魂の在処が見たいのか

VTuber界隈における「魂」という言葉のチープさはもう止まらないのだろうか。
恐らく語源であろう"魂の姿の話"の意味合いではなく「バーチャルの世界観を損なわずに中の人を指す単語」として使われているのは複雑なものを感じるが、この辺りはきっと時代の流れなのだろう。
様々な言葉は時代の移ろいと共に意味や使われ方が変わっていくものだ、これもそういうものなのだと受け入れるしかない。
ここで昔の価値観に縛られてあーだこーだ言うのが老害だ、こういう場合自分を更新していくべきなのだ。

ゲーム部の「道明寺 春翔」の声優が変更された、同じメンバーの「桜樹 みりあ」に次いで2人目だ。
以前からゲーム部運営と声優との間にトラブルがあり、声優のツイッターからそれが判明した。
これに関しては運営から「待遇改善に向けて尽力していく」という旨の謝罪コメントを出し、表面上で見ればひとまず解決したように見えた。
しかし桜樹みりあの声優変更が前触れもなく起こり、運営会社である株式会社Unlimitedの新規VTuberの募集、そして今回の道明寺春翔の声優変更。
これによってUnlimitedに対するファンの信用はガタ落ちになっているのは間違いない、実際にチャンネル登録者数は急激に落ち込んだ…その後登録者数が数千単位で垂直に伸びたのには苦笑いするほかないだろう。
現状の動きを見る限り「鳴神 裁」のリーク動画の通りのことが起きている、このままならメンバー全員の声優が変わり声優変更したドラえもんのような状態になるだろう。


別に今更VTuberの運営についてどうのこうの言う義理も理由もない、今に始まった話ではないからだ。
それにゲーム部プロジェクトはUnlimitedのIPである限りどうこうするにも運営次第だとは個人的に思う、人気商売である限り世間体を気にしたり印象を良くするためにファンに媚びを売るなどは必要だがIP自体をどう調理するのは結局運営次第だ。
もちろん今までコツコツと集めてきたファンを裏切る形にはなる、ゲーム部がここまで大きくなれたのは動画の内容やキャラクターのクオリティーだけでなく声優の貢献も大きくかかわっているのもまた事実、それを運営の独断かつ告知も無しにいきなり変更というのはいかがなものだろうかとなるのも理解できる。
しかしUnlimitedのIPである以上権利があるのは運営、かわいそうの一声でなんとかなるほどビジネスは甘くない。
パワハラ的な部分があったのは恐らく事実であろう、だが嫌なら逃げればいいを実行したのが今回の件という目線で見れば、こういう顛末になるのも納得は出来ないにしろ理解はできるだろう。
起きたことは受け入れるしかないのだ、そして動き出す"新生ゲーム部"をどう見ていくのかは自由だが。

まぁこの顛末に関しては正直どうでもいい、運営とのこじれでの声優の変更なんてあり得る話だしパワハラで変更を余儀なくされたなんていうのも日本の会社のダメな部分がUnlimitedにもあったというだけの話だ。
私の好きなVTuberグループ「真空管ドールズ」も過去一回演者の変更が行われているが、これに関してはファンも時間をかけて受け止めて今やかけがえのないメンバーとして受け入れられている、もちろんここからさらに演者の変更があったとしたらもの凄く悲しいが、運営か演者かの意向で変更が行われても我々には止める術がない、無理に引き留めてグチャグチャになるよりは受け入れた方がスマートだ。

