【メカニックの日常】#3 乗り心地や剛性は何なのか?理論をお話しします

どうも!メカニックのチャーリーです♪(´ε` )
特にスポーツ車を販売する謳い文句に、「最高の乗り心地」や「前年より剛性が⚪︎%上がった」とか自転車メーカーはアピールしています。

その「乗り心地」と「剛性」について理論的に話していこうかなと思います!

まず剛性を話するには強度の話もしなくてはいけません。剛性は実は何種類かあり、力のかかるベクトルによって名前が分けられています。

・曲げ剛性
・ねじれ剛性
・軸剛性(伸び剛性)
・せん断剛性

次に強度は物の強さがどれくらいなのかを表現するのに用いられる為、素材そのものを実験として伸ばしたり、潰したり、ちぎったりと物が壊れるまでどれだけ耐えられるかを試したものになります。よって、以下のように

・引張強度
・圧縮強度
・せん断強度

というものがあります。伸ばしたり、潰したり、ちぎったりした時に壊れにくいものは強度が高く、すぐ壊れてしまうものは強度が低いとされます。

例・スーパーボールとガラスのビー玉を高い所から落としたら恐らく割れるのはビー玉ですよね?
つまり、強度はスーパーボールの方が高いと言えます。

自転車にかかる力は縦・横・斜め・ねじれといろんな方向に力がかかってます。
走ってる最中にフレームはしなったり、捻れたりを何万回と繰り返しています。しなったり捻れたり繰り返しながら元に戻るのも何万回と繰り返してます。
その「どれだけ変形して抜力した時に物質が元に戻るか」
これがいわゆる

「剛性」


の正体であり、
「物を引っ張ってどのタイミングで壊れるのか試した時に中々壊れるのに時間がかかった」
これが

「強度が高い」

という事です。

「剛性は変形のしにくさ」
「強度は物の破壊のしにくさ」

と覚えると良いです。
また例えると、スーパーボールとビー玉。剛性が高いのは硬いビー玉ですが、ハンマーで叩くと恐らくビー玉が割れ、スーパーボールは弾んで生還する予想が出来る為、強度はスーパーボールの方が高いことがわかります。※ややこしい話してゴメンね!

次に「しなり」について話していきます。しなりが活きる事で、自転車の推進力になったりクッション性が生まれたり、自転車の動作には欠かせないものです。

まず、同じ質量で同じ太さの2本の棒があるとします。
果たして、長い棒と短い棒どちらがよりしなるでしょうか?
恐らく、

長い棒の方が良くしなる
短い棒の方はしなりにくい

と想像出来ると思います。

次に、同じ質量で同じ長さの2本の棒があるとします。
太い棒と細い棒どちらがよりしなるでしょうか?
恐らく

細い棒の方が良くしなり
太い棒の方がしなりにくい

と誰もが想像出来ると思います。
このごく普通の事ではありますが、自転車にも同じ原理が働いています。

自転車フレームを良く観察すると、短い部分や長い部分、太いフレームもあれば細いフレームもあります。
特に、アルミとカーボンは太めに作られており、スチール系のクロモリロードなんかは見た目が細いのが主流です。
アルミやカーボンは太めのパイプなので、体重をかけた時の変形量が少なく、剛性が比較的高いと言えますが、スチールはどうしても細く作る為、強度を高める作り(補強やパイプの厚みを増す)をしない限りは剛性はアルミやカーボンに少し劣ります。
ただ強度はカーボン繊維がズバ抜けてるのを除けば、アルミより鉄の方が強度が強く、引張強度はアルミの約1.5倍、硬さは約2倍、そして密度は約2.9倍で鉄の方が質量はあるが、アルミよりも強度が高く丈夫です。

対してアルミは、鉄よりも弱くたわみに関しては3倍という凹みやすい性質なのに対し、鉄の3分の1の質量と鉄よりも加工がしやすいという特性があり、他の金属と混ぜたり加工する事で強度と剛性を高く出来るのが強みです。それでも鉄の方が強度は高いですが、加工でカバーできるという感じです。

