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前途多難の妊娠出産記(口唇裂編③)

口唇裂を持って生まれてきた娘。出産直後から1ヶ月ほどの様子についての記録です。


■出産直後

お腹の抗菌シートに乗せられる形で我が子とご対面。分娩した病院では2Dエコーしかなかったため、胎内にいる間は表情や顔の造形は分かりませんでした。妊娠時から心積もりをしていたせいか、実際に口元を見ても「あー、こんな感じで割れてるんだぁ」と、そこまで動揺せずに顔を眺められました。

さて、羊水も吐き出して元気な産声をあげる様子を見ながら「泣き声は普通っぽいね、もしかしたら本当に口蓋裂はないのかな?」(口蓋裂児の声を聞いたことがないので分かりませんが…)と夫と話しつつ、その日は早期接触タイムにひと時の触れ合いを楽しみました。

■診察結果

出産翌日に病室で休んでいたころ、ナースコールで「お子さんの症状について先生からお話があります」と呼ばれて慌てて新生児室に駆け付けたところ、例の形成外科の先生が合間を縫って様子を見に来てくれていました。
「唇裂と顎裂だけみたい。口蓋裂や他の合併症はなさそうだよ」とのこと。エコー専門の先生の見立て通りだったようです!

今後の手術は昭和大学の方で検討しており、既に初診という名の相談も終えている旨を伝えたところ、先生も「じゃあそれなら大丈夫だね!」と安心されたようで、それ以上の込み入った話は特にせずそのまま退室されていきました。

■入院中の出来事

正直なところ、口唇口蓋裂について初めて知った頃はネットで症例の写真を見るとドキッとすることもあり、妊娠中は「生まれた子の顔を見て動揺してしまったらどうしよう」と時折不安になりました。
けれど、いざ生まれてきたら上述の通り落ち着いて顔を観察することができ、翌日から授乳に行く度に我が子の可愛さに打ち震え、一周回って特徴的な口元がチャーミングで愛おしさまで感じるようになりました。「親も良い意味で慣れるから」ってこういうことなんですね、形成の先生!!

病院は完全母子別室で3時間ごとの授乳毎に新生児室に行ってお世話をするスタイルでした。新生児室は面会者がガラス越しに新生児が見られるメインのお世話部屋・ナースステーション・授乳室に分かれており、ナースステーションには早産や低体重で保育器に入っている子、黄疸の光線や点滴等の治療が必要な所謂「訳アリ児」のコットが置かれ、うちの子も漏れなくこちらの部屋でお世話されていました。
やっぱり疾患を知らない人が我が子の顔を見たら、当初の自分みたいに驚いたりするのかな?とか考えたり、結局入院中は母乳も軌道に乗れなかったのもあり、一度も表のメイン部屋や授乳室でお世話ができなかったところに一抹の切なさを覚えるのでした…
一方、ナースステーション内でずっとお世話していたことから、スタッフさん達が何かと気にかけてくれたり、色んな機械や設備の様子をじっくり眺められたりして、これはこれで良い思い出ではありました。

■授乳問題

口唇口蓋裂を持つ新生児が最初に直面する壁は授乳問題。唇や上あごの切れ目から空気が漏れてしまうことから吸てつ力が弱く、上手く母乳やミルクが飲めないので、必要に応じて口唇口蓋裂児専用の乳首や哺乳瓶を用いたりします(唇裂や顎裂のみは裂部分を覆う形で乳房に圧迫させることで、直接母乳を飲ませることができたりもするそうです)。

出産翌日の初回授乳指導では、専用の哺乳瓶でも口の端からミルクがよく零れていたので「やっぱり飲むのは難しいのかな…」と思っていたところ、2日目以降はすっかり上手に飲めるようになりました。どうやら本人も吸てつ&嚥下に慣れていなかった様子。まだ生まれて2日も経ってないもんね…
口蓋裂を併発していないのもあるのか飲み込む行為自体は上手いようで、蓋を開ければ毎回規定量のミルクは完食し、泣いて助産師さんにアピールする程食欲旺盛なのでした。授乳時間に訪れる度、「さっきも元気に"お腹空いた"って泣いてましたよ~笑」「いや、ほんと食いしん坊ですみません…」というやり取りから始まるのがお決まりでした。

■母乳orミルク?

若干話は逸れますが、母乳とミルクのどちらで育てるか問題。自身はもとから「初乳はあげたいけど、それ以降は無理ない範囲で頑張れればいいや」くらいのスタンスでした。口唇裂があるため、そもそもミルクをしっかり飲めるか分からないし、今後の手術に向けて体重を増やすことが優先事項であったため、完母育児に強いこだわりはなく。
実際問題、乳房と口を上手く密着させられないのと、私の乳首の長さが比較的短い(らしい)というダブルコンボにより、直接母乳を与えることは殆どできないのでした…

現在は規定量のミルクに予め搾乳した母乳を混ぜる形で飲ませています。分泌量が少ないのか搾乳のコツが掴めていないのか母乳があまり出ず、毎回数mlしか出ていないため、混合授乳というのもおこがましいレベルにしみったれた方法で母乳を与えるのでした。
助産師さん曰く、母乳育児も軌道に乗るのは1カ月くらい時間がかかるとのこと。あまり神経質にならずにこのスタイルを続けていければと思います。

■退院後の生活

退院後は助産師さんのサポートもなく、里帰りするとはいえどれだけお世話は大変なんだろうかと怯えていたところ、我が子は人間アラームが如く、きっかり3時間おきにぐずり始めるため、授乳・おむつ替え・乳房マッサージ・搾乳・寝かしつけがスムーズに1時間くらいで終えられれば残りの2時間は自由に使えています。

ここまで書いて何ですが、口唇口蓋裂児特有の問題がクリアできているどころか、新生児としてもあまり手がかからない子だったので、これ参考になるんだろうか…?という疑問が浮かびますが、まあこんな例もありますよということで…

次回は昭和大学での診察・手術について記載予定です。


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