「いま」にありがとう。

 先日、大切な友人の訃報を耳にしました。あまりに突然のことで、しかも、自分としては久々の、自分と近しい人を喪ったことに、ただただ茫然自失とするばかりでした。

 彼とは小学生の頃に出会いました。当時僕が、クラスの誰かに絡まれていたところを目にして、そういうことはやめろや、と制止してくれたことが全ての始まりだったと思います。

 彼と真剣に仲良くなったのは中学生、同じ部活に入ってからです。といっても部活のことはほとんど話すことはなく、当時お互いに好きだった車の話で盛り上がりました。「うちの車は○○だよ!」とか、「○○って車、かっけーよな!」とか。お互いの大好きな趣味でこんなに語り合えたことが本当に嬉しくて、彼と喋るのが本当に楽しみでした。

 高校に進学し、学校は別々になったものの、TwitterやLINEでのかかわりは続いていきました。そのとき彼に勧められたのがラジオの聴取です。当時いわゆる「ニコ厨」だった彼は、そのニコニコ動画やニコニコ生放送で活躍している人がパーソナリティとして活躍している土曜日のFMの深夜放送をお勧めしてくれたのです。当時、彼は自身のラジオネームで投稿もしていて、「とりあえず聴くだけ聴いてみて、メールテーマも送れそうならやってみ」という感じで勧めてくれました。

 このとき僕は、発想力がまるでなく、しかも車が好きだからという理由だけで、身もふたもなく彼のラジオネームのフォーマットを拝借し、自家用車から由来した「ヴェルファイアのゴールデンアイズ2」という、今も使っているラジオネームを命名しました。これが、今の僕に繋がる、すべての始まりと言っても過言ではありません。

 このラジオネームで初めて、その番組で読まれた瞬間の嬉しさ、喜び、そして彼自身が何よりも「よかったな!!」って言ってくれたこと、忘れられません。

 彼と一緒に、夜行バスに揺られながら、東京で開催された番組イベントに行ったのもいい思い出だし、彼がどんどんと車、自転車のカスタムをしていくうちに、そちら側のお友達とも仲良くなれたのもあります。今も続く関係性も、彼由来のものが多いです。東京に旅したときは秋葉原も連れてってもらったわけで、パソコン、アニメに興味を持てたのも彼のおかげです。今の自分の趣味は、かなりの割合で彼がきっかけなんです。

 その中でも僕はラジオの趣味を特に深化させていきました。今ではFM、AM問わず聴き、アーティストから芸人ラジオまで幅広く聴くようになりました。ラジオきっかけで新しい音楽に触れて、そのアーティストさんのライブに行くようになったりと、ラジオが作ってくれた新しい趣味も多いんです。それも元を質せば彼がきっかけなんです。

 まさに、彼がいなければ、何も始まりませんでした。


 10月9日、僕はOfficial髭男dismのライブ参戦を明日に控え、とても楽しみになっていました。その日の夕方に、僕は、信じ難く悲しい知らせを知ることになりました。

 何も考えられず、ただただ打ちひしがれるだけでした。

 何がどうしてそうなったのかが、全く理解できない。

 同級生の死なんて、もっと爺さんになってから聞くものだと思っていたのに。

 いつか地元に帰ってまた会って、「あの頃あんなこともあったな」なんて話をしたかったのに。

 全く現実味がなく、ただただ衝撃で、放心状態でした。

 人間はあまりに突然のことだと、もはや涙も出ない。

 もう僕は、あまりのことに、とてもライブに行ける精神状態ではなくなってしまいました。そして、全く眠れぬ夜を過ごしていました。

 その時に僕は、信頼している人に、電話で話を聞いてもらいました。全く整理ができず、ただただ彼との思い出や、信じられない、辛いといった、どうにも表せない悲しみを繰り返すだけしかできませんでした。それでもずっと話を聞いてくれたこと、寄り添ってくれたこと、「ライブが楽しくないと思えなくても、それはおかしくないんだよ」と言ってくれたことに、僕はかなり救われました。


 翌日、なんとかメンタルは持ち直したものの、それでも6割くらいしか治らず、このままライブに行って大丈夫かとも思いました。でも、ずっと楽しみにしていた機会だったし、行くことを決めました。

 ライブに行って良かったです。その凹んだ心を、髭男が、音楽が、さとっちゃんのMCが、声が埋めてくれました。辛いことをその時間だけは忘れさせてくれました。辛く悲しい気持ちを持ってライブに向かったのに、それすらもライブは受け入れてくれました。音楽が救ってくれたのです。やり場のない気持ちを、思いを、髭男が受け入れてくれたのです。

 この髭男のライブに行ったのは、ロヂウラベースというラジオがあったからなのですが、ラジオという趣味を考えると…やはり、彼がいたからこそなんです。遠い遠い要因ではあるけれど、彼がいたからこそライブに行けたようなものなんです。


 彼と会えなくなってしばらく経ちましたが、少しずつ実感が湧くにつれ、悲しさが襲ってきて心がしんどくなることもあります。

 でも、このままつらいつらいということが、果たしていいことなのか。

 今の僕は、やりたいこと、やらなきゃいけないこと、会いたい人、いきたいところ、たくさんあります。

 それに向けて、一生懸命生きること、彼が与えてくれた大切な趣味を、これからも守り楽しんでいくこと、それこそが、彼に対する供養とまでは言わずとも、自分が今できることなんじゃないかなって。

 関わりはもうすでに過去のものになるかもしれません。でも、彼が築いてくれた僕の趣味や人間関係は、今も続いているし、これからも続きます。そして、趣味に関しては、これからも花開いていくものだと思います。

 だから、「今までありがとう」じゃないんです。今も、そしてこれからも続くものだから、「今というこの時をありがとう」と、心から言いたいんです。

 生きていく限り彼のことは忘れません。それは、常に彼のことを思って生きていくということではなく、彼が僕に与えてくれたものを、これからも全力で楽しんでいくことを意味します。

 これからもラジオ、聴いて行きます!!


 お前が教えてくれた趣味、めっちゃ楽しいよ。

 これからもこのラジオネームで、投稿していくから。


 ありがとう!!じゃーね!!!

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