見出し画像

『ハイライフ八ヶ岳2022』のオフィシャルWEBにおけるアクセス解析を元にしたチケット券売やSNS広告について

VEJは、WEBと映像の制作会社なので、ハイライフ八ヶ岳という音楽フェスを通じて、いろいろ挑戦してきたことの一つに今年、7月末から週に1度オフィシャルサイトのアクセス解析をVEJ樋泉舞子ことマイコハンに行ってもらっていたのである。その解析結果を一部公開したいと思う。

オフィシャルサイトからのチケット購入。
クリック数と実販売について

オフィシャルサイトのコンバージョンは、言わずもがなチケットの券売である。ハイライフのチケットは、オフィシャルサイトから各種プレイガイドへリンクさせることで販売している。
そこで今回チケットページに記載されている各種プレイガイドへのリンクボタンに解析パラメータを仕込んでいた

パラメータを仕込んだボタン

このボタンをクリックしたかどうかの数を数える。その先は各プレイガイドのWEBサイトなので、実際に購入したかどうかまでは数値を取ることは出来なかった。しかしながら、実際にプレイガイドで売れた実販売数は週に1度報告を受けていた。なので、クリック数と実販売数を解析することは可能である。そのグラフが以下である。

2日通し券のクリック数と実販売数
9/10日券のクリック数と実販売数
9/11日券のクリック数と実販売数

まずは見てわかるようにクリック数に対して約40%くらいの実販売数である。

時系列でのチケット購入の遷移

時系列でみていくと、第1弾のアーティスト出演発表が開催1か月半前(7月20日)で、まだ日割りを発表していない時期は、2日通し券のみが動いている状況。

チケットボタンのクリック数は、現状日割りが発表されていない為か、2日券のクリックがメイン。日割りだとやや1日目が多い。ページビューに対するチケットボタンのクリック率は0.4%興味はあるがまだ様子を見ている顧客が多い?

マイコハンの考察

開催1カ月前(8月10日)、第2弾出演発表と共に日割りの発表をすると、1日券が動き出した。

チケットクリックは、前週と比較して約2倍に上昇。特に2日目のクリック数の上昇が目立つ。チケットの売れ行きを見ても同傾向。 実際のチケット販売数に対するチケットボタンのクリック率について、2days券はほぼ100%、10日券と11日券はそれぞれ40%であり、 1日券チケットボタンに進んでも半分以上のユーザーがコンバージョンに達していない。

マイコハンの考察

開催20日前(8月21日)からSNS広告がスタート

チケットボタンのクリック数は前週と比較して大きな変動はないが、全体的には1日券のチケットボタンクリック数が前週から徐々に増えており、それに伴ってチケット実販売数も徐々に増加している。 1日券のチケットはクリックに対して約35%の成約率。 先週に引き続き、チケットボタンのクリック数もチケット実販売数も9/11の方が多い。

マイコハンの考察

開催15日前(8月26日)、最終出演発表と共にタイムテーブルの公開
そこらへんで横ばいだった購入数が伸び始める。
次に伸びたのは開催約1週間前だ。

チケットボタンのクリック数は前週と比較して全てのチケットにおいて増加。特に9/11が伸びている。 それに伴ってチケット実販売数も増加。 チケットボタンのクリック数に対するチケットの実販売数は前週と比較して、2日券と9/11券で大幅に増加。 チケット実販売数に対する駐車場券の販売数が若干少ない印象。(特に9/10が1台当たり4人以上)このことから買い忘れ防止も含め、駐車場券の販売促進をSNS上で行う

マイコハンの考察

そして開催1週間前から当日まで

最終週でチケットボタンのクリック数、実販売数共に増加。特に9/11が最後まで伸びた。 駐車券の購入も増加。開催前に公開された駐車券の購入を促す記事も200以上閲覧されている事から、直前に購入した人も多かったと思われる。 2日券と9/11券は開催2週間前からクリック数が特に増加しており、開催が近くにつれ各種コンテンツも増え、興味を持つ人も増加していったと考えられる。

