寝入りばな
お風呂上がり、冷蔵庫を開けると炭酸水が残りわずかで横たわっていた。
冬など関係なく、お風呂上がりは冷たいものが飲みたくなる。その位置にくる一番最適解なものがビールなことは言うまでもない。しかし今、我が家にはそれがない。
お風呂上がりの爽快感を与えてくれるものは頼りない量の炭酸水を化かすしかなかった。中くらいのグラスに炭酸水を注ぐ。そこに氷をガサっと入れてかさを増す。そこに目分量で瓶の【翠】を注ぐ。完成。とりあえずの応急処置はできそうだ。
今日は寝る前にゆっくり本でも読もうかと本棚の前に座り込む。どうせ数ページ目を通してからスマホを触ってしまうだろうなと思いつつ、丁寧な暮らしを意識している私は寝る前の読書は形だけでも欲していた。
選びながらさっき作った【翠】を一口。「濃い。」目分量で入れたことが仇となった。しかし熱った体を癒し、今日を締めくくるお酒は今はこれしかない。喉がキュッとなるような濃さに目を細めながら一口、また一口と進めていく。
そして今まさにそれをしている最中だ。濃さゆえにどんどん体の奥が熱くなっていくのがわかる。この熱くなり方だと、本は枕元に持っていくだけで読まずに朝を迎えそうだ。要するに布団に入ったらお酒による睡魔の到来で眠ってしまうということである。
家から一歩でたくらいの位置にコンビニがあれば多分ほぼ毎日行ってしまうだろう。それがあればこの濃い【翠】で対処することもなく、てくてくビールを買いに行ったに違いない。あとついでに炭酸水も買うだろう。
家から一歩でなくても徒歩5分ほどのドラッグストアにほぼ毎日行っている。特に大した用事ではないことをさも大したことであるかのように何かを求めて行っている。結局、お菓子やらアイスやらを買い着々と脂肪を蓄えている。
1ヶ月前にくらいにビールを箱買いした。その日からの生活は華々しいものだった。家に帰るとビールが冷えている。そんな心ウキウキワクワクすることなんてない。全自動で冷えているみたいな言い方をしてしまったが仕事に行く前にせっせと自分で冷蔵庫に4本くらい詰めなければいけないので全く全自動ではない。私の地道な努力の賜物が数時間後の自分に幸福を与えているだけである。
ガサっと入れた氷もほとんど溶けてしまったがまだまだ薄くなる気配はない。泣く泣く水で薄めて寝る前にごくごく飲んで選んだ本と共にすやすや寝ようと思う。
チキン南蛮定食をたべます。