ザッツマイン!~怪盗マイスと我が物の秘宝~

世間を賑わす怪盗…その正体が学園の生徒だとは、誰も知るまい。

蒸気戦争終結から10年。
ようやく皆が平和な日々を噛み締め始める頃だ。
あの戦争がなんだったかなんてもうどうだっていい。
けど大人達は言う。この平和な日々こそ求めていた「宝」なんだって。

僕は、それが欲しいと思った──

「瑞樹!昨日の事件知ってる?」
耳聡い瞳美が早速昨夜の話に目を輝かせている。
「西区第二美術館に!神出鬼没の怪盗マイスが!」
「またあの怪盗か?」
突っ伏して寝ていたのに、お構いなしに話かけてくる。
この子は、話し出したら予鈴がなるまで終わらない。詰んだ。睡眠時間が。
「今回も鮮やかな手口だったって!ねえ聞いてる?」
「…お」

ここ数ヶ月、街を賑わす怪盗がいた。
薄暗い灰色装束に、ネズミ印の予告状。怪盗マイスを名乗る犯人は、七つ道具(本当はもっと色々あるんだけど便宜上ね)を巧みに使い、警備を破り追っ手を逃れ、いまだ正体の知れぬ…。

「なんかまた悪い噂のある人のお宝を狙ってたんだってね!」
「悪い噂?」

怪盗の狙いは常に黒い噂のある人間の持つお宝ばかり。中には「盗品」の疑いのあるものも…。

「要するに『義賊』って奴か」
「そうなの!すごくない!?」
「でも泥棒だろ…」
「そうだけど~」

キーンコーン──

予鈴だ。次の授業は…
「あ、悪い瞳美、早退するって先生に」
「また?家の手伝い?」
「お。」
挨拶もそこそこ、軽いバッグを背負って足早に教室を後にする。
仕事の時間だ。

悪いね瞳美。僕がその…怪盗マイスなんだ。


夕方。下準備を終えて街を歩く。
空も道も狭い、無骨で賑やかな街。嫌いじゃない。
この街で、怪盗マイスは今日もお宝を怪しく盗む。
その先に「我が物の秘宝(ザ・マイン)」があると信じて。

街頭テレビにニュースが流れる。早速マイスの予告状の話題だ…。
『本日未明、西区第三美術館に怪盗からの犯行予告状が届きました』

『それも…二通…ネズミの印と…ネコの印の…』


「…お?」


【続く】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?