第18回書き出し祭り 南雲さんを探せ

 書き出し祭りの常連であり、twitterでお世話になっている南雲 皋さんが作者予想を募集されていたので、挑戦してみました。

 女性向け作者さんかと思いきや、ホラーなどダークな作品も書かれる南雲さん、当てるのは難しそうですが……検証してみましょう。
 まずは、過去の書き出し祭り作品や小説家になろうに掲載中の作品を見て気付いた南雲さんの特徴は以下の通り。

・あらすじの段落下げはなし
 過去作のジャンルに関わらずすべてそうだったので、これは有力な情報になりそうです。……と思ってたら悩まされることになったのは後述します。
・場面転換の記号
 
第16回および書き出しコロシアムにて、「---」を使用されていたので、これは特徴的では!? と思ったのですが、第15回は違う記号でした……。過去作でも「■」「◆」など気分や雰囲気によって(?)使い分けされているようです。過去の記号と被っていたら傍証になるかも、くらいでしょか。
・⁉︎
 書き出しコロシアムにおける南雲さん作品のタイトルは「婚約破棄されたので魔女に戻って自由になるはずが、何故か隣国王子の婚約者にされました⁉︎」でした。「!」「?」を続けるのではなく、一文字で表現するのはやや珍しいかと思ったのですが、別の作品では「!?」という表記も使っていたのでやはり決め手にはならない様子……。ただ、「?!」という表記にあえてすることはないんじゃないかなあ、と思うので(これはこれで少数派の表記な気がします)、1-04、1-09、1-15、1-18は除外できるんじゃないかと思いました。
・ルビが丁寧
 難読語や独自用語に限らず、画数多めの単語や迷いそうな表記(人気(ひとけ)など)には丁寧にルビを振ってくださっている印象でした。読者フレンドリーな姿勢で素晴らしいです。また、現代ものでは人名には必ずと言って良いほどルビが振ってありました。よって、人名にルビが振っていない1-07、1-16、1-17は除外できそうです。
・──の使用頻度は低い
 過去作を見た印象です。ほとんどない、くらいに使っていない印象ですね。一方で、「……」の使用頻度は普通ていど、でしょうか。「婿入りの宴」などシリアス・ハードな作品ではあまり使っていませんでしたが、女性向け恋愛ではあるていど頻度高めのようです。……この項目も悩みの種になるのですが、詳細は後ほど。
 なお、1-5は「--(ハイフン)」でダッシュを代用するという、これはこれで特徴的な表記にしているので除外します。(これをヒントに作者を特定できそうな気もしますが、ほかの方にお任せします。)
・あくまでも第一話として書いている
 当たり前のように見えますが、書き出し祭りの参加作品の中には掌編として十分オチがあったり、連載時には恐らくつけないであろう次回予告・総括的な文章で〆ていたりする作品が意外とあります。その是非や効果のほどはさておき、南雲さんの過去作ではそういったヒキはなかったように思いました。
 具体的にはどういうのを言っているのかというと、例えば奇しくも同じ構文「知る由もなかった」で〆ている1-03、1-23はあるていどオチをつけつつ、今後の展開を予感・予想させようとしているという点で南雲さんっぽくないのでは、と思うので除外します。1-24も同じくです。

 これであるていど絞れてきましたね。さらに候補を絞るため、前回の記事で作者予想をしている作品はとりあえず確定済として扱って考えないものとします。また、南雲さんのさらなる特徴である「会話と地の文の間に空行がある」を考慮して残った作品は以下の通り。

1-01 Me et eam falsam accusationem fugae
1-02 絶対正義が異界を裁く
1-08 ロッティンガプル
1-09 異世界追放された悪役令嬢と冒険する?
1-10 メスガキ探偵と監獄女学院
1-11 ヴァイオレット・シュガーナイト 〜魔女と飼い人〜
1-13 俺と彼女たちのハート争奪戦
1-19 アウトロは雨催いの残照の中で
1-20 桜子お嬢様は政略結婚相手に俺をご指名です
1-22 魔王討伐村『こっそり』運営記~大賢者シドの三百年~
1-25 妹の婚約者を盗りました。なぜならその男は結婚詐欺師だからです。

 なお、南雲さんは第一会場の投票候補を公開していらっしゃいますが、作者予想募集後の呟きでもあり、フェイクの可能性があるので考慮しないこととします。

 さて、ここからどう絞るかですが。
 とりあえず1-11については、雰囲気的には南雲さんでもおかしくはないのですが、twitterで言及されていたので違うかなあ、と除外します。匿名企画で自作に言及することはあんまりないはずですし、こういう内容なら手元の原稿で検証できるはずですし……。あと、全体的にルビが振られていないのも違うかな、要素でした。

 また、1-10は東雲藍さんじゃないかなあと思ったので除外します。ミステリ+αという題材に加えて、書き出しコロシアムで「人間(期限付き)」に投票されていたのを確認したので、性的なネタにも抵抗がないと予想しました。また、ダッシュが私の登録(──)と違って「――」な点、数字を全角で表記する点も過去の作品と共通していたのでそうかな、と……。

