります。

一方で、「はたらく」ことに関してワクワクしている、ポジティブな方々を見ていると、とても主体的で、自分で人生の舵取りをしている人が多いと感じます。そうなるために何が必要なのか、今日はお二人のゲストを迎えて議論を深めていきたいと思っています。

第8回目となる今回の「脱・働く」セッションでは、「ジョブ型・新時代のキャリアオーナーシップ論:地方から見た既にある未来の生存戦略」をテーマに、ミラツクの西村氏、長野県塩尻市の山田氏をお招きして、議論を深めて参ります。まずはミラツクの西村氏に、バトンをお渡しします。

西村氏:NPO法人ミラツク代表の西村です。僕はもともと大阪生まれ大阪育ちで、東京で2つの企業に在籍したあと、ミラツクを立ち上げ、今は滋賀県の大津市に住んでいます。

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ミラツクというNPOはちょっと変わっていて、なにか個別の課題解決をするのではなく、「すでにある未来の可能性を実現する」というミッションをもとに運営しています。

主に情報とネットワークの編纂によって人と組織の支援を行い、様々な企業の方々と未来構想を実現するためのプロジェクトや、そのためのリサーチに取り組んでいます。

中山氏:ありがとうございます。では続けて、山田さんへバトンタッチしたいと思います。

山田氏:長野県塩尻市役所の山田崇です。塩尻市役所では勤続23年目の45歳です。

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職員の仕事以外に、プライベートでシャッター商店街に空き家を借りて様々なイベントを仕掛ける、「nanoda」というプロジェクトを8年半やっています。もとはただの公務員でしたが、このプロジェクトが注目されて、個人宛に年間200回以上講演依頼が来るようになりました。

また、民間企業と連携して塩尻の地域課題を解決する、「MICHIKARA」というプログラムも手がけています。

西村氏:「そもそも『キャリアオーナーシップ』って、実際なんなのか?」と問われると、今ひとつよくわからない。そこで、パーソルキャリアの中山さんはじめ、チームと一緒に33冊の文献を調査して整理し、まとめあげたのが以下の5つの中心概念です。

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例えば、「A. 軸を起点にありたい自分の生き方を構想する」。足りない部分を埋めるとか、出世するとかではなくて、まずは「自分らしさってなんだろう?」と考えてみる。その軸をもとに、生き方を構想していく。これがキャリアオーナーシップを支えるひとつの概念になります。

そして、「B. 自己を理解し、仕事を通して自己実現・表現する」。単に自分のことを理解するだけではなく、そこからさらに仕事を経て変化していくことも、キャリアオーナーシップの主要な基盤となる概念です。

他にも、「C. 心の内側にある好奇心やモチベーションを起点に行動する」「D. 新しいものを受容し、自己変容を積み重ねる」「E. 自分自身・周囲と調和し、好循環を生み出す」などがあります。

中山氏:今回ミラツクさんと概念整理をする中で、使っている言葉は違っても、キャリアオーナーシップについて近しい概念を語っていて、同じ想いを持っている人は世の中に多くいるんだなと実感しました。

この整理をもとに、一人ひとりが自分らしい「はたらく」を見つけ、選んでいくためにはなにが必要なのか、議論を深めていくきっかけにしたいです。

西村氏:そうですね。そして、中山さんたちが立ち上げた「キャリアオーナーシップ リビングラボ」では、これから調査だけでなく様々な実証実験を行っていきます。長野県塩尻市の方々と、地方を舞台に副業してみることで、キャリアオーナーシップを高めることに寄与する良い効果があるんじゃないか。そんな仮説を立てて取り組んでいます。

②地方を舞台とした実証実験:塩尻市の場合

山田氏:塩尻市役所とパーソルキャリアは去年から、個人の才能を活用し副業で町づくりに関わる、「ふるさと副業」を実施しています。そして先ほど西村さんからもお話があったように、「はたらく」ことに関してオーナーシップを持つ人たちをどのようにして顕在化、育成できるのか?という実証実験を、今後はミラツクとパーソルと一緒に行っていきます。

西村氏:経済圏の狭いエリアは、実態との距離が近いところに価値があると思っています。副業するにしても、場所はどこでもいいわけではなく、塩尻でやることに意味がある。

中山氏:仕事の成果が見えやすい、リアクションがすぐ返ってくる、個人としてコメントがもらえるところは、都市部では得難いものですよね。

山田氏:普段の仕事でも、人の声をよく聞くことは大事にしていますね。公務員って、「お金だけもらって、なんにもやってないじゃん」みたいなことをよく言われるんですよ。どうしてそんな文句を言われてしまうのかというと、本当はこうありたいという理想と、実際やっている仕事にギャップがあるからなんです。

でも、無理にそのギャップを埋めようとする前に、現状がどうなっているのかを知らないと、変化を与えられない。

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私はレタス農家の息子だから、商店街に住んだことがありません。なのに税金で給料をもらって、商店街活性化なんてできるわけないじゃん、と。普通に考えれば当たり前のことなんですよね。