マイコハンの考察

といった感じで、総ページビュー数におけるクリック数は0.7%。そこから実販売数は40%なので、0.3%がページビューにおけるチケットの販売される割合という結果だった。
チケット購入に効果的だったポイントは、
◆出演アーティスト発表
◆タイムテーブル発表

音楽フェスなら当たり前だがこの情報が一番チケットが動く結果となった。


参照元からオフィシャルサイトへの流入を解析する

続いてチケット購入に至るまで、オフィシャルサイトへの流入経路を解析する。
その結果が以下のグラフだ。

参照元の推移

見てわかるように一番の流入元はGoogleを始めとするWEB検索である。
実は俺が一番驚いたのはこの結果である。
もしかしたら当たり前なのかもしれないけど、通常VEJが取り扱う、中小企業やお店のWEBサイトは、SNSからの流入がほとんどである。
「SNSがあればWEBサイトなんていらないでしょ。」なんて言われることは珍しくない中で、WEBサイトとSNSで差が出ると思っていなかった。
もちろん情報の伝達は、SNSがファーストタッチであることが多いと思うが、改めてWEBサイトがあるかないかの重要性を感じることが出来た。
そういう意味だと独自ドメインによるSEO対策もいまだ大きな役割を果たしているだろう。

Googleでの直接検索が多いが、SNSの流入ではTwitterが最も多い。(他のSNSと比較すると倍以上) おそらく、Twitterには直接URLが貼れること、リツイート機能があり他者に拡散しやすい事が要因と考えられる。

マイコハンの考察

またSNSの中でもリンクが張れるという点において、Twitterからの流入が多い。instagramもストーリーズでリンクが設置できるようになったとしてもだ。きっとインスタで見て自然検索するパターンも多くあると思う。

そして、この解析には8月28日からtwitter、META(instagram、facebook)を含めたSNS広告の結果も含まれている。

META(Instagram、Facebook)の広告設定

METAで広告を出した期間は、開催までの2週間
広告の種類は、「カルーセル広告」「動画広告」の2種。

カルーセル広告:キービジュアル、出演者、タイムテーブル
動画広告:4:3の動画と開催概要のテキスト
動画広告:縦長の動画

クリエイティブで心掛けたのは、このストーリーズの動画である。
可能な限り文字情報を少なくし、いかにも”広告です!”というよりはハイライフが楽しい音楽フェスであることを動きだけで表現したことだ。

広告の設定は以下のとおりである。
それぞれ1日の予算は¥5,000。予算に関しては適正かどうかはフェスの広告予算によるだろう。
年齢は20~50歳。
興味関心は、アウトドア、コンサート、音楽、アート・音楽、音楽フェスティバル、J-POP、ヒップホップ、サマーソニック、ライブ、フジロックフェスティバル、キャンプ、登山、グルメなど。
エリアは、山梨、長野、愛知、千葉、東京、神奈川、埼玉、静岡
といった感じの設定だ。
そうして行った結果は以下である。

METAの広告結果

消化された金額は設定の約50%。クリック数は4254なので総セッション数と照らし合わせると大体15%、METAからの割合は約40%がSNS広告からオフィシャルサイトへの流入だった。
カルーセル広告と動画広告をもう少し比較してみると、インプレッションはカルーセルが多いものの、消化金額・クリック数はどちらも同じくらいだった。

注目すべきはプラットフォームの差異である。

カルーセル広告のプラットフォーム
動画広告のプラットフォーム

カルーセル広告はInstagram、Facebook同等だが、動画広告は圧倒的にInstagramが多い
またもう少し細かい配置でいうと、カルーセル広告は、Facebookは主にフィード、Instagramは、主にストーリーズでその半分がフィードである。
また動画広告に関しては、ほぼInstagramのストーリーズだった。
つまり、総じてカルーセルでも動画でも効果が高いのはinstagramのストーリーズであることが分かる。で、クリエイティブの観点から言えば、ストーリーズは縦長なので、縦長の画像や動画に注力すべきだと思う。

またもう一つ注目すべきは、動画広告(主にインスタストーリーズ)の年齢と性別の分布だ。

動画広告の年齢と性別の分布

見てわかるように圧倒的に女性が多い。そこはInstagramという特性上、女性の利用者が多いからかもしれない。
ちなみにカルーセル広告はこちら

カルーセル広告の年齢と性別の分布

男女比は変わらないが、Instagramが多い動画広告に比べて、年齢層が上がった。設定自体は20~50歳なので、35~50歳くらいに一番リーチしていたことが分かる。これはハイライフの例年参加してくれるお客さん層と同じである。