 で、さらにヒントを求めて南雲さんのtwitterを辿ったところ、こんな発言を見つけました。

 書き出し祭りの作品順=提出順なので、若い番号では「ない」のではないか、という予想は可能ですね。この発言自体がフェイクだったらもう何も分からない。という訳で、1-01~1-09は除外します。私の経験上も、募集開始と同時に提出して1-10前後になることが多かったので、何かしらやり直していたとしたら、それ以降になるのではないかと思うのです。

 さらに、1-13は「────」とダッシュを4つ連続させる表記が南雲さんではないので除外。1-20は、主人公が空手の使い手なのですが、南雲さんの過去作品でアクション要素はあまりなかったと思うので除外。また、年齢をアラビア数字で表記しているのも、漢数字を使っている南雲さんとは違うと思います。

 そうすると下記3作品になりますか……それぞれ、南雲さん要素・違うかも要素を並べてみましょう。

1-19 アウトロは雨催いの残照の中で
南雲さん要素
・ルビの頻度が南雲さんっぽい
・ヘビーな作品も書かれる、知ってる
違うかも要素
・あらすじが段落下げしている
・あらすじが「これは~~の話」で終わる形式は過去作では少ない(なくはない)
・男性主人公は過去作では少ない(なくはない)
・会話文と地の文の間に空行がない箇所がある(これは文字数が厳しかったのかも)
・──の登場頻度が高い

1-22 魔王討伐村『こっそり』運営記~大賢者シドの三百年~
南雲さん要素
・あらすじが段落下げしていない
・副題をつけるとき、前半部分と~の間にスペースを入れない
違うかも要素
・ルビの頻度が低い
・男性主人公は過去作では少ない(なくはない)
・キャラの姓・名を=で繋いでいるのが過去作と違う
・──の登場頻度が高い
・呪文を唱えるタイプの魔法があるファンタジーはあまり書かれない気がする……。
・地の文が「……。」で終わるのは過去作品ではあまり見かけない

1-25 妹の婚約者を盗りました。なぜならその男は結婚詐欺師だからです。
南雲さん要素
・ルビの頻度が南雲さんっぽいかも(1-19のほうが丁寧ではある)
・第15回で死に戻りものを書かれていた(同じジャンルでまた書くだろうか? という疑問も発生する……)
・第一会場トリだったら「そこか~」って言うかも
・最終候補の中では唯一女性主人公
違うかも要素
・あらすじが段落下げしている
・──の登場頻度が高い

 文体について言えば、3作品とも適度な改行があり、情報開示もスムーズ、キャラを見せつつストーリーには適度な重さや苦みもあり──と、どれも南雲さんでおかしくないように思えます。あえて一番に除外するなら、「違うかも要素」が多い1-22でしょうか。でも、そうすると南雲さんの特徴として最初に認識した「あらすじの段落下げなし」「──は使わない」が揃った作品が最後の二択に残るんですよね……。これは、ここまでの推理が根本から間違っていたのでは? と不安になりますね。でも、せっかくここまで考えたので、推理は合ってる前提で考察を進めます。

 そして。うーん、ルビの使い方は1-19のほうがぽいんだよなあ、1-25は、死に戻りをまた題材にするかなあ……? と、悩んだところでふと気づきました。
 過去の死に戻り題材作品こと、南雲さんの第15回書き出し祭り作品、「妹は死に戻る〜お姉様は悪役令嬢なんかじゃありませんわ!〜」、実は死に戻りでは「ない」んですよね……。処刑されたのは濡れ衣を着せられた姉であって、ヒロインである妹が死んだかどうかは本文中では明記されていなかったのです。そして、今回の「妹の婚約者を盗りました~」も、死んだのは恋人に裏切られた妹であって、ヒロインである姉が死んだかどうかはやはり明記されていません。
 死に戻りというジャンルというかネタは恐らく現在の流行しているもののひとつです。が、一方で姉/妹はヒロインを陥れる悪女ポジションであることが多い気がします。反例ももちろんあって、例えば韓国産Webtoonの「復讐の皇后」では処刑された姉に代わってヒロインの妹が皇后を目指す、という筋書きです。が、この作品でもヒロインは姉に連座して処刑されて、それで死に戻る──という展開なのですよね。
 ですので、「ヒロインの死が明記されていないのに、過去に戻っている」「ヒロインは姉/妹と敵対しておらず、むしろ愛して助けようとしている」という展開の「妹は死に戻る~」および「妹の婚約者を盗りました~」はこのジャンル(?)としては珍しい構成ではないかと思います。なので、同じ方が書いたものではないかと推理しても良いのではないでしょうか。姉/妹のために奮闘するヒロインの構図がお好きなのかもしれないし、死に戻り(死んではいない)に関するギミックが後々開示される予定なのかもしれません。

 という訳で、南雲さんの作品は1-25 妹の婚約者を盗りました。なぜならその男は結婚詐欺師だからです。です!!

 あらすじの字下げと「──」多用が南雲さんの特徴と一致しないのが、とてもとても気にはなるのですが。ほら、ありえないことを排除したあとに残ったものは、それがどんなにありそうにないことでも、真実であるって言いますし。一応根拠を持って絞っていったということ、ここまで頑張って考えたという事実が大事なはず……!

 私からの推理は以上です。

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