個人的に注目しているのはファンの目線がどこに向けているのかこれではっきりとしたということだ。
バーチャルYoutuberはキャラクターと演者が組み合わさってやっと成り立つ、アニメやゲームの声優のような立ち位置ではなく「本当にキャラクターを演じる必要がある」という部分が演者のウェイトが大きくなってしまうポイントだ。
それが故にか、ファンもキャラクターよりは演者に目線が行く。
しかしバーチャルであるが故にうまい事オブラートに包んだ言葉として「魂」と表現し、中の人トークをうまいこと誤魔化す。
そして今回の騒動の中で気になったファンの言動の一つに「転生先で会おう」に近いニュアンスなコメントがチラホラと見受けられた。
魂が抜けたキャラクターではなく抜けた魂そのものが好きな証拠だ。
そう考えるとVTuberのファンはやはりキャラクターではなく魂の部分を見ているというのが今回の件で浮き彫りになったと言える。
であるなら、それこそVTuberは生主文化の延長でしかないのだろうか?活動そのものの話ではなくてリスナーの求めているものとしてより魂と密接なコミュニケーションの取れる生主的なものが求められてしまうのだろうか?
私達VTuberファンが"バーチャル"を追っているのにもかかわらず魂の所在やありかたを示す"リアル"を知りたがっているというのは中々滑稽だが、それが今の主流であるならきっと目新しいものに発展など出来ないのだろう。
生まれながらの容姿に囚われずにバーチャルに身を落とすことで自らの中身や才能を開花させることが出来るのがバーチャルの強みなんて話がどこかであったが、その文化の行きつくのが現状ならそんなものはリアルと何も変わりはしない。
「バーチャルならではとは何か」というのがバーチャルで何かしら活動する上での永遠のテーマだと思うのだが、これこそ「生主でよくね」とか言われてもしょうがない。
なんとなくそういうのがあるんだろうなという認識からはっきりとそういう目線でVTuberを見ているんだなというのが今回の件ではっきりとした。

「生まれながらにして持ち合わせた容姿が全てではない、だから化粧をしたりオシャレをしたり整形したりバーチャルになることで"魂の姿"となる。」
恐らく魂と最初に表現した元VTuberの言葉がこれだ。
私自身この言葉から本当にバーチャルの可能性を見出せた、バーチャルによってこれから様々な人間の可能性が拡張されていくのかと思うと期待が膨らんだ。
それから1年半が経ち、現状はニコ生文化の延長のような閉じたコンテンツとなっている。
新作のゲームに一斉に飛びつく様は「目新しいことをしている」と言えるが、全く目新しい文化を期待した人間はとっくに去っていった。
バーチャルならではとは何だろうという疑問に今一度目線を向けてみる、結局それは何なのだろうか?
バーチャルの可能性とは何なのだろうか?今まで多くの大手が最初期は禁忌とされていた行為をいともたやすく行い、何故か称賛を浴びているのを何度も目にした。
だがどれもこれもYoutuberの二番煎じ以下だ、なんかダメっぽいけどやったら案外ウケちゃったという程度のものでしかない。
そこを突破してこそ前進したものが見れるのではないだろうか?私はそう考える。

擁護するならゲーム部の件は本当に残念で仕方ない、ことの顛末自体はただ「かみ合わなかった」だけで単純な能力としては演者も運営もかなり強いものを持っていたハズだ、実際に私も楽しませてもらっていた。
ゲームのみにとどまらず、日常系アニメのようなショート作品であったりYoutuber的な食べ物ドッキリであったりと様々な企画で私達を楽しませてくれた、道明寺 春翔はそのカリスマ性で界隈の盛り上げにかなり貢献していたのもまた事実。
今回の件で人気商売の絶対と言えるファンを裏切り信用を無くしたのは本当に痛い損失だろう、失脚したUnlimitedがこのままヘイトを買いながらズルズルとVTuber運営を続けていくのかそれともスパっと切り捨てるのか…どちらにせよ元ファンやアンチから総叩きに合うのは間違いないだろう。
今後どう転ぶのかは全く見えないが、ZIGやおどりざのようなよろしくない展開になることは間違いないだろう。

失ったもの、そして浮き彫りになったもの。
これらを見て過去に縛られ怒りや悲しみに心を染めるのか、それともそこから見えるものを見て自らを更新していくのか。
私達はきっと後者であり続けるべきなのだろう。

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