Twitterの広告設定

続いてTwitterだが、広告設定はMETAと同様に設定を行った。

結果はインプレッション数186,287、消化金額は¥64,862、クリック数は568、単価は114円だった。
総セッション数と照らし合わせると大体2%、Twitterからの割合は約5%が広告からオフィシャルサイトへの流入だった。
つまり、Twitterは単価も高い上に、METAに比べるとあまり効果を感じることが出来なかった。それでもSNS流入からの割合で見ると、Twitterは広告よりも同期間に行った広告施策としてはRTキャンペーンの方が効果的だったと考える。

カルーセル広告ではFacebookとInstagram共にフィードやストーリーズのインプレッションが最も多く動画広告ではInstagramのストーリーズが圧倒的にインプレッションされている(リールの10倍以上)。リンククリック単価は15円〜20円。 TwitterはMetaと比較すると同コストでのインプレッション数は多い(2倍以上)が、インプレッション数に対するクリック率が低く、リンククリック単価は90円ほどと高い。コストパフォーマンスではMetaの方が良い。 Twitter、Metaどちらも開始してから250以上のリンククリック数を獲得している。

マイコハンの考察

最終的にはSNS広告を始めた期間で約15%がMETAからの流入。Twitterは、約2%だった。ざっくり1/5がSNS広告からの流入という結果だった。
もちろん広告予算を増やしていけばそれ以上だったかもしれない。しかし注目すべきは、カルーセル広告はフィードに特化し、動画広告はストーリーズに注力すべきという点だと思う。
以上がSNS広告の考察である。

SNSの運用に関して

広告以外のSNS運用に関していうと、実は8月中旬くらいからほぼ毎日のペースでPRの土田さんがInstagram、facebook、Twitterの投稿を行ってくれていた。投稿の内容は、主に以下。
◆オフィシャルサイトのニュース引用
◆出演アーティストの静止画投稿
◆出店者の動画・静止画投稿
今でも各SNSをみてもらえるとどんな投稿だったのか確認することができる。
Instagram
Facebook
Twitter

Instagramでリーチ数の高い投稿

という感じで、音楽フェスらしく出演アーティスト情報の投稿が上位を占めている。ちなみにストーリーズは開催当日のリポストしたものが上位を占めている。なのでリポスト?シェア?されたストーリーズもリーチさせるという面では効果があるだろう。
また今年のハイライフでチャレンジしたことの一つに出店者の情報を丁寧に投稿したことだ。マイコハンが自ら店舗に訪れて動画を撮影し編集するなどを行った。地域の店舗に根付いたファンが必ずいる、その力を拝借したのである。

続いて、Twitterで最もインプレッションの多かった投稿はコチラ

タイムテーブル・出演アーティスト情報は強い投稿ということだと思う。

SEO対策について

続いて最も参照元とされた自然検索の対応については、まずGoogle Search Consoleから検索結果のクエリ情報をみると以下の通りである。

Google Search Console

当たり前の結果なのであまり見ても驚きはない。
基本的なSEO対策でいうと、VEJのWEB制作会社なので内部的な対策はもちろん行った上で、音楽フェスのサイトとして、WEBページ量産できる部分といえば主にニュースである。SEO対策としてページ数がどこまで考慮されるかは最近分からないのだが、無駄なニュース記事は必要以上に作らず、今年のハイライフではニュース記事に厚みを持たせるためにWEB上の記事コンテンツを企画した。

こういった特集記事である。そうしてニュース記事に加えてWEBサイトとしての厚みを出した
もうひとつ施策したことは、トップページとフェスページ(LPページ)を分けたことだ。

