禍話リライト 禍紀行④ ランドリー娘

『看板を読め』
https://note.com/venal666/n/n7edd56c2b8f4
で語られた、奇怪な交通事故が起きた後にコインランドリーになった空き地。

そのコインランドリーは、この話が禍話で放送された当時も現存していたそうだ。

隣のパーキング同様、他と比較して値段が安い。本来の値段設定だとかその辺についてはよくわからないが、常に『キャンペーン中!』という幟も立っている。

そういうこともあり、この話の体験者である女子大生もある日の夕方、洗濯のためにランドリーを訪れた。

洗濯物を詰め込んだカゴを抱え、店の入り口に向かう。

そこで気がついた。

 

店舗は全体がガラス張りになっている。

その内のひとつ、入り口横の窓に手をついて外を見ている女の子がいる。

 

幼稚園児くらいだろうか。体験者から見てもなかなか可愛らしいと思うような、そんな女児だった。その子がじっと外を眺めている。

お母さんあたりと一緒に来て、退屈だからその間外を見ているのだろうか。

ランドリーの自動ドアに近づいたところで女の子がガラス越しに自分の方を見ていることに気づいた体験者は、その子に向けて会釈をした。するとその子も会釈を返してくれる。

(……可愛いなぁ)

そう思い、店内に入る。

 

しかし、女の子の姿は店内のどこにもなかった。

 

(……えっ?)

女の子もいないし、それどころか保護者らしい大人の姿もない。店内には、体験者以外に誰もいないのだ。

(……疲れてるのかなぁ、だから何か見間違えたのかなぁ。確かに女の子がいたはずなんだけどなぁ)

そう不思議に思いながら、洗濯機に洗い物を放り込む。

ボタンを押し、洗濯が終わるまで店内の椅子に座って待つことにしたのだが、しかしなぜか妙に落ち着かない。どこからか、誰かに見られているような気がしてならない。

何なんだろう、不思議に思っていると別の客がやってきた。

彼女が来店した時点で、他にも稼働している洗濯機があった。そこに洗濯物を入れていた客なのだろう。スリッパを履いた、深夜のディスカウントストアにいそうな、いかにもヤンキーといった風貌の若い女性だった。

そのヤンキー女性は案の定、自分のものより前から稼働していた洗濯機に近づいて行き、

「あ〜、まだか〜」

とボヤいている。

「……あと十五分か〜」

洗濯機のタイマーを覗き込んでそう呟き、彼女は店外に出て行こうとする。

 

「……あっ! ちょっとちょっと、お姉ちゃんお姉ちゃん!」

 

自動ドアを通り抜けようとしたその時、何かを思い出したようにヤンキー女性が体験者に向けて声をかけてきた。

急なことで、まさか声をかけられるとは思っていなかったので体験者は驚いた。

「え⁉︎ あたしですか?」

「そうそう、アンタ、アンタ」

店舗外に出てから火を点けるつもりだったのだろう、タバコを咥えながらヤンキー女性が言う。

 

 

「……ここのコインランドリーね。ずっといない方がいいから」

 

 

そう言ってヤンキー女性は出て行ってしまった。

体験者もそれを聞き、心霊スポットによく足を運ぶと言われるヤンキーがそう言うということは本当によくない場所なのかもしれない、と先刻の女児のことを思い出し、急いでランドリーを出た。

そして洗濯が終わるまで別の場所で時間を潰していたそうだ。

 


この話はかぁなっきさんによるツイキャス『禍話』 『忌魅恐NEO 第一夜』(2020年6月30日)

https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/625554757

から一部を抜粋、再構成したものです。(1:52:30くらいから)

題はドントさんが考えられたものを使用しております。

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禍話リライト ランドリー娘 - 仮置き場 
https://venal666.hatenablog.com/entry/2021/07/16/210213

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