じゃあ自分にできることってなんだろうと考えて、3ヶ月でいいから空き家を借りてみようと思ったんです。平日の朝7時から8時、勤務時間以外に、空き家のシャッターを開けてそこにいるとどういう気持ちになるのかな、大家さんはどういう人なのかな、目の前をどういう人が通り過ぎるのかなって。現場を知ることならすぐできるので。

西村氏:山田さんのやっていることって、「公務員こうあるべし」というよりは、もう少し手前の「地域のためになる人間というのは、こういう生き方だよね」ってスタンスなのかなと。結果から逆算して動くのではなく、自然に行動するのが、キャリアオーナーシップ的な考え方なのかなと思います。

③どのようにキャリアの舵取りをしていくべきか

中山氏:ご質問をいただいていますので紹介します。「キャリアとは結果的に得られた軌跡」という解釈もあると思うのですが、今後のキャリア設計についてはどうお考えですか?

西村氏:今の山田さんの話は「自分はこう考えている」「こんなふうに行動している」という、プロセスについての話だったと思うんです。マイルストーンを選ぶのではなく、自分の行動をどう変えていくのかをキャリアの設計として捉えている。

「キャリア」というと、「職業」というブロックのような塊で選びがちだと思うのですが、実は動的で変容するものだし、自分自身のアイデンティティにもなりえる。

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僕自身は、自分からどこかへ行くということがあまりないんですよ。めちゃくちゃ待ちの人間で、すごく受け身。

山田氏:私も超積極的な待ち派なんですよね。

中山氏:それは意外でおもしろいですね。お二人とも嗅覚があって、見つけにいくのかなと思っていました。

山田氏:自分の活動やプロジェクトを記録して公開するのが、おすすめの「待ちの姿勢」です。情報発信まではいかなくとも、公開するだけでいい。私はlinktreeというサービスに自分のSNSやポートフォリオをまとめているのですが、このURLを共有するだけで、一瞬で自分の経験が届けられるんですよね。

誰かが私の経歴を見て、「山田さんにこれ話してほしいな」「こういう話できるでしょ?」と言ってくれる。それらを通じて、「民間企業から見ると公務員のこういうところにニーズがあるんだな」と自分の強みを可視化することもできます。

④人生100年時代の到来。60歳からの40年間をどう過ごすか?

中山氏:もうひとつご質問です。「公務員やサラリーマンで、山田さんのように自由に動けず苦しんでいる人になにかアドバイスをするとしたら?」とのことですが、いかがでしょうか。

山田氏:私はお金がもらえなくても、むしろ払ってでも、関心のあることをやってみたほうがいいと思っています。継続しようと思うとなかなか一歩が踏み出せないので、闇雲にやるよりは、「3ヶ月だけ」と期間を決めるのがおすすめです。小さなアクション、小さなDoを大切にするといいと思います。

私は23年間ずっと公務員で転職経験がありません。でも、人生100年時代においては、60歳で定年したあとも40年間働かなきゃいけない。公務員しかやっていないのは超やべーって思うんですよ(笑)。

大学を卒業したあとの公務員期間はたったの38年間と考えると、60歳からの40年が怖くてしょうがない。だからプライベートな時間を使ってキャリアの探求をしています。

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中山氏:西村さんが今まで接してきた方の中で、実際に変化した方はいらっしゃいましたか? こういった考え方に気が付く、変わるきっかけにはどのようなものがあるのかなと。ちょうど、「キャリアオーナーシップ リビングラボ」でやろうとしているテーマではありますが。

西村氏:僕はもともと心理学をやっていて、心の成長や人生の変容についての研究をしていたので、前提として「人は変わるもの、大人になっても変化していくもの」だと思っています。

じゃあどういう経験から変わっていくのか。例えば先ほどの5つの概念のE.「周囲と調和して」、B.「仕事を通じて」という部分でいえば、社会との接点を通じて変わっていくことが鍵だなと思います。人と関わる中で、自分というものがだんだん形成され、変容していく。

山田さんのように、自分だけではなく、仕事や周囲など外側に目を向けていくことに価値があるし、そういう人ってすごく変わるなと思います。

周りの人をリソースとしてしか見ていない人とは、絶対に一緒に仕事したくない(笑)。その人自体が嫌なのではなくて、いい成果が出ないし、「自分、自分」という人はずっと変わらないからです。

自分のためではなく、目標のため、他人のために動くと、どんどん変わっていきます。そういう人と仕事をすると、一緒に成長できる。

中山氏:山田さん、西村さん、ありがとうございました。

先ほどもお話したように、「キャリアオーナーシップ リビングラボ」の取り組みの一つとして、この3者で地方での短期副業を支援する「doda地方短期副業プロジェクト」内で、長野県塩尻市での副業の募集を開始しました。

この体験を通して、キャリアオーナーシップに繋がるヒントが得られるのではないか?という仮説のもと、実証実験を年明けから実施します。今回お話したことをアウトプットする場、発見の場になると思うので、ぜひエントリーいただけたらと思います。

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次回のセッションは、 テクノロジーで実現するWell Being

脱・働く第10回となる2021年1月21日(木) 19:00–20:00 (オンライン)は、「テクノロジーで実現するWell Being」をテーマにセッションを行います。ぜひお気軽にお申し込みください。


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