普通はトップページにフェス情報をふんだんに盛り込む。
しかしながら、ハイライフのサイトは、トップページは軽く作り、LPページはほとんどの情報を盛り込んだリッチなページとなっている。
これはトップページでの離脱率を減らしたかったということと、LPページでは今までのハイライフとは差別化を図るべく、コンセプトからの出演アーティスト出店情報と伝える順番が大事だと思っていたからだ。
結果、アクセスの動向をみると、8月段階ではトップページのアクセスが多く、徐々にLPページからのランディングが増えていった。
結果としてSEO対策になったかどうかは分からないが、コンセプトの周知にはなったと思う。

以上がオフィシャルサイトの参照元に対する施策で、最終的な考察結果はこうだ。

9月以降、自然検索が特に増加。その他SNSではInstagramからの流入が増加。 ほとんどの期間において、Twitterが各種SNSの中で最も多い流入元であった。 Meta広告ではカルーセル広告において、Instagram・Facebook共に、主に年齢35-54の男女へ多くリーチした。 動画広告では主に年齢25-54の女性へ多くリーチした。こればプラットフォームがほぼInstagram(ストーリーズ、リール)を占めていたためと思われる。 実際の来場者も親子連れが多く、リーチ層とマッチしていたと思われる。

マイコハンの考察

アクセス解析から見る今年の成果

ここまでが今年のハイライフで行ったアクセス解析と券売への考察である。
もちろんネット広告の他にもチラシやポスター、ラジオをはじめとするメディア広告なども行っているので、これまでに書いた広告以外の効果も自然検索への結果として含まれているだろう。
ここらへんの話はマーケティングのプロからしたら当たり前の内容かもしれないが、今年のハイライフは、何よりプロモーションの期間が短過ぎたということ、短期決戦のために週に一度、アクセス状況と券売状況を見ることで、プロモーションに活かすことが出来たと思う。

そして、券売についてだが、実はインターネット上のチケット販売の他に、もう2つハイライフではチケットが存在する。
それは当日券とコミュニティチケット(ローカルチケット)と呼ばれるものだ。
コミュニティチケットとは、主に出店者に配布され出店するお店で、お客さんが入手することができる。ハイライフは大半が県内の実店舗を構えているお店なので、チケットを求めてお店にお客さんが訪れてくれることもあり、ハイライフとしても出店者としてもウィンウィンな販売方法である。地域貢献にもなる。
これは例年あったチケットだが、今年は販売方法を事前支払いから当日受付支払いに変更した。これはコロナ禍で第7波が迫り来る状況の中、ギリギリまでお客さんが来場するかどうか検討することが出来るようにという配慮からだ。しかしながら、当日までチケット販売数を把握しづらいという点もあった。

そして、最終的な券売結果だが、驚いたことにプレイガイドの販売と同じくらい当日券とコミュニティチケットが売れた。
そう、約半分のチケットが当日売れたのである。また小中学生のチケットも想定より多く売れた。

何故、そこまで当日チケットが動いたのか。
天気が良かったかもしれないし、コロナの第7波が落ち着いたせいなのか、こればっかりはネット上の解析では分からない。
ハイライフは人数で言うと1,000人前後の小規模イベントではあるものの、俺はこの短期集中型プロモーションの成果であり、1番は出店者を含めたローカルコミュニティの口コミ力だと思っている。
VEJの生業は主にインターネット上だけど、リアルの強さを改めて感じたのである。

また、音楽フェスはもちろん出演アーティストに惹かれる部分が大きいと思う。でも、フェスティバルイベントはいろんなコンテンツを楽しむことができる。
それをより熱量持って伝える事で、ハイライフが今年挑戦した"WANDERLUST"というコンセプトや"発酵"をはじめとするコンテンツなど、少しでも興味を持ってもらって、行ってみたいと思わせることは、WEBや映像をはじめとする広告がもつ最大の力なんじゃないだろうかと。

結果として満足の行くチケット券売数だったかというとそうではない。もっとたくさんの人に来てもらいたかったのは正直なところだ。
そもそも山梨は人口が少ない。
地方と都市でプロモーション方法が違うのは想像ができる。
こういった機会を通してそのカラクリをVEJなりにこれからも紐解いていきたい。

ネットとリアルを行き来し、ローカルで活動するVEJ山梨オフィスにとってこういった解析が、音楽フェスに限らず、WEBや映像の制作会社として、地域の活動に活きてくると信じている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?