この加工の問題は密度の高い鉄鋼の方がアルミ合金よりも不利です。どうしても加工の自由が効かず細身のパイプを使わざるえないからです。先程も話したように、細いと良くしなり、振動を去なしたりクッション性も高い変わりに、剛性が低く、力を加えて変形して戻る動作に粘りがあり、結果的にアルミやカーボンみたいなパリっとした加速が少ないのも特徴です。

アルミ合金はパイプを太くする事が出来るので、他の金属系のロードバイク等の自転車の中では軽くて剛性の高いフレームを作る事が可能です。

強度の順番としては
アルミ合金<鉄<カーボン繊維

スポーツ車の剛性の高い順番としては加工の自由度順に
鉄<アルミ合金<カーボン繊維

という感じです。

より加工の自由な素材の方がパイプを太くする事が可能であり、軽量かつ剛性も高く、適材適所に剛性をコントロールする事が出来ます!

乗り心地は細身の鉄鋼フレームに軍配が上がりますが、剛性と軽量に関してはアルミとカーボンの変幻自在な素材には鉄鋼フレームは敵いません。
特にカーボン繊維は圧倒的な価格に加え、圧倒的な強度と軽さと加工のしやすさがある為、素材だけであれば今段階でカーボン繊維に敵う素材はないと思います。

更に素材には

振動減衰性

というものがあり、簡単に言うと素材の元々持っている振動を吸収する能力の事をいいます。

カーボン繊維で作られたフレームは振動減衰性が他の金属系フレームよりも優れています。
その理由としては、

カーボン繊維は繊維であり布ではないけど布の仲間
鉄やアルミは金属分子の集合体

布と金属の塊、どちらが柔らかそうかというと恐らく布って答える人が多いと思います。
布の方が衝撃を受け止めた時に振動しにくいのに対し、金属みたいに衝撃を受けると振動がダイレクトに伝わるのが想像出来ると思います。
つまりは、カーボン繊維のフレームの方が金属のアルミや鉄よりも衝撃を緩和する事が出来る素材という事です。
アルミと鉄はどうなのかというと、先程の密度や比重の割合が鉄の方が高い為、素材的にはアルミの方が振動を伝えやすく鉄の方が振動を伝えにくいという事です。
しかもカーボンは何十トンという力で引っ張ってもちぎれる事が少ない素材で、素材が強くて振動にも強くそして何より軽いというロードバイクやスポーツバイクには持ってこいの素材です!
ただし、価格は高い…

振動減衰性の大小は
アルミ<鉄<カーボン
の順番です。

振動を緩和する能力は素材だけではなく、フレームの形状とパイプの長さや形状が影響します。乗り心地に関していうと

しなりやすいフレーム=乗り心地の良いが速度は出しにくいフレーム

しなりにくいフレーム=乗り心地は悪いが速度を出しやすいフレーム


+素材の特性、パイプの形状と太さ

これが、基本的な乗り心地の理論になります。とはいえ、実際には乗らないとわからないのが自転車の面白い所。しなりにくいフレームでも乗り心地が良い自転車も世の中にはあります。
あとは曲線が多いフレームと真っ直ぐのパイプのフレームだと真っ直ぐのパイプのフレームのほうが変形しにくく、固いけど踏んだら進む傾向があります。その代わり、乗り心地は悪くなる傾向もある為一長一短です。曲線が多くても素材として強度が凄く高いものは良い乗り心地を得られるだけでなく、高い剛性を得る事が出来ますが、硬い素材を使うと振動もダイレクトに伝わりやすく、曲線が多いからといって乗り心地が良くなるとは限りません。

剛性や乗り心地は素材の特性とフレーム形状の創意工夫で変化する。

という事です。

なので、結論で言うと、最終的には乗ってみて比べてみないとわからないんです。(ここまで引き伸ばしてすみません(>_<))
この剛性や乗り心地の考察は、もっと深い上キリもないので、今回は触りだけを説明させていただきました。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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