実体験 墓地の話
(はてブロでの)以前の話でも言及しましたが、俺の親父は地元の病院で薬局長を務めていた薬剤師でした。
俺が小学生だった頃、親父は毎週水曜日は当直業務のため、その病院に泊まりこんでいました。
後年、自分が成人して共に酒を酌み交わしている時、話の流れで心霊関係の話になった時にこう言ったのを覚えています。
『三十年ほどあの病院で働いて、一度もその手の体験をしたことがない』
それ故か。子供の頃に各種の番組で心霊特集をしている時。
その手の話が好きなくせに怖がりな俺が後ろに隠れる時、俺の前でまるで盾のようになっていた親父。
Mr.オクレさんのような感じのヒョロリとした風貌の親父でしたが、その時の親父の背中はやけに大きく頼もしく感じたものです。
ただ、そうした話の中で、そんな親父の言ったある言葉だけは今もよく覚えています。
「……ただ、霊安室の見回りに行くのだけは、本当にイヤだったなぁ」
単純に、何となく怖かっただけ。
そう考えるべきだと思うのですが、その親父と一緒に体験し、後年酒の席で、
『何かの勘違いと思うけど、あれは何だったんだろうな?』
と語り合った、そんな体験もあります。
※
『交差点の話』
https://venal666.hatenablog.com/entry/2019/09/28/215433
『夜の見舞い』
https://venal666.hatenablog.com/entry/2019/10/10/161246
そんなこともあり、親父がその手の話をする時は、
(あ、これはマジな話なんだな)
と思ったものです。
そうした親父から聞いた話の内の一つ。
地元にある、Oという駅。
そこから西に進むと、住宅街の中にある自分の実家に二分程度で着くわけですが。
踏切を渡って逆方向へ進んでいくと新興の住宅街、昔からある田園。その先にさらに進むと、企業の倉庫や工場が立ち並ぶ地帯に入ります。
小学生の頃、その辺を通り過ぎた先に仲のいい友達の家があったのでよくそこを通っていたのですが。
ある一角だけ、何故か通過する際に、
『嫌〜な感じ』
がしていたのをよく覚えています。
先述したように工場や倉庫がある、その場所に何故かラブホテルが一件あって、そのすぐ近くには地図に名前も載っていないような、墓石が数個並んでいるだけの小さな墓場がありました。
そのラブホテル近くの墓地の横を通る時だけ、何故か嫌な気持ちになったのをよく覚えています。
何故、その墓地のことだけよく覚えているかというと。
その場所とは別に、実家のすぐ近くには先祖代々の墓のある墓地がありました。
その墓地近くの道というのは、立地の関係もあって、夏の盆踊りや年末年始の行事の際によく通るわけです。
そうして近くを通る時、実家近くのその墓地に対しては、何にも感じない。
だからこそ、そのラブホテル近くの墓地の横を通る時だけ、特に嫌な感じがしたのをよく覚えているわけです。
小学生時代は、
(なんか嫌な場所だなぁ……)
その程度にしか思っていなかった場所でしたが。
成人後、実家で親父と酒を酌み交わしていた時に、話の流れでその嫌な感じのする墓地の話をしました。
すると、親父がこう言いました。
「……わかる。俺も、おばさんの家に行く時、あそこを通るのは嫌だったからなぁ……」
(問題のその道を進んだ先にある、自分の同級生の家。そこからさらに進んだ先に、父方の大叔母の家がありました)
(あ、親父もそうだったんだ……)
そう思っている自分に対し、親父がこう言いました。
「……だって、あそこ。俺が生まれる前の話らしいけど『焼き場』があったらしいからねぇ」
親父からそれを聞いて。
何となく、いろんなものが腑に落ちた気がしました。
というだけの、地元のお話でございます。
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